近年、業種を問わず「ペーパーレス化」の重要性が高まっており、そのメリットや具体的な進め方が注目されています。
本記事では、ペーパーレス化を導入することでどのような変化があるのか、具体的な導入ステップや注意点などを解説します。ペーパーレス化にお悩みのある方は、ぜひご覧ください。
ペーパーレス化の背景
ペーパーレス化の重要性が指摘される背景には、ビジネス環境の急速な変化があります。従来は紙の書類で記録や送付を行っていましたが、デジタル化により情報共有がより迅速かつ効率的になりました。
また、他社がすでにペーパーレス化を進める中、導入が遅れると業務のスピードや競争力に影響が出る可能性があります。こうした時代の流れを踏まえ、ペーパーレス化の必要性はますます高まっています。
ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは、業務において可能な限り紙を使用せず、デジタル化された環境で業務を進めることを指します。
ただ書類を電子化するだけでなく、契約書の管理や会議資料の配布、申請、承認などもデジタルで完結させる仕組みを構築することが重要です。
導入にあたっては、自社の業務に適した形でどの範囲までペーパーレス化を進めるのかを慎重に検討する必要があります。
重要性と現状
まずは、ビジネスシーンにおけるペーパーレス化の進展状況を見てみましょう。
2020年の総務省のデータでは「3年以上前から実施している」企業が42.4%、「直近3年以内に実施」の企業が18.0%と、すでに半数以上の企業で導入が進んでいることがわかります。
ただし、残りの40%ほどの企業は積極的なペーパーレス化に対応できていないともいえるでしょう。このように、ペーパーレス化の重要性を認識しながらも、実際の取り組みには差があるのが現状です。
参考:総務省「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書」
ペーパーレス化の主なメリット
ペーパーレス化の推進には、業務の効率化やコスト削減、データ管理の利便性向上など多くのメリットがあります。紙の使用を減らすことで、保管スペースの削減や紛失リスクの低減などにも貢献できます。
ここからは、ペーパーレス化の具体的なメリットを見ていきましょう。
コストが削減できる
ペーパーレス化を導入することで、紙や契約書の購入費用や印刷代、コピー機やFAX機のリース代といったコストを削減できます。
さらに、書類の郵送費や交通費だけでなく、書類を保管したり管理したりするためのスペースや人件費も不要になり、全体的な業務コストを大幅に抑えられます。
このように、ペーパーレス化は単なる紙の削減にとどまらず、さまざまな運用コストの改善につながります。
業務効率が向上する
ペーパーレス化を導入することで、書類のコピーや郵送、保管されている文書の検索といった作業が不要になります。
その結果、業務の無駄が減り作業時間を短縮できるため、業務効率が大幅に向上します。これまで書類管理に費やしていた時間や労力を、より生産的な業務に活用できる点も大きなメリットです。
働き方の柔軟性が向上する
ペーパーレス化を導入することで、働き方の柔軟性が大幅に向上します。
業務がオンラインで対応できることでテレワークやリモートワークがしやすくなり、本社と支社、出張先の従業間のやり取りもスムーズになります。
重要事項の決定や承認も対面せずともどこからでも行えるため、業務の効率化にもつながります。
環境への負荷が軽減できる
日本は紙の消費量が多い国のひとつであるため、環境問題やSDGsの観点からも紙の使用を減らす取り組みが求められています。ペーパーレス化は、そういった課題に対してもアプローチが可能です。
また、企業が環境保護に積極的に取り組むことでブランドイメージの向上につながるため、社会的評価の向上が期待できるでしょう。
セキュリティの強化につながる
ペーパーレス化は、セキュリティ強化につながることもメリットとしてあげられます。
情報を紙からデジタル化することによって、誰がシステムやデータにアクセスしたのかを容易に記録したり管理したりできるため、不正行為の抑止や監視がしやすくなります。
一方、紙媒体は盗難や紛失のリスクが高く、機密情報の管理が困難になりがちです。重要な書類の置き忘れや持ち出しといった人的ミスを防ぐためにも、ペーパーレス化の導入は有効な対策となるでしょう。
DX化推進の第一歩になる
業務のペーパーレス化が進むことで、業務効率の向上に加えてテレワークやリモートワークの導入がしやすくなり、柔軟な働き方の実現にもつながります。
ペーパーレス化とDX化を同時に進めることで、企業の生産性向上や職場環境の改善といった相乗効果も期待できるでしょう。
ペーパーレス化導入のステップ
ペーパーレス化を無理なく導入するためには、適切な手順を踏みながら進めることが重要です。急な移行は業務の混乱を招く可能性があるため、計画的に進める必要があります。
業務を停滞させずに進めるためのポイントをご紹介するので、確認していきましょう。
現状の業務内容を確認する
