システム開発の最終段階で行われるテストにはさまざまな種類がありますが、中でも「シナリオテスト」は、全体の流れを通じてシステムが問題なく動くかどうかを確認する重要なテストです。
本記事では、単体テストや結合テストとの違い、具体的なメリットやデメリット、そして実際にどのように進めていけばよいのかをわかりやすく解説します。
【基本】シナリオテストとは?
「シナリオテスト」とは、開発したシステムが想定した操作や機能にそって、問題なく動作するかどうかを確認するテスト手法です。
日常的に使われる「シナリオ」という言葉のとおり、ユーザーが操作する一連の流れに合わせてシステムが正常に機能するかどうかを検証します。
万が一、不具合が起きたままシステムを運用すると、大きな損失を招く可能性があります。そのため、シナリオテストを実施して事前に問題を発見し、安定したサービスを提供できるかを確認することが重要です。
「単体テスト」や「結合テスト」との違いとは?
システム開発では、「単体テスト」「結合テスト」「シナリオテスト」という段階的なテストが行われます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 単体テスト:設計した個別のモジュールやコンポーネントごとに、正しく機能するかを確認する
- 結合テスト:単体テスト実施後、複数のモジュールを組み合わせた際に正しく連携するかを確認する
- シナリオテスト:システム全体が想定通り動くかを確認する
つまり、シナリオテストはテストの中でも「最終チェック」として重要な役割を果たします。
シナリオテストの目的
シナリオテストは、単に不具合を拾うだけではなく、当初の計画どおりに機能が働いているかを確認することが目的です。
ユーザーが求める機能を正しく提供できているか、設計の意図どおりにシステムが機能しているかをテストします。シナリオテストは、開発の最終段階での評価やシステム全体の完成度を左右するため、入念な確認が欠かせません。
シナリオテストのメリット
シナリオテストの基本を押さえたうえで、ここからはシナリオテストを実施することで得られる主なメリットを2つ見ていきましょう。
複数システムの一連の流れを確認できる
複雑なシステムでは、複数の仕組みが連動しながら動作します。
シナリオテストでは、複雑な連携などを含めた一連の流れを確認できるため、単体テストや複合テストといった個別のテストでは発見しにくい問題を見つけられます。
不具合や不整合を発見できる
ビジネスの基幹を支えるシステムに不具合があると、大きな損失につながるリスクをともないます。
システム開発の際は、シナリオテストで事前にしっかりチェックすることで、重大なトラブルにつながる原因を早めに取り除きやすいため、安定した運用を目指せます。
シナリオテストのデメリット
メリットがある一方で、シナリオテストにはデメリットも存在します。ここからは、シナリオテストのデメリットを2つ確認していきましょう。
全てのシナリオを確認すると膨大な工数がかかる
シナリオテストはシステム全体を網羅的にチェックするため、多くの操作パターンを想定する必要があります。そのため、システムの機能が複雑になればなるほど、チェックの項目数や手順が増えてテストに時間やコストがかかります。
シナリオテストを実施する際は、費用対効果を意識しながら必要な範囲を見極めることが大切です。
シナリオ外の問題を発見しにくい
シナリオテストはあらかじめ想定した操作手順で行うため、想定していない利用条件による問題を見つけにくいというデメリットがあります。
こうした問題を完全に防ぐことは難しいため、シナリオテストだけではなく、別のテスト手法などとも組み合わせて実施するようにしましょう。
自社でシナリオテストの設計が難しいという方は、システム開発の負担が少ないローコードツールの「イントラマート」がおすすめです。
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シナリオテストの作り方【5ステップ】
ここからは、効果的なシナリオテストを実施するための基本的な手順をご紹介します。大きくわけて5ステップあるため、ひとつずつ見ていきましょう。
ステップ①:テストの目的を明確にする
まずは、シナリオテストを行う目的をはっきり決めましょう。不具合の有無を重点的に見るのか、新しい機能の動作確認を重視するのかによって、テストの範囲や内容が変わります。
最初にシナリオテストの目的を明確にしておくことで、重要な部分に焦点を当てた効果的なテストが可能になります。
ステップ②:確認すべき動作や条件を整理する
次に、重点的に確認したい機能や条件をリストアップしましょう。
特定の条件下での動作やエラー時の処理など、システムの重要な側面を具体的に整理することが重要です。
ステップ③:すべてのシナリオを設定する
ステップ②で整理したチェックポイントを基に、テストに入れ込む具体的なシナリオを設定します。
シナリオには、前提条件や操作手順、期待される結果などを明確に記載しましょう。
ステップ④:シナリオテストを実行する
作成したシナリオにそって、実際にテストを実行します。実際の操作を想定しながら進め、システム全体が正常に動作するかどうかを観察することが重要です。
シナリオテストの実行中に気づいた点があった際や、予期せぬ動作が発生した際は忘れずに記録しておきましょう。
ステップ⑤:結果の記録と分析をする
シナリオテストの結果を詳細に記録し、分析します。不具合が見つかった場合はその原因を特定し、改善策を検討しましょう。
問題がなかった場合でも、実施したシナリオテストで得られた知見を整理し記録しておくことで、今後の改善に活用できます。
シナリオテストを成功させるポイント
シナリオテストを効果的に進めるためには、事前に計画を立ててテスト範囲や手順を整理しておくことが大切です。それでは最後に、シナリオテストを成功させるためのポイントをご紹介します。
シナリオの「粒度」はバランスよく
シナリオの粒度(細かさ)は、テストの効果と効率に大きく影響します。
シナリオの粒度が粗すぎると重要な問題を見逃す可能性があり、細かすぎるとテストの作成や実施に膨大な時間がかかってしまいます。
優先順位を設定する
限られた時間とコストで確実にシナリオテストを行うためには、優先順位の設定が欠かせません。
システムの特性に応じて、重要な機能や高リスクな部分には細かいシナリオを設定し、それ以外の部分はある程度粗い粒度でテストするといった工夫をして進めると効率的です。
想定外の操作や分岐は忘れず記録する
開発者が想定していない操作や分岐をユーザーが行うことで、システムに不具合が発生する場合があります。
こうしたトラブルに対応するため、シナリオテストを設定・実施する際に発見した想定外の動きを記録しておき、必要に応じて検証するようにしましょう。
また、記録した情報を開発チームと共有することで、システムの品質向上に貢献できます。
さまざまなユーザー目線での意見を集める
システム開発を行う際は、開発者やテスト担当者だけでなく実際にシステムを使用する予定のユーザーなど、異なる立場の関係者からの意見を収集することが重要です。
それぞれの立場でシステムに対する期待や使い方が異なるため、さまざまな視点からのフィードバックを得ることで、より実用的なシナリオを作成できます。
また、可能であれば実際にシステムを利用するユーザーにテストに参加してもらい、直接的な意見を聞くことも効果的です。
まとめ
シナリオテストは、システムが実際の業務で正しく機能することを確認する重要なテスト手法です。単体テストや結合テストでは発見できない、実際の利用シーンでの問題を効果的に発見できます。
ただし、細かすぎるシナリオでテストを進めてしまうと工数やコストが大きくなるため、優先順位を決めてバランスよく検証することが大切です。
時間とコストの制約がある中で、いかに効率的かつ効果的なテストを実施するかが課題となりますが、本記事でご紹介したポイントを押さえて、品質の高いシステム開発につながるシナリオテストを実現しましょう。