レガシーシステムとは、1980〜1990年代に開発された企業の基幹システムのことをいいます。長年企業を支えてきたレガシーシステムですが、IT技術の進歩により老朽化が進んでいます。
DXを推進している企業の経営陣やトップ層の方には、レガシーシステムは悩ましい存在と感じている方もいらっしゃるかもしれません。レガシーシステムを放置することで、システム上の問題、最新のテクノロジーについていけないなどの問題が発生する可能性があります。
本記事では、レガシーシステムとは何か、レガシーシステムの問題点、脱却する方法について解説します。レガシーシステムについて正しく理解し、脱却する方法について学びましょう。
レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、1980年代から1990年代にかけて開発された古いシステムのことを指します。当時は最新技術で作られたシステムでしたが、時代とともに技術革新が進み、現在では老朽化が進んでいます。
レガシーシステムを刷新することに抵抗を覚える方も多いと思います。長年企業を支えてきた基幹システムの方が安心して安定的に使えるから、わざわざシステムを変える必要はないと考える人もいるでしょう。
しかしレガシーシステムの注意点は、レガシーシステムが潜在的なリスクを抱えていることです。
レガシーシステムが生まれる要因とは
レガシーシステムが生まれる背景には、以下のような要因が考えられます。
- システムの複雑化
- ベンダーロックイン
- 業務との密接な関係
どういうことなのか、一つずつ確認していきましょう。
システムの複雑化
企業の基幹システムは、その時代ごとに部分的な修正や追加開発を繰り返す場合が多いです。その結果、基幹システム全体が複雑化し、改修や変更が難しくなります。
更に問題になるのが、開発や改修を行っていた時代の担当者の高齢化が進み、退職や離職によりシステムの全貌を把握している人がいなくなります。この状態になると、システムにブラックボックスが生じてしまい、手出しが難しい難解なシステムになってしまいます。
ベンダーロックイン
基幹システムの開発を外注している場合は、ベンダーロックインに陥っている可能性があります。
ベンダーロックインとは、様々な要因で特定のベンダーへ依存している状態を指します。利用中のシステム仕様がわかる人がいない、ベンダーと交わした保守期間が長いため、他のベンダーに切り替えられない、などがベンダーロックインの発生要因と考えられています。
特定のベンダーに依存し続けていると、システムが老朽化する傾向にあり、レガシーシステムとなっていきます。
業務との密接な関係
長年業務に組み込まれてきたシステムは、部署ごとに必要な機能を追加したり、改修したりを繰り返してきた歴史があるはずです。
その結果、システムが非常に複雑化し、現在の業務内容に最適化するのも新しいシステムへ移行するのも困難になり、レガシーシステムとして残り続けます。
レガシーシステムにより発生する問題
レガシーシステムは、放置していると、企業のあらゆる側面に悪影響を及ぼします。
悪影響とは、具体的に何を指すのでしょうか。レガシーシステムにより発生する問題を見ていきましょう。
システム障害
レガシーシステムは、老朽化によりシステム障害が発生しやすくなります。システム障害は、業務停止やデータ損失などの重大な損害につながる可能性があります。
またシステムのセキュリティが脆弱化することで、思わぬサイバー攻撃を受けるなど、予期せぬ事態になりかねません。
業務効率の低下
レガシーシステムは、UIが煩雑で操作性が悪い場合があります。操作性の悪いシステムでは、従業員の業務効率が低下します。
また、適切な運用が難しくなり、一部の人物しか使えないブラックスボックス化したシステムとなりえます。業務の属人化にも繋がり、深刻な問題となる可能性があります。
ビジネスチャンスの喪失
変化の激しい現代において、古い技術で構築されたレガシーシステムは、競合他社に後れを取る原因となります。
レガシーシステムを使い続けていると、市場の変化に対応できず、競合他社が画期的なサービスや新製品をリリースしている一方で、自社の新サービスの開発が遅れるかもしれません。
レガシーシステムは、企業のビジネスチャンス喪失の可能性を高めます。
レガシーシステムから脱却するには
レガシーシステムを使い続けることは、様々な問題を抱えることになります。では、レガシーシステムのリスクを回避するためには、どうすればいいのでしょうか。
具体的には、以下の3つの方法が考えられます。
マイグレーション
マイグレーション(Migration)とは、日本語で「移行、移住、移転」を意味します。
古いシステムから新しいシステムへ移行し、レガシーシステムの脱却を目指します。最新の技術が取り入れられ、業務効率の最適化が見込めます。
一方で、システムの使用感が変わるため、扱う側によっては戸惑う場合もあります。
システムを使う現場が困らないように、現場の意見も取り入れながら、システムの移行を進める必要があります。
モダナイゼーション
モダナイゼーション(Modernization)とは、日本語で「現代化」を意味します。
レガシーシステムを、活かしながら最新の技術を取り入れます。マイグレーションと違い、レガシーシステムの仕様や蓄積されたデータを活用するので、使う側はシステムの使用感が変わらない場合も多いです。
レガシーシステムの資産や安定性と、新しい技術による業務効率化が両立できます。
注意点は、モダナイゼーションの対象と目的を明確化することです。
モダナイゼーションを推進するメンバーが、対象と目的を明確に設定していないと、業務効率化を果たせず、コストばかりがかかってしまう事態に陥る可能性があります。定量的に目標を設定し、レガシーシステムの脱却成功の評価基準を明確にしましょう。
クラウドサービスへ移行する
レガシーシステムをクラウドサービスに移行する方法も、レガシーシステム脱却の有効な手段の一つです。物理サーバーから仮想サーバーへ移行するなど、オンプレミス環境からクラウド環境へ基幹システムを刷新することで、セキュリティの向上、運用負荷の軽減などレガシーシステムの課題解決につながることが期待されます。
注意点は、モダナイゼーションのように、オンプレミスとクラウドの両環境を併用する際、システム間でのデータ連携を構築することです。それぞれの環境の間でデータ連携が適切に行われていないと、システムがうまく機能しない可能性がでます。
システムが上手く機能しない場合、レガシーシステムを刷新したのに、余計に手間がかかり、新システムを最大限活かせません。
まとめ
レガシーシステムとは、企業を長年支えてきた、古い技術のシステムを指します。
レガシーシステムには、ユーザーにとって使い慣れている安心さや安定性が担保されています。一方、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- システム障害
- 業務効率の低下
- ビジネスチャンスの喪失
レガシーシステムの脱却の方法は、以下の通りです。
- マイグレーション
- モダナイゼーション
- クラウドサービスへ移行
進化の激しい昨今の市場の中で、ビジネスを成功させるために、レガシーシステムへ早急に対応する必要性が高まっています。ぜひ、レガシーシステム脱却の方法を検討し、DX推進をはじめましょう。