SAPの「アドオン開発」を活用することで、自社の要件に適したシステムを構築し業務プロセスを最適化できます。アドオン開発にはそうしたメリットがある一方で、導入や運用にともなうデメリットも存在します。
本記事では、SAPのアドオン開発の基本から開発の種類、導入のメリットやデメリット、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。
【基本】SAPのアドオン開発とは?
「アドオン開発」は、SAPの標準機能だけでは対応できない業務要件を満たすために活用される手法のひとつです。企業のニーズに応じてシステムを柔軟に拡張できるため、業務の効率化や独自のビジネスプロセスの実現に貢献します。
まずは、SAPのアドオン開発の基本や必要性、カスタマイズとの違いについて確認していきましょう。
アドオン開発の基本
SAPのアドオン開発とは、標準機能の拡張を目的に追加する独自プログラムのことを指します。標準機能そのものを改変するのではなく、新たな機能を付加する形で開発するため、SAPのアップデートや保守の影響を受けにくいのが特徴です。
アドオン開発の目的は、企業独自の業務要件に対応した機能を追加し、業務の効率化を促進することにあります。また、既存のSAP機能を補完する役割も果たし、より使いやすいシステム環境を構築することが可能です。
アドオン開発の特徴として、SAPの標準機能を維持したまま拡張できる点が挙げられます。システムの一貫性を保ちながら開発を行えるため、SAPのバージョンアップがあった際に柔軟に対応しやすいということもメリットです。
SAPのアドオン開発の必要性
SAPの標準機能は、さまざまな業界や業務に対応できるよう設計されていますが、すべての企業のニーズを完全に満たすわけではありません。
とくに、業界特有の業務プロセスや企業独自の運用方法がある場合、標準機能だけでは対応が難しいケースがあります。そのため、SAPのアドオン開発が必要になります。
アドオン開発を活用することで、SAPの標準機能では対応できなかった業務要件に柔軟に適応することが可能になります。例として、特定のレポート形式の出力や独自の承認フローを実装する必要がある場合、アドオン開発をして機能追加することで対応できます。
また、競争の激しい業界では、他社との差別化を図るために独自の機能を備えたシステムが求められることがあります。SAPのアドオン開発は、こうした個別のニーズに対応し、企業の競争力を高める有効な手段となるでしょう。
アドオンとカスタマイズの違い
「アドオン」と「カスタマイズ」は、どちらもシステムを自社の要件に適応させるための手段ですが、そのアプローチと影響範囲には明確な違いがあります。
アドオンは、SAPの標準機能を変更せずに新たな機能を追加する手法です。既存のプログラムを直接変更しないため、SAPのバージョンアップや保守の際に影響を受けにくいというメリットがあります。
また、アドオンは独立したプログラムとして動作するため、トラブル発生時の影響範囲を調査しやすく、管理が比較的簡単になるという点でも優れています。
一方、カスタマイズは、SAPの標準機能の設定を調整したり既存の機能を変更したりする手法です。カスタマイズはSAPの標準機能を変更するため、SAPのアップデート時に影響を受けやすく、メンテナンス性が低下するリスクがあります。
SAPアドオン開発の種類
SAPのアドオン開発にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる目的や役割をもっています。アドオン開発の基礎を理解したうえで、ここからは主要なアドオン開発の種類とその特徴について見ていきましょう。
帳票関連の機能追加
SAPの帳票関連のアドオン開発とは、標準の帳票レイアウトを使いやすくしたり新たな帳票を追加したりするためのものです。企業ごとの業務要件や業界特有の出力形式に対応するべく活用されます。
たとえば、請求書や納品書のフォーマットを自社仕様にあわせたり、社内の承認フローに適した帳票を作成したりする場合にアドオン開発が行われます。
また、帳票のデザインを自社向けに最適化して視認性を向上させたり、顧客ごとに異なる項目を動的に表示したりするなどのレイアウト変更も可能です。
画面表示の最適化
SAPの標準の画面は、さまざまな業界や業務プロセスに対応できるよう汎用的に設計されています。しかし、実際の業務においては「もっと使いやすくしたい」と感じる場面も多いのではないでしょうか。
こうした場合におすすめなのが「画面表示の最適化」です。画面のレイアウトやUIを変更するアドオン開発の目的は、操作性を向上させてユーザビリティを高めることにあります。
具体的には、頻繁に使用する項目を画面の上部に配置したり、不要なフィールドを非表示にしたりすることで、業務に適したインターフェースを実現できるでしょう。
また、人的ミスを防ぐための入力チェック機能の追加や、選択肢を絞り込めるプルダウンメニューの導入など、業務の効率化をサポートするといった内容も、アドオン開発であれば対応可能です。
接続インターフェースの開発
SAPのシステムは、他の業務システムと連携してデータのやり取りをすることが多いため、スムーズなデータ連携を実現するための「接続インターフェースの開発」が求められる場合があります。
このアドオン開発の内容としては、SAPと外部システムの間でデータを効率的に送受信するためのインターフェースを追加するものです。
外部システムからSAPへデータを取得したり、SAPから外部システムへデータを送信したりする処理を自動化することで、手作業で行っていた業務工数を削減できます。また、データの正確性向上と業務の効率化も目指せるでしょう。
独自ロジックの実装
SAPの標準機能では対応しきれない特定の業務要件に対応するために、独自のビジネスロジックを実装したアドオン開発が用いられます。
例として、特定の計算ロジックを追加したり業務フローを自動化するためのプログラムを組み込んだりすることで、手作業で行っていた複雑な計算や確認作業を自動化できるようになります。