ペーパーレス化を無理なく進めるには、まず現在の業務内容を正確に把握し、どの部分を優先して進めるのかを検討しましょう。
従業員のスキルやデジタルリテラシーに差があるため、一気に進めるのではなく対応可能な範囲を考慮しながら、段階的に導入する必要があります。
また、取引先のペーパーレス対応状況なども確認し、業務全体の流れに支障が出ないように調整することがポイントです。
目的やゴールを明確にする
ペーパーレス化を進める際は、導入する目的や達成したいゴールを事前に明確にしておくことが重要です。
社内の文書管理を効率化して保管スペースを削減したいのか、テレワークやリモートワークを円滑に進めたいのかなど、課題によって導入すべきシステムやツールが異なります。
導入後にどのようなメリットが得られるのかを具体的に想定し、それを踏まえた計画を立てることで効果的なペーパーレス化を実現しましょう。
ペーパーレス化できる書類や業務を選定する
業務によっては、対面での契約や屋外での作業などで紙媒体が不可欠なケースがあるため、すべての業務をデジタル化するのが難しい場合もあります。
そのため、まずは社内業務の中でペーパーレス化が容易な分野を見極め、スムーズに移行できる部分から取り組むことが成功の鍵となります。
企業にあったシステムやツールを導入する
ペーパーレス化を成功させるためには、自社に適したシステムやツールをじっくり検討したうえで導入しましょう。
導入の目的や対象業務、従業員のITスキルに応じて適切なツールを選ばなければ、コストがかかるだけで、導入後に十分に活用されない可能性があります。自社の業務にフィットし、効率向上につながるシステムを見極めて導入しましょう。
ペーパーレス化やDX推進にお悩みの方は、ぜひ弊社の「ワークフロー導入支援メニュー」をご活用ください。弊社は、設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、ITトレンドを織り交ぜたご提案が可能です。ワークフローの検討・導入・展開時に起こりがちな課題に対して手厚くサポートいたします。
ペーパーレス化を成功させるための注意点
急に全面的にペーパーレス化を導入すると現場が混乱する可能性があるため、ここからは注意点をご紹介します。
準備を整え、まずは少しずつ慣れてもらいましょう。メリットを実感しながら、スムーズに進められる環境を整えることも重要です。
まずは小さな成功体験から目指す
社内でペーパーレス化を取り入れるためには、日常業務での小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
具体的には、以下のような業務から着手してみましょう。
- 会議やプレゼンテーションの資料作成をペーパーレス化する
- 従業員間の書類共有はオンラインで行う
わかりやすくメリットを実感できることで「ペーパーレス化してよかった」と従業員の納得感が高まります。その結果、ITスキルの習得などペーパーレス化に必要な取り組みにも前向きに参加してくれやすくなるでしょう。
必要性を社内共有し浸透させる
ペーパーレス化を定着させるためには、社内でその必要性やメリットをしっかり共有し浸透させましょう。
環境の変化には警戒心をもつ人は多いため、単にコスト削減のためではなく、業務効率の向上など現場にも大きなメリットがあると伝えることが大切です。
従業員が納得すれば導入への抵抗感が減り、スムーズな移行が可能になるでしょう。
社内教育を実施する
ペーパーレス化を成功させるには、社内教育の実施が不可欠です。長年、紙ベースでの業務に慣れていた従業員にとって、いきなりのデジタル化はストレスやプレッシャーを生むため、必要なスキルや知識を学ぶ機会を設けましょう。
全員が適切に活用できなければ一部のスタッフに業務がかたよるため、ペーパーレス化のメリットが十分に得られなくなってしまいます。
コンプライアンス教育
ペーパーレス化が進むことで、重要書類やデータへのアクセスが容易になります。そういった機密保持の観点からも、コンプライアンス教育は欠かせません。
デジタル環境では不正アクセスや情報漏えいのリスクが高まる可能性があるため、会社の規則やセキュリティ対策を徹底し、社員への周知を強化することが重要です。
ITリテラシー教育
ITリテラシー教育は、ペーパーレス化の効果を最大限に活かすために欠かせません。情報の収集や分析、活用スキルを高めるだけでなく、システムやツールを安全に使いこなす能力も求められます。
とくに、従業員一人ひとりのセキュリティ意識の向上が重要です。脆弱なパスワード設定などのリスクを防いだり、デジタル化を活用した業務の効率化を自発的に実施したりするためにも、徹底した教育を行いましょう。
まとめ
ペーパーレス化の導入には多くのメリットがありますが、現場に混乱を招かないよう慎重に進めることが重要です。
導入にあたっては、現場の状況を考慮しながら無理なく浸透させる方法を検討することが、ペーパーレス化推進を成功させる鍵となります。準備と段階的な実施を徹底し、スムーズな定着を目指しましょう。