【図解】LLMと生成AIの違いは?仕組み・種類から活用事例まで徹底解説

生成AIの話題が当たり前になった今、「LLM(大規模言語モデル)」という言葉もよく耳にします。生成AIとLLMをよく理解せずに使う方も多く、導入検討や社内説明で話が噛み合わないケースも増えています。

結論から言うと、”LLMは生成AIを成立させる中核技術の一つ”であり、生成AIはLLMを含むより広い概念です。と言われても、イマイチピンと来ない方も多いと思いますので、本記事では、LLMと生成AIの違いに焦点をあて、仕組み・種類・使い分け・活用事例についてわかりやすく解説します。

目次

LLM(大規模言語モデル)とは?仕組みと定義

LLMとは、大規模なテキストデータを学習し、人間のような自然な文章を生成できるAI技術です。英語ではLarge Language Modelと言い、日本語では大規模言語モデルと訳されます。この章では、LLMの基本的な仕組みを定義し、どのようなことができるのか詳しく解説します。

LLMは確率の計算機

LLMは、簡単に言えば”次に来る言葉”を予測して文章を生成する、高度な「確率の計算機」です。一見会話が成立しているので、AIが意味を理解して回答していると思いがちですが、LLMは意味や感情を理解して会話しているわけではありません。

インターネット上の膨大なテキストデータ(Webサイト、書籍、論文など)を読み込み、「ある言葉の次に、どのような言葉が来る確率が高いか」を統計的に学習しています。(※厳密には「単語」よりも細かい「トークン」という単位で処理されます)

例えば、「昔々、あるところに」という入力があれば、高い確率で「おじいさんとおばあさんが」が続くと予測します。この「次に来るトークンの予測(Next Token Prediction)」を何億、何兆回と繰り返すことで、あたかも人間が思考しているかのような流暢な文章生成を実現しているのです。

この学習に使われるデータ量やパラメータ数(ニューロンの結合強度)が「大規模(Large)」であるため、LLMと呼ばれています。

LLMができること・得意な領域

LLMが得意なのは、主にテキストを中心とした生成・変換です。

  • 文章の要約: 長文のレポートを数行にまとめる
  • 翻訳: 文脈を汲み取った高精度な多言語翻訳
  • 質疑応答: マニュアルやデータベースに基づいた回答
  • アイデア出し: ブレストの壁打ち相手
  • コード生成: 自然言語の指示からプログラムコードを書く

従来のAIは「決められたルールの中で答えを出す」ことが主でしたが、LLMは「文脈を理解し、新しい答えを創り出す」ことができる点が革命的と評されました。

【図解】LLMと生成AIの違いとは?関係性を知る

この章では、LLMと生成AIの違いや関係性について解説します。

生成AIとLLMの定義・役割の違い

まず、それぞれの定義を整理しましょう。

  • 生成AI(Generative AI): 学習したデータを基に、コンテンツを生成できるAI技術の「総称」です。テキストだけでなく、画像、音声、動画、3Dモデルなど、あらゆるクリエイティブなデータを生成する技術全般を指します。
  • LLM(大規模言語モデル): 生成AIの中でもテキスト生成AIに分類され、言語の扱いに特化した基盤技術のことです。つまり、「生成AI」という大きな箱の中に、「LLM」という種類の道具が入っているイメージです。

【図解】生成AIの中にLLMが含まれる「包含関係」

「LLMと生成AIの違いは?」と聞かれたら、「生成AIは技術の総称であり、その中でテキストを専門とする技術がLLMである」と答えるのが正解です。

使い分けのポイント(テキストならLLM、画像なら画像生成AI)

