DX推進が進む今、クラウドやオンプレミスに散在するシステムを「つなぐ」基盤としてiPaaSが注目されています。
しかし「機能の全体像がつかめない」「どのiPaaS製品が自社に合うのか判断しにくい」「導入メリットやコスト感が見えない」という声が多いのも現状です。
本記事では、そうした疑問を解消するためにiPaaSの基本機能やメリット、選定のポイントまでを徹底解説します。
iPaaSとは?
iPaaSは「Integration Platform as a Service」それぞれの頭文字をとった言葉で「アイパース」と呼ばれています。
複数のシステムやクラウドサービスを「連携する」クラウド型のデータ連携基盤であり、データに応じてbatch転送やリアルタイムに近いデータ連携の設定が可能です。データ連携の結果は、iPaaSの管理画面上にて一覧で確認できます。
iPaaSの【主要機能】を詳しく解説
ここからは、iPaaSが備える基本機能を詳しく解説します。どのiPaaS製品を選ぶ場合でも、基本的な機能要件として押さえておくと、iPaaS導入後のギャップを防げます。
データ連携
iPaaSは、異なるシステム間のデータ連携を基本機能として備えています。SaaS間だけでなく、オンプレミス環境からクラウド環境へのデータ連携なども行えます。
手作業でのデータ連携を実施していた、個別でデータ連携のプログラムを開発していたという企業は、iPaaSを導入することで比較的容易にデータ連携を行えます。
業務の自動化
iPaaSで異なるシステムを連携することで、業務の自動化につながります。
例として、顧客の注文データを在庫管理のシステムに連携することで、在庫がある場合は受注の手続き、在庫がない場合は発注システムへデータを受け渡せます。
結果として、人手に頼っていた定型業務をまとめて自動化し、処理時間の短縮とミスの防止につなげられます。
SaaSのデータ連携の仕組みを解説
ここからは、SaaSにおける代表的なデータ連携方法である「レシピ型(iPaaS)・ETL(ELT)型・EAI型・ESB型」の4つをご紹介します。
レシピ型(iPaaS)
「レシピ型」は、よくある連携業務をあらかじめテンプレート化して提供する方法です。
利用者はテンプレートを選び、接続先や条件を設定するだけでスムーズにデータ連携を立ち上げられます。データ連携にはさまざまな手段にありますが、レシピ型はiPaaSの連携において広く採用されています。
ETL (ELT)型
ETLは「Extract Transform Load」の頭文字で、データを取り出し、必要な形に整え、保存先へ書き込む一連の流れを指します。
この連携方法では、複数のデータソースから集めた情報を1ヵ所に集約・変換します。変換したデータは、大量データの分析やダッシュボードの作成などに利用できます。
EAI型
EAIは「Enterprise Application Integration」の頭文字で、企業内の複数アプリケーションやデータを連携する仕組みです。
クラウド間のデータ連携を得意とするiPaaSに対し、EAIは社内のサーバーなどのオンプレミス環境との連携を得意とします。
ESB型
ESBは「Enterprise Service Bus」の頭文字で、アプリケーションやデータを相互に接続する仕組みで、バス(Bus)経由でデータ連携を行うのが特徴です。
社内のさまざまな業務システムを中央の「ハブ」につなぎ、そこを経由してデータのやり取りを行います。
RPAとの違いとは?
iPaaSとRPAは自動化という面では似たツールですが、詳しく見てみるとそれぞれに違いがあります。
RPA(Robotic Process Automation)は、画面操作の自動化に役立つツールです。例として複数システムへのログインなど、面倒な画面の操作を覚えさせて実行するといった目的で活用されます。
iPaaSは、データの連携によってシステム間をつなぐツールです。部門間で異なるデータをiPaaSで連携することによって、業務の自動化が可能です。
「RPA」は画面操作の自動化、「iPaaS」は異なるシステム間のデータ連携という活用方法が異なるので、自社の目的にそって選びましょう。
iPaaSの導入によるメリット3選
つづいては、iPaaSを導入することで得られる代表的なメリットを3つご紹介します。iPaaS導入の効果や削減工数について、確認していきましょう。
システム間の連携による業務効率化
iPaaSは異なるシステム間であってもデータ連携ができるため、今まで手入力で対応していた業務やそれにともなう人的ミスを減らし、業務効率化につながります。
ノーコード開発による開発負担の軽減
ノーコード対応のiPaaSは、専門的なプログラミング知識がなくてもデータ連携フローを作成できます。
そのため、現場部門が主導で開発を進めることができ、これまで開発業務が集中していたIT部門の負担の軽減につながります。
運用・保守にかかる工数の削減
複数システムにわたるデータ連携は連携結果の運用監視が必須になりますが、iPaaSであれば監視ツールが備わっているため、簡単に確認が可能です。
iPaaSであれば、最新モジュールへのアップデートや追加機能はメーカー側で対応するため、新規開発などといった保守にかかる工数を削減できる場合があります。
iPaaS導入後の運用保守を想定して、自社に最適なiPaaSを選定することが重要です。
iPaaS導入の進め方
iPaaS導入を成功させるためには、計画を立てて段階的に進めることが重要です。ここからは、一般的なiPaaS導入の4ステップをご紹介します。
当社は設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、webMethodsなどのiPaaSをはじめ、システム連携の支援実績があります。iPaaSの導入でお困りの方は、ぜひ当社へご相談ください。
現状調査・要件定義
まずは、現行の業務をもとに、連携対象システムとデータの流れを整理しましょう。
要件定義段階では、連携したいデータの種類や各システムの連携手順など、必要不可欠な要件を具体的に定めます。また、セキュリティ要件なども整理することが重要です。
iPaaSツールの選定
現状調査や要件定義の内容にもとづいて、導入するiPaaS製品をいくつか選定しましょう。機能やコストといった、自社の要件に当てはまるiPaaSツールを広く調査することが重要です。
iPaaSでは、よく使われる連携業務をテンプレートとして用意しています。そのため、どのiPaaS製品を選定すればよいのかわからないという方は、自社の連携したいシステムのテンプレートがあるiPaaSを選択するのもひとつの手段です。
トライアル・PoC
トライアル・PoCでは、選定したiPaaS製品が自社の要件を達成できるかどうかを確認します。iPaaS製品によっては、導入前に実際の操作感を試せるものもあるので活用しましょう。
トライアル・PoCで自社要件を満たすことが確認できれば、導入・社内展開のステップへ移ります。
もしトライアル・PoCで自社の要件を満たせなかった場合は、iPaaSツールの選定段階に戻って再検討する必要があります。
導入・社内展開
最初の導入は、失敗してもあまり業務に影響が出にくいデータ連携をピックアップし、実際にiPaaS連携を行い、iPaaS運用のノウハウを蓄積します。
十分にノウハウが蓄積できた段階で従来のデータ連携から本格的にiPaaS連携へ移行し、徐々に社内展開を進めていきましょう。
まとめ
iPaaSは、複数のシステムを「連携する」データの連携基盤です。主要な機能を理解することで、自社に最適なiPaaSを選びやすくなります。
代表的なiPaaS導入のメリットは「システム間の連携による業務効率化」「ノーコード開発による開発負担の軽減」「運用・保守にかかる工数の削減」の3つです。
iPaaSを活用することで日々の業務をスピードアップし、DXを実現していきましょう。