なぜ今「データ連携基盤」が必要なのか?導入の必要性と効果を徹底解説

DX

多くの企業では、販売管理システム、会計システム、顧客管理システム、生産管理システムなど複数のシステムが個別に運用されており、必要な情報をタイムリーに収集できないという課題を抱えています。

デジタル変革(DX)が加速する今、企業の競争力を左右するのは「データをいかに効率的につなげ、活用できるか」にかかっています。そのためには「データ連携基盤」の存在が非常に重要になってきます。

本記事では、データ連携基盤の必要性と導入効果について詳しく解説します。読み進めることで、なぜ今データ連携基盤が必要なのか、どのような課題を解決できるのか、データ連携基盤の構築方法について体系的に理解できます。企業のデータ活用力を向上させ、DX推進や業務効率化の第一歩を踏み出しましょう。

目次

【導入】データ連携基盤とは?必要性を語る前に押さえておきたい基礎知識

デジタル時代に必要不可欠なデータ連携基盤とは一体どのようなものなのでしょうか。データ連携基盤とは何か、なぜ注目されているのかについて解説します。

データ連携基盤とは何か?

データ連携基盤とは、社内外に散在するデータを一元的かつ自動的に連携させるための、土台となるシステムや仕組みです。単純にデータを移動させるだけでなく、異なるシステム間でデータをリアルタイムまたは定期的に同期し、企業全体で統一されたデータを活用できる環境を構築します。

従来の手作業によるデータ移行や、個別システム間での都度開発による連携とは異なり、標準化されたデータフォーマットとルールに基づき、継続的かつ安定的なデータ連携が可能になります。

データ連携ツールとの違い

データ連携基盤とデータ連携ツールは、しばしば混同されがちですが、その役割と規模には大きな違いがあります。

データ連携ツールは、特定の2つのシステム間でデータを移動・変換するための個別のソフトウェアです。例えば、ExcelからCRMシステムへ顧客データを取り込むツールなどが該当します。簡単に言えば、データ連携ツールが「点と点を結ぶ線」であるのに対し、データ連携基盤は「すべての点を結ぶネットワークの中心」です。

なぜ今「基盤」が注目されているのか?

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)や業務自動化、AI活用といった取り組みが加速しています。これらの取り組みを成功させるためには、大量のデータが不可欠であり、「データのつながり」が企業の事業の成否を左右すると言っても過言ではありません。

しかし、企業内にデータが散在している状態では、データを十分に活用することができません。そこで、データ連携基盤を構築し、データをスムーズに流通させる仕組みを整え、データを活用できるようにすることが、多くの企業の課題として注目されているのです。

【背景】なぜデータ連携が「課題」になるのか?

企業のデジタル化が進み複数のシステムが導入されることで、各システム内に散らばったデータをどのようにして連携するのかが大きな課題になっています。詳しく見ていきましょう。

企業内に存在するサイロ化の問題

多くの企業では、各部門やシステムが独立して運用されており、データが部門やシステムごとにバラバラに管理されている「サイロ化」という問題が発生しています。営業部門は顧客管理システム、経理部門は会計システム、製造部門は生産管理システムといったように、それぞれが最適化されたシステムを使用しているものの、横のつながりが不足している状況です。

このようなサイロ化した状態では、企業全体の状況を把握するためのデータの収集に多大な時間と労力がかかり、経営判断の遅れや機会損失につながってしまいます。

手作業やExcelによる限界

手作業によるデータ連携では、人的ミスが発生しやすく、作業負荷も高くなります。データの転記ミス、計算間違い、ファイルの取り違えなど、様々なリスクが存在します。また、これらの作業を担当する社員のスキルや経験に依存するため、属人化の課題も深刻化します。

複数の担当者が同じファイルを編集する際のバージョン管理の問題や、データ量が増加した際の処理速度の低下など、企業規模の拡大とともに課題が顕在化してきます。

多様化するIT環境(オンプレ・クラウド・SaaS混在)

近年、IT環境はますます多様化しており、オンプレミス(自社運用)のシステム、クラウドシステム、SaaS(Software as a Service)といった様々なシステムが混在する企業が増えています。このような別々のシステムを連携させることは、異なるデータフォーマットやAPIを使用している可能性が高く、連携のためには個別の開発が必要となり、コストも時間も大幅にかかってしまいます。

このような状況下でデータ連携基盤を構築し、システム間の連携を容易にすることが、現代企業としての重要な課題となります。

【本質】なぜ”基盤”として整える必要があるのか?