実務の使い分けはシンプルです。

  • 文章を作りたい、要約したい、翻訳したい
    • 選ぶべき技術: LLM(大規模言語モデル)
    • メール作成、チャットボット、議事録作成などが該当します。
  • スライドの挿絵が欲しい、デザイン案を出したい
    • 選ぶべき技術: 画像生成AI(拡散モデルなど)
    • ここにはLLMではなく、画像の生成に特化した専用のAIモデル(Stable DiffusionやMidjourneyなど)が該当します。Stable DiffusionやMidjourneyなどの画像生成AIは、拡散モデルという仕組みで視覚イメージを作り出します。

最近では、GPT-4oのように画像もテキストも一度に扱える「マルチモーダルAI」も登場していますが、裏側ではそれぞれの得意な技術が連携して動いていると理解しておきましょう。

【種類】ChatGPTだけじゃない?代表的なLLMモデル

「LLM=ChatGPT」と認識されている方も多いですが、ChatGPTはあくまでサービス名であり、その裏側で動いているエンジン自体の仕組み(種類)が「LLM」です。現在、世界中のテック企業がLLMの開発競争を繰り広げています。ここでは、ビジネスで検討すべき主要なモデルを紹介します。

ChatGPTとLLM(GPT-4)の関係

まず、混同しやすいこの関係を整理しましょう。

  • ChatGPT: OpenAI社が提供する「チャットサービス(アプリケーション)」
  • GPT-4o / GPT-4o mini: ChatGPTの裏側で動いている「LLM(言語モデル)」

車で例えるなら、ChatGPTは「カローラ(車種)」で、GPT-4o or miniは「高性能エンジン」です。つまり、「ChatGPT」というサービスに聞きたいことを入力すると、中の「LLM」が動いて答えを導き出し、それを「ChatGPT」の画面上に表示してくれるということです。

世界3大LLMモデル(GPT、Gemini、Claude)の特徴比較

現在、ビジネスユースで主流となっている3大モデルの特徴を比較表にまとめました。(特徴・強みに関してはアップデートが速いため、導入時は最新情報の確認が前提です)

導入時は、優れているものを選ぶのではなく「自社の環境や目的にどれが合致するか」という視点でチェックしましょう。

モデル名開発企業特徴・強みビジネスでのおすすめ用途
GPT-4oOpenAI総合力No.1。論理的推論能力が高く、マルチモーダル(画像・音声)対応もスムーズ。汎用的な業務、複雑なタスク処理、API連携
Gemini 1.5 ProGoogle長文処理に強い。Google Workspace(Docs, Gmail)との連携が強力。膨大なマニュアルの読み込み、Google環境での業務
Claude 3.5 SonnetAnthropic自然な日本語とコーディング能力。人間らしい温かみのある文章生成が得意。ライティング、カスタマーサポート、プログラミング

【活用】ビジネスにおけるLLM・生成AIの具体的事例5選

昨今よく聞こえてくるのは、「すごい技術なので導入したいけど、具体的にどう実務につなげるの?」という疑問です。 ここでは、多くの企業で既に成果が出ている5つの活用事例をご紹介します。

【業務効率化】議事録要約・メール作成・多言語翻訳

最も導入ハードルが低く、効果を実感しやすい領域です。 LLMは「構造化されていないテキスト」を整理することに長けており、定型的で文章量が多い業務ほど、LLMの効果がでます。

  • 議事録: 1時間の会議の文字起こしをLLMに読ませ、「決定事項」「To Do」「保留事項」に分類して要約させる。
  • メール: 箇条書きの要件から、失礼のないビジネスメールを生成する。
  • 翻訳: 専門用語が多い海外の技術ドキュメントを、自然な日本語に翻訳し要約する。

下書き作成までをLLMに任せ、人は確認と調整に集中することで、社員一人あたり毎日30分~1時間ほどの時短効果が見込めます。

【開発・IT】コード生成によるプログラミング工数削減

プログラミングの領域では、LLMがコーディング作業を大幅に効率化しています。開発者が自然言語で実装したい機能を説明することで、LLMが適切なプログラミング言語でコードを生成します。

