多くの企業で当たり前のようにサーバーが導入されている今日、自然災害の多い日本においては、設置する場所がとても重要になります。もし、サーバーの設置環境が災害リスクの高い場所だったり、設備環境の管理が甘かったりすると、自然災害によりサーバーラックが倒壊、電源の共有がストップしてしまい事業が停止してしまう恐れがあります。このような事態を回避してくれるのが、ハウジングサービスなのです。
本記事では、ITアウトソーシングの一つであるハウジングの詳しい解説やメリットデメリットについて説明していきます。よく間違えられるホスティングやクラウドサーバーとの違いについても解説していますので、本記事を参考に、ハウジングが自社のニーズにあったサービスか、確認してください。
ハウジングとは
ハウジングとは、自社で準備したサーバー機器の設置場所を提供してもらうサービスです。「コロケーション」とも呼ばれ、サービス事業者へ自社のサーバーを「預ける」のが特徴です。また、場所だけでなく物理セキュリティ、インターネット、電力、冷却などのインフラ面の管理もサービス事業者より提供されます。
サーバーが問題なく稼働する環境は提供されますが、サーバーの準備以外に自社で行わなければならない作業もあります。それは、サーバー構築と保守対応です。稼働環境にまで気を配る必要がなく、サービスを依頼する側としては、サーバー運用やコア業務に専念することができます。
ホスティングやクラウドサーバーとの違い
ハウジングとよく間違えられるサービスに「ホスティング」や「クラウドサーバー」があります。混同して覚えていることが多いと思いますので、その違いについて解説します。
ホスティングとの違い
ホスティングとは、サービス事業者が提供する「データセンター」に設置してあるサーバーをインターネット経由で顧客へ貸し出すサービスのことをいいます。そのため、ホスティングは「レンタルサーバー」とも呼称されます。ブログ運営が可能なWebサーバーや、メールサーバーとしての利用が多いです。
ハウジングが自社サーバーを「預ける」イメージに対して、ホスティングはサーバーを「借りる」イメージです。
インターネット通信用のサーバーやネットワーク機器を設置し、管理する施設のことです。データセンター内には、ネットワーク接続、電力供給、冷却システム、セキュリティ対策などのインフラが整備されています。
一般的にはハウジングよりも初期投資や月額コストが安価になる傾向があります。ただし、障害発生時は自社対応することができず、サービス事業者の対応を待つしかありません。その間のサーバー運用は継続できず、復旧を待つことになります。
クラウドサーバーの違い
クラウドサーバーとは、物理的なサーバーを使用するハウジングやホスティングとは違い、仮想サーバーをインターネット上で利用するサービスです。代表例としては、Amazon社のAWSやMicrosoft社のAzureが該当します。
オンデマンドでコンピューターリソースを調整でき、利用するサーバーの性能や容量を細かく設定できるのがメリットです。料金も設定のリソースによって細かく変動できるので、無駄な維持コストを支払う必要がありません。
ただし、自由度の高さがメリットではありますが、適切にサービスを構成するには専門的な知識が必要で、ビジネスの内容によっては構成が複雑になる場合もあります。
ハウジングのメリット
ハウジングのメリットには、サーバ設備の維持管理業務の軽減が挙げられます。他にはどんなメリットがあるのでしょうか。以下の三つをご紹介します。
災害・BCP対策になる
ハウジングサービスで提供されるデータセンターは、自然災害に影響されにくい場所に設置されることがほとんどです。
企業は、自然災害などの緊急事態であっても、出来る限り事業を停止することなく継続する必要があります。そのためには、大地震や洪水などの自然災害発生に備え、耐震設備が整った影響を受けにくい設備が必要であり、停電の発生時には緊急電源の供給が必要です。
ハウジングサービスは、上記のような設備の整った環境を提供されるため、万が一災害が発生しても、高い耐震性や安定した電力供給など、万全な体制でサーバー運用を維持してくれます。
そのため、物理的なサーバーインフラの信頼性の高さが、ハウジングの主なメリットと言えます。ハウジング事業者を選択する際は、より災害リスクの低い立地のデーターセンターを選べば、より災害・BCP対策として万全となります。
設備拡張や変更が柔軟にできる
ハウジングサービスでは、自社でサーバーを準備するので導入から運用まで自由にカスタマイズできます。自社のニーズに合わせてサーバー機器やネットワーク環境を柔軟に変更や拡張し、ビジネスの成長に合わせたシステム環境を設定できます。
具体的には、サーバー機器の機種やスペック、ストレージ容量、CPUの性能であったり、複数のサーバー機器を並列させることも可能です。このような機器や環境は、必要に応じて拡張または縮小も可能です。
インターネット回線も自社で準備するため、データセンターに高速な通信回線を設置し、快適で高速なネットワーク環境を確保できます。
自社サーバールームよりも低コスト
もし自社でサーバールームや施設を準備すると、以下のような設備環境の準備と運用中の維持管理が必要になります。
- 耐震/免震設計
- 適切な電力管理
- サーバールームの温度、空調、消火設備
- 24時間365日対応可能なセキュリティ対策の警備システムもおよび人員の配置
- 回線のエラー監視
上記のような設備で正常に稼働を維持しつつ万が一の時のために常時エラー監視を行うには、莫大なコストと人材が必要です。ハウジングサービスを利用すれば、このようなコストを低く抑えることができます。
専門的な知識や緊急時の迅速な対応も必要になるので、必要な業務をサーバールーム管理のプロに委託できれば、自社の業務負担を軽減できるでしょう。
ハウジングのデメリット
ハウジングサービスのメリットについてご説明しましたが、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは以下の二つをご紹介します。
利用開始に時間がかかる
ハウジングサービスでは、サーバー機器の準備や回線の選定と引き込みなどは自社で担う必要があります。これからサーバー運用を開始したい場合に、導入準備の時間や手間がかかる可能性があります。
既に自社でサーバーを運用していても、サーバー機器などの移行や設定引き継ぎなどの作業が必要になるので、専門的知識を持った人材が作業に当たる必要があります。
サーバー運用に精通した人材が自社内に必要
サーバーの構築や機器選定、運用までを自社で行わなければいけないので、それらについて知識や経験のある人材を確保する必要があります。
IT人材を初めから育てるには時間がかかるので、IT人材派遣サービスを利用することも可能です。なんにせよ、まだサーバー運用に精通した人材が自社内にいない場合は、時間やコストが別途発生する点に注意が必要です。
ハウジングサービスまとめ
本記事では、ハウジングサービスについて、ホスティングやクラウドサーバーとの違いも含め、詳しく説明しました。ハウジングのメリットやデメリットは以下の通りです。
- 災害・BCP対策になる
- 設備拡張や変更が柔軟にできる
- 自社サーバールームよりも低コスト
- 利用開始に時間がかかる
- サーバー運用に精通した人材が自社内に必要
ハウジングサービスを利用することで、自社のサーバー運用を安心安全に維持することができます。大規模な自然災害はいつやってくるか分かりません。万が一の緊急事態が発生する前に、しっかりと対策を講じておきましょう。