多くの企業がデータ連携の必要性を感じながらも、「なぜわざわざ基盤として構築する必要があるのか?」という疑問を抱くのは自然なことです。単発的なデータ連携ツールやシステム間の直接連携でも、一見同じような効果が得られるように思えるからです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。目先の課題解決に焦点を当てた対症療法的なアプローチでは、中長期的に見ると却って複雑性を増し、コストを押し上げる結果になりかねません。

単なるデータ連携ツールでは解決できない理由

システム間の複雑な依存関係が生まれる

単発的なデータ連携ツールを使った場合、システムAとシステムB、システムBとシステムC、システムAとシステムDといったように、システム間で直接的な連携が生まれます。最初は2〜3個の連携でシンプルに見えても、事業拡大に伴ってシステムが増えるにつれ、連携パターンは指数関数的に増加します。

データの整合性確保が困難

各連携が独立して動作するため、データの更新タイミングのずれや変換ロジックの違いにより、システム間でデータの不整合が発生しやすくなります。例えば、顧客情報がシステムAでは「田中太郎」、システムBでは「田中 太郎」(全角スペース)、システムCでは「Tanaka Taro」として管理されている場合、これらが同一人物であることを自動的に認識・統合するのは困難です。

障害発生時の影響範囲が見えない

システム間の依存関係が複雑になると、一つのシステムに障害が発生した際の影響範囲を特定するのが困難になります。障害対応に時間がかかり、ビジネスへの影響が拡大してしまうリスクが高まります。

連携するシステムが少ない段階では、単なるデータ連携ツールでも十分に機能します。しかし、ビジネスの成長とともにシステムが増加していくことを踏まえて、データ連携基盤を構成するツールの1つとして活用、また、その他ツールとの連携・拡張などを前提に導入しておくことが最良の選択といえます。

「再利用性」と「拡張性」が鍵になる

データ連携基盤の真価は、変化し続けるビジネス環境への対応力にあります。企業の成長に伴い新たな事業部門の増加、M&Aによりシステム数が増加する際、従来の個別連携では都度大規模な開発が必要となります。

しかし、拡張性を重視したアーキテクチャを採用することで、新しい業務システムや部門が追加されても、基盤への接続のみで既存の全システムとの連携が実現できます。

ビジネスの変化に”即応できる”仕組みが重要

現代のビジネス環境は、常に変化しています。市場の変化、顧客ニーズの変化、競合他社の動向など、企業を取り巻く環境は常に変化しており、企業はこのような変化に迅速に対応しなければなりません。データ連携基盤を構築することで、マーケティング、営業、生産など、あらゆる領域の意思決定スピードを高めることができ、ビジネスの変化に即応できる仕組み作りが可能になります。

【効果】データ連携基盤を導入する5つのメリット

企業にとってデータ連携基盤は非常に重要なものであるとご紹介してきましたが、ここではデータ連携基盤を構築するメリットを5つに分けてご紹介します。

業務の自動化・効率化

データ連携基盤を導入すると、定時バッチやリアルタイム API 連携を自動化でき、これまで数時間を要したデータ集計が数分で完了します。そのため月末の締め処理も大幅に短縮できるなど、業務全体の生産性向上が期待できます。

データ整合性の向上

データ連携基盤を導入することで、各システムの情報がリアルタイムで同期されるようになり、常に最新のデータを活用することができます。これにより、データの整合性が向上し、信頼できるデータに基づいた意思決定を行うことができます