例:「ユーザー登録機能をPythonで実装して」と指示すると、データベース接続からバリデーション、エラーハンドリングまで含んだコードが出力される。

既存コードのリファクタリングやバグ修正も得意で、開発者の生産性を30〜40%向上させるという調査結果もあります。

【マーケティング】SEO記事作成や広告コピーの量産

コンテンツマーケティングを行う企業では、LLMによる記事作成が急速に普及しています。ターゲットとなるペルソナを設定し、SEO記事の構成案を作成させたり、100通りの広告キャッチコピー案を出させたりすることが可能です。クリエイティブの初期段階のアイデア出しに活用する企業も増えています。

ただし、まだまだハルシネーションも多く、最終的なファクトチェックや「人間味」の付加は、人間の編集者が行う必要があります。

【社内ナレッジ活用】RAGによる「社内専用AI検索」の構築

昨今、企業導入で最も注目されているのがRAG(検索拡張生成)という技術です。 一般的なLLMは社外の一般情報しか知りませんが、RAGを使うと「社内マニュアル」や「過去の提案書」などの内部データを参照して回答させることができます。

「就業規則について教えて」「過去のA社のトラブル事例は?」といった質問に即座に答える「社内専用AI検索」は、ナレッジ共有のあり方を根本から変えつつあります。

RAGの業務活用一例

  • 社内規程、手順書、過去の提案書
  • 製品仕様、障害対応履歴、FAQ
  • ナレッジベース、議事録

【顧客対応】24時間対応のAIチャットボット・ボイスボット

従来の「シナリオ型ボット(選択肢を選ぶだけのボット)」とは異なり、LLM搭載ボットは顧客の曖昧な質問意図を理解し、24時間対応で自然な対話で解決へ導きます。

ボイスボットでは、音声認識とLLMを組み合わせ、電話での問い合わせにも自動対応が可能です。予約受付や簡単な問い合わせ対応を自動化することで、オペレーターの負担を軽減し、コスト削減と顧客満足度向上を両立できます。

LLMの常識が変わる?「SLM(小規模モデル)」の台頭

これまでは「モデルは大きければ大きいほど賢い」という「LLM(大規模)」の時代でしたが、2024年以降、新たなトレンドとして「SLM(Small Language Models:小規模言語モデル)」が注目されています。

SLMとは?巨大化するLLM vs コストを抑えるSLM

SLM(Small Language Models)とは、膨大な知識を持つLLMに対し、あえてモデルの規模をコンパクトにすることで、低コストかつ軽快な動作を実現し、特定の目的において高い効率を発揮する『軽量特化型のAIモデル』のことです。

LLMは高性能な一方で、利用量が増えるほどコストが膨らみます。対してSLMは、少ないリソースで動作するため、運用コストを大幅に削減できます。特定のタスクに特化させることで、大規模モデルに匹敵する性能を発揮するケースもあります。

”なんでもできる天才”ではなく”特定の仕事が早い職人”というイメージです。

クラウドから「オンプレミス・エッジAI」への回帰

SLMがこれほど注目される最大の理由は、企業の「セキュリティへの危機感」にあります。従来の巨大なLLMはクラウド利用が前提で、「機密データを社外に送信する」という構造的なリスクを抱えていました。

そこで現在、データを外部に出さず自社サーバー(オンプレミス)で運用したり、通信を行わずPCやスマホ等の端末(エッジ)内で処理を完結させたりする動きが加速しています。 軽量なSLMなら、巨大な設備がなくてもこれらの環境で稼働可能です。今後はクラウドの大規模モデルとオンプレミスのSLMを組み合わせたハイブリッド運用が主流になると予想されます。

導入前に知っておくべき課題とリスク

LLMと生成AIの導入には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの課題やリスクも存在します。この章では、企業が導入前に理解しておくべき重要なポイントを解説します。

もっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」

LLM最大の弱点は、ハルシネーション(Hallucination=幻覚)です。 ハルシネーションとは、LLMが学習データに存在しない事実や、誤った情報をもっともらしい文章として生成してしまう現象のことです。

