イベント駆動アーキテクチャ(EDA)とは?メリット・活用例を徹底解説!

近年、デジタル変革の波とともに、システムアーキテクチャのあり方が大きく変化しています。

とくに、リアルタイム性や柔軟な拡張性が求められる現代のITシーンにおいて、イベントをトリガーにしてシステムを動かす「イベント駆動アーキテクチャ(Event Driven Architecture:EDA)」が注目を集めています。

本記事では、イベント駆動アーキテクチャの基本からメリット、実際の活用例までわかりやすく解説します。

イベント駆動アーキテクチャとは?

イベント駆動アーキテクチャとは、名前のとおり「イベント」が起こったタイミングでシステムが動作する仕組みを指します。まずは、イベント駆動アーキテクチャについて解説していきます。

イベント駆動アーキテクチャの基本

イベント駆動アーキテクチャとは、システム内で発生する「イベント」を中心に設計されたソフトウェアアーキテクチャのことです。

従来の要求・応答型(リクエスト・レスポンス)のアーキテクチャとは異なり、イベントの発生を「トリガー」としてシステムが反応する仕組みをもっています。

イベント駆動アーキテクチャの仕組み

イベント駆動アーキテクチャは、主に3つの要素で構成されます。

  • イベント送信者(パブリッシャー)
  • イベント仲介チャネル(イベントブローカー)
  • イベント受信者(サブスクライバー)

イベント駆動アーキテクチャの仕組みとして、まずイベント送信者(発生元)である「パブリッシャー」が特定のイベントデータを、イベント仲介チャネルである「イベントブローカー」へ送信します。

そして、イベントブローカーが受け取ったイベントデータを、イベント受信者である「サブスクライバー」へデータの配信や通知を行うといった流れになっています。

イベント駆動アーキテクチャにおいて、イベント送信者(パブリッシャー)とイベント受信者(サブスクライバー)が直接やり取りすることはなく、イベントブローカーを介してデータの連携を行うのが基本です。

イベントとは?

「イベント」は、システム内外で発生する特定のアクションに関するデータを指します。例として、以下のようなものがイベントとして扱われます。

  • ユーザーがアプリにログインした
  • 商品がカートに追加された
  • センサーが特定の値を検出した
  • データベースが更新された

イベントには、発生日時や関連データなどの情報が含まれることが一般的です。イベントの情報をもとに、イベントブローカーが適切な処理を実行します。

イベント駆動アーキテクチャの重要性

ビジネス環境が刻々と変化し、大量のデータをリアルタイムで扱う必要がある現在において、イベント駆動アーキテクチャは重要な選択肢のひとつになっています。

SNSやECサイトなど、多数のユーザーアクションが連続して発生する場面で、個別の「イベント」を起点に処理を分散・高速化できることは大きな強みになります。

このようにデータ駆動型のビジネスが主流となる中で、システムアーキテクチャの正しい選択は、企業の競争力に直結するようになってきています。

イベント駆動アーキテクチャのメリット

イベント駆動アーキテクチャには、リアルタイム処理の実現や耐障害性の向上など、システムの柔軟性や拡張性を高める多くのメリットがあります。

ここからは、イベント駆動アーキテクチャの主要なメリットについて見ていきましょう。

リアルタイム処理

イベント駆動アーキテクチャの最大のメリットのひとつは「リアルタイムでの情報処理能力」です。

イベントが発生した瞬間に処理が開始されるため、データや状況の変化にリアルタイムで反応できます。そのため、従来のバッチ転送や定期的な同期処理と比べて、データ処理時間の大幅な短縮が実現できます。

例として、ECサイトの購入処理やSNSの投稿反映など、イベントの送信と同時にデータの反映が必要な場面に最適です。

疎結合による耐障害性

イベント駆動アーキテクチャは、各データ連携が「イベント」を通じた「疎結合」でデータを連携するといった特徴があります。

そのため、アプリケーション側の原因により一部のデータ連携ができなくても、ネットワークに問題がなければ他のデータ連携は影響を受けずに稼働を続けられます。

「イベントをもとに処理を行う」といったイベント駆動アーキテクチャのメリットにより、障害時のシステム全体への波及を抑制します。

スケーラビリティ

イベント駆動アーキテクチャの中には、イベントの数が急増するなどといった負荷に応じて、自動的にスケールさせる機能が備わっているものもあります。

例として、ECサイトのセール期間中に「注文処理」イベントの負荷が増加した場合、処理を停滞させないために一時的に処理性能を増強するといった対応が可能です。

拡張性

イベント駆動アーキテクチャの大きなメリットとして、優れた拡張性があげられます。

イベントブローカーがあることで、独立したアプリケーションを簡単に追加できます。アプリケーションは独立して追加や削除ができるため、既存のシステムに影響を出さずに拡張できます。

こうしたイベント駆動アーキテクチャの柔軟性により、ビジネス要件の変化に迅速に対応できるため、システムの長期的な保守性と発展性の確保にもつながります。

イベント駆動アーキテクチャにデメリットはある?