データ利活用の加速

データ連携基盤を導入することで、企業内に散在するデータを統合し、データ分析やAI活用を加速させることができます。これまで活用できなかったデータを活用することで、新たなビジネスチャンスの発見や、業務プロセスの改善点を見つけることができます。

セキュリティとガバナンス強化

データ連携処理のログ取得、アクセス制御、監査対応などが容易になり、データ漏洩や不正アクセスといったリスクを低減することができます。また、データガバナンスルールを明確化することで、データの品質を維持し、データの信頼性を高めることができます。データのセキュリティとガバナンスを強化することで、企業全体のリスク管理レベルを向上させることができます。

システムのスリム化と保守性向上

データ連携基盤を導入することで、APIやデータ連携の標準化を進めることができます。これにより、システム間の個別対応や改修コストを削減し、システム全体のスリム化と保守性向上を図ることができます。また、データ連携処理を一元的に管理することで、システムの運用管理負荷を軽減し、システム担当者の負担を減らすことができます。

【構築方法】データ連携基盤の構築ステップとツール選定ポイント

ここからは、データ連携基盤の構築方法とツール等の選定ポイントをご紹介します。

どのように基盤を構築するのか?

データ連携基盤の構築は、一般的には以下のステップで進めます。

  1. 現状整理:現状整理として、既存システムの棚卸しと現在のデータフローの把握を行います。どのようなデータがどこに存在し、どのような方法で連携されているかを詳細に調査します。
  2. 要件定義:どのような課題を解決したいのか、どのようなデータ連携が必要なのかを明確にします。優先度を設定し、段階的な導入計画を策定することが重要です。
  3. 接続設計:システム間の連携方法やデータフォーマットの統一ルールを決定します。
  4. ツール選定:データ連携基盤を構築するためのツールを選定します。
  5. 導入・運用設計:データ連携基盤の導入方法や運用体制などを設計します。

主なアーキテクチャの種類

データ連携基盤のアーキテクチャには、主に以下のようなパターンがあります。

  • バッチ連携型定期的にまとまったデータを処理する方式で、日次や週次での売上集計などに適しています。処理負荷が低く、安定性が高いメリットがあります。
  • リアルタイム連携型データの更新と同時に他システムに反映する方式で、在庫管理や顧客対応などタイムリーな情報が必要な業務に適用されます。
  • メッセージ連携型システム間でメッセージを非同期で交換する方式で、システム間の疎結合を実現でき、拡張性に優れています。

ツール選定のポイント

データ連携基盤を構成するツールを選定する際は、以下の4つの観点から総合的に評価することが重要です。

  • 接続可能なシステムの多さ:既存システムとの互換性を確認し、将来導入予定のシステムにも対応できるかを検討します。特に、クラウドサービスやSaaSとの連携機能は必須要件です。
  • 拡張性:企業成長に合わせてデータ量やシステム数の増加に対応できる柔軟性が求められます。処理能力の向上やストレージ容量の拡張が容易に行えるかを確認しましょう。
  • セキュリティ:データ暗号化、アクセス制御、監査ログなどの機能が充実しているかを評価します。法規制への対応状況も重要な判断材料です。
  • ノーコード対応の有無:ITスキルを持たない業務担当者でも設定・運用が可能かを確認します。これにより、IT部門の負荷軽減と迅速な業務要件への対応が実現できます。

【比較】導入企業の成功事例と導入前後の違い

データ連携基盤の必要性や構築方法をご紹介してきましたが、導入企業様の成功事例を確認してみましょう。

製造業A社:ERP・生産管理・在庫情報を一元連携

製造業A社では、ERP、生産管理システム、在庫管理システムがそれぞれ独立して運用されており、月末処理に膨大な時間がかかっていました。各システムからデータをExcelに出力し、手作業で突合・集計を行っていたため、月末処理だけで丸1日を要していました。