LLMは、確率は計算するものの、事実確認は行わないためもっともらしい文体で平気で嘘をつきます。重要な情報は必ず人間がファクトチェックを行う、信頼できる情報源との照合機能を実装する、RAGで検証可能なデータソースを参照させる、といった方法で対策を行う必要があります。

情報漏洩を防ぐための「セキュリティ」と「学習データ」の扱い

一般的な生成AIサービスに入力したデータが、モデルの学習に利用され、他のユーザーへの回答に反映されるリスクがあります。(オプトアウト設定をしていない場合)機密情報や個人情報を含むデータの取り扱いには細心の注意が必要です。

多くの商用生成AIサービスは、企業向けにデータを学習に利用しないオプションを提供しています。ChatGPT Enterpriseなどは、入力データを学習に使用せず、データの保存期間も明示しているため、企業で利用する際は個人での利用を禁止し、商用サービスを契約・導入することをおすすめします。

著作権侵害リスクと企業のガイドライン策定

生成された文章や画像が、既存の著作物に酷似していた場合、著作権侵害に問われる可能性があります。

米国ではNew York TimesがOpenAIを提訴するなど、LLMの学習データと著作権をめぐる法的議論が続いています。日本でも、生成AIと著作権の関係について文化庁がガイドラインを示していますが、グレーゾーンも多く存在します。

企業で活用する場合は、禁止ではなくルール化が重要です。「何を入力してよいか」「何を公開前にチェックするか」を明文化し、現場が迷わない状態を作ることが、導入成功の近道になります。

LLMと生成AIのよくある質問(Q&A)

Q1. LLMと生成AIは、具体的に何が違うのですか?

A. 「生成AI」は画像・音声・動画などを含む「クリエイティブなデータを生成する技術の総称」です。対して「LLM(大規模言語モデル)」は、その生成AIの中で特に「テキスト(言語)の扱いに特化した技術」を指します。つまり、生成AIという大きな枠組みの中に、LLMという道具が含まれているという関係性になります 。

Q2. 企業でLLMを導入する場合、どのような業務に活用できますか?

A. 代表的な活用例として、議事録の要約やメール作成、多言語翻訳による「業務効率化」が挙げられます。また、社内マニュアルや過去の提案書などの内部データを参照して回答させる技術「RAG(検索拡張生成)」を用いた社内専用AI検索の構築や、プログラミングのコード生成による開発工数の削減なども多くの企業で成果が出ています 。

Q3. LLMを利用する上で、気をつけるべきリスクはありますか?

A. 最大の弱点として、事実ではないことをもっともらしく回答する「ハルシネーション(嘘)」があります。また、入力したデータがAIの学習に使われることによる「情報漏洩」や、「著作権侵害」のリスクもあります。そのため、ファクトチェックの徹底や、データを学習に利用しない商用サービスの選定、社内ガイドラインの策定などの対策が必要です 。

まとめ|AIの特性を理解し、自社の課題解決に活かそう

本記事では、LLMと生成AIの違いから、仕組み、最新の活用事例まで解説してきました。

  • 生成AIはクリエイティブなAIの総称、LLMはその中のテキスト専門家
  • ビジネスでは、ChatGPT(OpenAI)、Gemini(Google)、Claude(Anthropic)などの特徴の理解が重要
  • コストやセキュリティを考慮し、SLM(小規模モデル)RAG(社内データ連携)の活用も視野に入れる

AI技術は驚くほどのスピードで日々進化していますが、重要なのは「AIで何ができるか」ではなく「AIを使って自社の何の課題を解決するか」です。

まずは、「小さく試して、運用を固めて、横展開」していきましょう。対象業務・使うデータ・評価指標を絞ったPoC(概念実証)で、費用対効果とリスクを見える化し、社内で再現可能な型にしていくことをおすすめします。

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