イベント駆動アーキテクチャには多くのメリットがある一方で、実装や運用において考慮すべき課題も存在します。

イベント駆動アーキテクチャは「非同期処理」をベースとするため、サービスによっては開発や運用で以下のような課題があることを知っておきましょう。

  • イベントの設計や管理、イベント順序の保証が難しい
  • 直列的なフローと比べると流れが複雑になりがち
  • イベント駆動アーキテクチャ全体像の把握が難しい

成功するイベント駆動アーキテクチャを構築するためには、事前に課題を理解し適切に対策することが欠かせません。

イベント駆動アーキテクチャの活用例

イベント駆動アーキテクチャは、業種や規模を問わず幅広く活用されています。

ここからは、実際のビジネスシーンでどのようにイベント駆動アーキテクチャが活用されているのかを見ていきましょう。ぜひ、自社のシステム設計に取り入れる際の参考にしてみてください。

ECサイト

ECサイトは、イベント駆動アーキテクチャの典型的な活用例です。

オンラインショッピングのプラットフォームにおいては、カートへの追加・注文・決済など多数のイベントが連続的に発生するため、効率的に処理する必要があります。

例として、イベント駆動アーキテクチャ上で「注文確定」のイベントが発生すると、在庫システムで在庫の引き当て、決済システムでの支払い処理、配送システムでの配送手配、顧客管理システムでのポイント付与など、複数のシステムにリアルタイムでのデータ連携を行うことが可能です。

通知・アラート

セキュリティや障害検知など、異常を即時に知らせる仕組みにおいてもイベント駆動アーキテクチャが活用されています。

例として、サーバーの負荷が設定していた閾値を超えたり、不審なログイン試行が検出されたりした場合「イベント」が発行され、管理者への通知やインシデント対応のアラートが行われます。

IoT

「IoT」の分野では、センサーやデバイスから送られてくるデータをリアルタイムで処理する必要があり、イベント駆動アーキテクチャが適しています。

例として、工場の生産ラインでセンサーが異常な温度や振動を検知すると「異常検知」イベントが発行され、保守担当者への通知や設備の自動停止などが行われます。

決済・トランザクション処理

「金融サービス」や「オンライン決済」においては、取引の安全性とリアルタイム性が求められます。イベント駆動アーキテクチャを採用することで、認証・与信・決済・記録など決済処理の各ステップをリアルタイムに処理できます。

また、処理がイベントごとに独立して実行されるため、一部の処理に問題が発生しても、他の処理への影響を最小限に抑えられます。

分析基盤

様々なデータをリアルタイムで収集・処理する必要がある「データ分析」の分野でも、イベント駆動アーキテクチャは重要な役割を果たしています。

Webサイトのアクセスログやアプリケーションの利用状況、販売実績などの各イベントデータを統合することで、ダッシュボードでのリアルタイム可視化や予測分析に活用されています。

イベント駆動アーキテクチャが向いているケース

イベント駆動アーキテクチャのメリットや活用例を押さえたうえで、ここからはイベント駆動アーキテクチャの導入効果が発揮できるケースをご紹介します。

イベント駆動アーキテクチャを導入する前に、自社の求める要件との適合性を確認していきましょう。

リアルタイム性が求められる

株式取引オンラインゲーム、ライブ配信、チャットアプリケーションなど、リアルタイムでの応答が求められるケースでは、イベント駆動アーキテクチャの導入効果がとくに高くなります。

こうしたケースでは、わずかな処理遅延がユーザー体験に大きな影響を与えてしまうため、イベント駆動アーキテクチャによるリアルタイム性の向上は、ビジネス競争力の強化に直結します。

複数サービス間の連携が複雑

多数のシステムが組み合わさっている複雑なアプリケーションでは、イベント駆動アーキテクチャの導入が効果的です。

イベント駆動アーキテクチャは、各アプリケーションが直接的に連携せず「イベント」を介して疎結合に連携できるため、複雑なシステムであっても全体を管理しやすくなります。

イベント駆動アーキテクチャの将来性

デジタル変革の加速により、イベント駆動アーキテクチャの重要性はさらに高まると予想されます。

現在「バッチ転送を重点的に活用している」という企業においては、企業競争力の強化を目指すためにも、リアルタイム性のあるイベント駆動アーキテクチャへの変更を視野に入れることが重要です。

また、将来的にはリアルタイム分析やAIプラットフォームなどとの連動が進み、一層幅広い分野で活用されるようになるでしょう。

当社は設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、「Solace」を中心としたイベント駆動アーキテクチャを取り扱っています。バッチ転送からの切り替えやデータ連携でお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。

まとめ

送信者(パブリッシャー)側のイベント発生をトリガーとしてシステムが動く「イベント駆動アーキテクチャ」は、リアルタイム性や柔軟性が求められる現代のIT環境にマッチする選択肢です。

今後、さらなるデジタル変革が見込まれる中で、イベント駆動アーキテクチャの重要性は増していくことが予想されます。

ビジネス競争力の強化につなげるためにも、イベント駆動アーキテクチャの基本を理解したうえで自社のシステム要件を十分に検討し、導入を進めていきましょう。

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