デジタル化が進む今、社内外のシステムやSaaSをいかに素早くつなぐかは、企業の競争力を左右する大きな課題です。
しかし、連携方法として「iPaaSを導入する」か「APIを連携する」かで迷う担当者は多いのではないでしょうか?この記事では、iPaaSとAPIの違いだけでなく選定のコツも解説するので、ぜひご覧ください。
iPaaS・API連携とは?
iPaaSおよびAPIの連携方法を検討する前に、それぞれの基礎を押さえておく必要があります。まずは、iPaaSとAPI連携それぞれの要点をしぼってわかりやすくご紹介します。
iPaaSの仕組み
iPaaSは「Integration Platform as a Service」の略称で、さまざまなシステムやデータを集約し、データフローを構築できるクラウド基盤です。
ノーコードやローコードで扱えるためエンジニア以外でも操作でき、現場主体の改善を推進できます。
API連携の仕組み
APIは「Application Programming Interface」の略称で、データを別のシステムに連携するための仕組みです。
API連携の活用により、開発工数の削減や一部機能の改良にも役立ちます。
あなたに合うのはiPaaS?API連携?
最初に結論を述べると、複数のサービスを短期間で結びつけたい企業や運用をベンダーに任せたい企業には「iPaaS」が向いています。
一方で、連携対象が限定的でコードレベルまで細かく制御したい場合は「API連携」がよいでしょう。
【早見表】iPaaS・API連携
iPaaSとAPI連携のどちらを選択するかは、導入後のコストや運用体制に大きく影響します。まずは早見表でiPaaSとAPI連携の違いを確認していきましょう。
項目 | iPaaS連携 | API連携 |
開発スピード | 早い | 遅い |
複数システムの連携 | 簡単 | 難しい |
導入スピード | 早い | 遅い |
柔軟性 | 低い | 高い |
保守の工数 | 少ない | 多い |
セキュリティ対策 | 標準機能あり | 開発が必要な場合あり |
利用料 | 必要 | 不要(一部有料のAPIもあり) |
連携にかかる工数を省力化したい企業は「iPaaS」、工数をかけてでも柔軟性を求める企業は「API連携」が適しています。
iPaaSとAPI連携の違いを徹底比較【7項目】
ここからは、上記の早見表でご紹介した7項目をもう少し踏み込んで比較していきます。
①開発スピード
「iPaaS」はノーコード・ローコード開発のため、コードの知識や開発経験がなくても開発を進めていけます。現場部門主体で進められるため、開発スピードも早まります。
「API連携」は、情シス部門や開発が出来るエンジニアに作業が集中してしまうため、iPaaSと比較して開発スピードは劣ります。
②複数システムの連携
「API連携」は、データを別のシステムにAPIを利用して連携する仕組みです。連携対象を増やすほど全体の構成は次第に複雑化します。
これに対して「iPaaS」は複数システムのデータを連携する基盤であるため、連携対象のシステムが複数あってもスムーズに連携できます。
③導入スピード
「iPaaS」は、連携でよく使われるテンプレートやコネクタが用意されているため、導入がスムーズです。
一方「API連携」は、これらを一から自社で準備する必要があるため、導入までに時間がかかります。
④柔軟性
「API連携」は、自社の仕様に合わせてAPIを設計し、認証方法を決めるなど柔軟に開発できます。
「iPaaS」は、ドラッグ&ドロップ操作でデータフローを構築できるものの、開発には限度があります。iPaaSの中で柔軟性を求める場合は、ローコードのiPaaSを選択することである程度自由に開発できます。
⑤保守の工数
「API連携」では、アップデートなどによってAPIの仕様が変更となった際に、自社で一から対応する必要があります。
「iPaaS」は、ツール側で機能追加や動作検証が行われるため保守工数の軽減につながります。ただし、バージョンアップ対応など自社での対応が必要な場合もあるので、iPaaSを選定する際に確認しましょう。
⑥セキュリティ対策
「iPaaS」は、ツール側で暗号化や権限分離、監査ログといったセキュリティ機能を実装している場合が多いため、こうした機能を活用することで監査対応にも役立ちます。
「API連携」ではこれらを自社で準備し、管理していく必要があります。
⑦利用料
「iPaaS」は月額利用料が必要となり、実行フロー数やデータ転送量に応じて金額が変わる従量課金制を採用しているものが多いです。
一方で「API連携」は無料で提供されているものが多いです。ただし、有料のAPIも存在するので、選ぶ際には注意が必要です。
iPaaSが向いているケース
iPaaSが向いているのは、連携対象が多岐にわたる企業やエンジニアなしで開発を進めたい企業です。ここからはiPaaSが向いている企業の代表的な2つのケースを取り上げます。
SaaSの管理が煩雑で一元管理したい企業
営業・マーケティング・カスタマーサポートなど部門ごとにSaaSを導入している企業はデータがサイロ化していることが多いため、iPaaSにデータを集約することで、連携にかかる人手や時間を大幅に削減できます。
ノーコード・ローコードで業務自動化を進めたいDX部門
専任エンジニアがいない組織でも、ノーコード・ローコードが特徴のiPaaSであれば担当者が自らデータフローを設計できます。
ノーコードのiPaaSであれば、コードの記述なしでデータフローの作成が可能です。そのため、IT人材がいない企業であっても比較的簡単に開発を進められます。
また、ローコードのiPaaSであれば、コードを自社で開発したり変更したりすることで、細かい内容まである程度自由に開発が可能です。ノーコード・ローコードでDX推進施策を素早く実行できるのが、iPaaSの魅力です。
当社は設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、webMethodsなどのiPaaSをはじめ、システム連携の支援実績があります。ノーコード・ローコードで業務自動化を進めたい方は、ぜひ当社へご相談ください。
API連携が向いているケース
API連携の強みは、柔軟性を突き詰められる点にあります。API連携の優位性が際立つケースを解説します。
複雑な連携ニーズがある企業
複雑な連携要件に対応したデータ連携を実現したい場合は、柔軟性が高いAPI連携が向いています。
また、金融業界など自社のセキュリティ基準と各iPaaSがもつセキュリティ基準が異なる場合、自社のニーズに対応したAPIを使うことで、セキュリティ基準を満たした開発が可能です。
まとめ
データの連携方法でiPaaSを選択するかAPI連携で悩んだ際は、今回ご紹介した「開発スピード・複数システムの連携・導入スピード・柔軟性・保守の工数・セキュリティ対策・利用料」の7項目を比較しながら自社に合うものを選択してみてください。
複数のシステムとの連携および現場主体でのDX推進を求めるなら「iPaaS」、連携に柔軟性を求める場合は「API連携」が効果的です。
データ連携は導入して終わりではなく、事業成長とともに再設計が不可欠となります。初期段階から拡張と置き換えを視野に入れた設計が、企業のDXを力強く後押しする近道となるでしょう。