しかし、データ連携基盤の構築により各データが自動的に連携されるようになり、月末処理が1日から約30分に短縮されました。データが自動的に連携されたことにより、手作業での突合・集計が不要になったことが大幅な時間短縮につながった要因です。

金融業B社:帳票系システムと分析基盤のリアルタイム連携

金融業B社では、顧客取引データと分析基盤が分離されており、リスク管理や顧客対応に必要な情報の取得に時間がかかっていました。取引データの分析結果が翌日にならないと確認できず、タイムリーな対応が困難でした。

データ連携基盤の構築により、取引データは即座に分析基盤に送信され、リスク指標の算出や顧客データの更新が自動的に行われるようになりました。顧客からの問い合わせに対しても、最新の取引情報をもとに的確な回答ができるようになり、顧客満足度の向上にもつながっています。

小売業C社:POSデータ・EC・会計連携による経営ダッシュボード構築

小売業C社では、店舗のPOSシステム、ECサイト、会計システムがそれぞれ独立しており、全社的な売上状況の把握に時間がかかっていました。各システムから手作業でデータを収集し、Excelで集計していたため、経営陣への報告が遅れがちでした。

データ連携基盤を構築したことで、経営ダッシュボードがリアルタイムで更新されるようになり、店舗別・商品別・時間別の売上データが即座に集計され、在庫状況と合わせて総合的な分析が可能となりました。経営層の意思決定スピードが大幅にアップし、季節商品の仕入れ調整や販売戦略の見直しを迅速に行えるようになりました。

【懸念と対策】データ連携基盤構築のよくある課題とその回避策

データ連携基盤を構築する際は費用面をはじめ懸念点があるものです。ここでは、よくある課題とその回避策として解説していきます。

費用がかかるのでは?

多くの企業が懸念するのが費用の問題です。初期費用や運用費用がかかるため、費用対効果を心配する企業も少なくありません。

回避策として、スモールスタートから始めることで、リスクおよび費用を最小限に抑えながら段階的に拡張していくのがおすすめです。また、クラウドベースのiPaaSサービスを活用することで、初期投資を大幅に削減できます。従量課金制のサービスを選択すれば、実際の利用量に応じたコストで運用可能です。

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社内に知見がない/難しそう

データ連携基盤の構築には、専門的な知識やスキルが必要となるため、社内に知見がないことを懸念する企業も少なくありません。

回避策としては、外部パートナーやiPaaSを活用し、技術依存度を下げるのがおすすめです。多くのiPaaSサービスでは、ノーコードまたはローコードでの設定が可能で、プログラミング知識がなくても基本的な連携は構築できます。また、導入支援サービスを提供するベンダーも多く、初期構築から運用まで包括的なサポートを受けることが可能です。

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社内調整やデータ定義の整理が大変

データ連携基盤の構築には、部門間の調整やデータ定義の整理が必要となるため、時間と労力がかかります。

回避策として、事前にデータガバナンスルールを明確化しておくことです。まず、データの管理者を明確にし、各データの管理責任者を決定します。次に、データ定義の標準化ルールを策定し、部門間の合意を取って進めていきます。一度に全てを変更するのではなく、段階的に標準化を進めていくことで負担の少ない構築が可能です。

【まとめ】”分断”された情報を「つなぐ力」が企業の未来を左右する

データが価値を持つ時代において、単にデータを保有するだけでは競争優位性を獲得できません。重要なのは、散在するデータを統合し、”活かす仕組み”を構築することです。この仕組みこそが、企業の競争力に直結する要素となっています。

データ連携基盤は、DX推進・業務改善・意思決定のすべてを支える土台として機能します。基盤の構築により、これまで分断されていた情報がつながり、企業全体の生産性向上と競争力強化が実現できます。

市場環境の変化が激しい現代において、迅速な意思決定と柔軟な対応力が企業の生存を左右します。分断された情報を統合し、企業の未来を切り開く基盤づくりに、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

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