自社の業務フローに適応した高度な独自ロジックを実装することで、人的ミスを防ぎつつ、業務の効率化と精度向上を図れるでしょう。
SAPアドオン開発のメリット
SAPの標準機能だけでは対応できない特定の要件を満たすアドオン開発は、業務の効率化を促進し企業の競争力を強化できる点が大きなメリットです。ここからは、SAPにおけるアドオン開発のメリットをご紹介していきます。
業務にあわせた開発ができる
アドオン開発は、SAPの標準機能では対応できない特定の業務要件に適応するために行われます。つまり、企業ごとの業務フローや独自の管理ルールをシステムに反映できる点メリットのひとつです。
また、アドオン開発であれば既存の業務プロセスを大きく変更せずに導入できるため、従業員の負担を軽減し、スムーズな運用を実現できるでしょう。
他社との差別化ができる
他社との差別化を図りたい企業にとって、アドオン開発による独自機能の実装は、高い競争力をもったビジネスを展開できるという点で大きなメリットとなります。
例として、顧客対応の迅速化を目的とした機能改善や高度な分析機能の追加することで、顧客満足度を向上させられるでしょう。
また、特定の業界や市場のニーズに特化した機能などをアドオン開発で実装することで、新たな市場への参入やシェア拡大を目指すことも可能です。
足りない機能の補足ができる
アドオン開発を活用することで、SAPの標準機能では対応しきれない機能を補完できるようになります。
自社に必要な形式のレポート機能や分析機能がSAPの標準機能に含まれていない場合、アドオン開発により独自の帳票作成機能を追加することで、業務データの可視化を実現できます。
また、現場のニーズに応じた入力チェック機能や自動計算機能を実装することで入力ミスを削減でき、業務スピードの向上も図れるでしょう。
SAPアドオン開発のデメリット
SAPのアドオン開発には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。ここからは、アドオン開発のデメリットをご紹介します。リスクや課題を事前に把握して適切な対策を講じましょう。
過度なアドオン開発はリスクになる
SAPのアドオン開発は便利なものの、過度に開発を行ってしまうと標準機能からの逸脱が進み、システムの複雑化を招く恐れがあります。
とくに、仕様変更が発生する業務プロセス向けのアドオンは、SAPのアップデートのたびに調整が必要となるため、メンテナンスコストが増大しやすくなります。
さらに、メンテナンスに不備があり標準機能との整合性が失われてしまうと、将来的なSAPのバージョンアップ時に影響を受ける可能性があるため、そうしたリスクも考慮する必要があります。
開発コストが増加する
アドオン開発には、要件定義や設計、実装、テスト、保守といった多くの工程が必要となるため、標準機能のみの設定変更と比較して開発コストが大幅に増加するといったデメリットがあります。
また、自社独自のロジックをアドオン開発で実装する場合、それに対応できるエンジニアの確保が必要となり、人件費や外部委託費用が発生する可能性があります。
さらに、アドオンの保守や改修が発生するたびに追加コストがかかることもあるため、長期的な運用費用も考慮する必要があります。
運用が複雑化する
SAPの標準機能にアドオンを追加でいくつも開発することにより、システム全体の構成が複雑化し、管理の負担が大きくなる可能性があります。
とくに、アドオンの動作が他の機能に影響を与える場合や、複数のアドオンが相互に依存する場合は、システムの安定性や保守性に注意しましょう。
また、SAP保守の担当者が交代した際に引き継ぎが不十分だと、アドオン運用の継続性が損なわれるリスクも高まります。
ベンダーに依存した運用に陥る
特定のベンダーが提供するアドオン開発に依存してしまうと、そのベンダーのサポートに制約され、運用の柔軟性が損なわれる可能性があります。
また、ベンダーの事業撤退やサポート終了などの事情により、SAPのアドオンの保守が困難になるリスクを考慮する必要があることも覚えておきましょう。
さらに、ベンダー独自の技術や仕様に依存しすぎると、他のベンダーへの移行が難しくなる点もデメリットとなります。
SAPアドオン開発のポイント
SAPのアドオン開発を成功させるためには事前に要件定義を行い、標準機能との適切なバランスを取ることが重要です。
無計画なアドオン開発は、システムの複雑化や運用コストの増大につながる可能性があるため、慎重に検討しましょう。それでは最後に、SAPのアドオン開発を円滑に進めるためのポイントを解説します。
アドオン開発を熟知したエンジニアを採用する
SAPのアドオン開発には、SAP固有のプログラミング言語やシステム構成に精通したエンジニアが不可欠です。
SAPのアドオン開発として知られるプログラミング言語「ABAP(Advanced Business Application Programming)」の知識に加え、SAPの標準機能との適切な連携を考慮した設計能力が求められます。
SAPシステムの保守性や拡張性を考慮した実装ができる、経験豊富なエンジニアを確保することが安定した運用につながります。
属人化を回避する運用が大切
SAPのアドオン開発の運用は特定のエンジニアに依存しやすく、業務が複雑になるほど属人化リスクが高まります。
属人化を回避するためには、アドオンの設計や実装に関する情報をドキュメントとして適切に整備し、ナレッジを組織内で共有することが重要です。担当エンジニアの退職や予期しないトラブルが発生した際に迅速に対応できるように、事前に対策しましょう。
ベンダー選定は慎重に行う
SAPのアドオン開発をアウトソーシングする場合、ベンダーの選定は非常に重要です。信頼できるベンダーを選ぶためには、過去の実績やSAPに精通した技術力、サポート体制の充実度などを慎重に確認しましょう。
とくに、アドオン開発の要件定義から保守運用まで一貫して対応できるベンダーを選定することで、長期的な運用の安定性を確保しやすくなります。
弊社は、設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、数多くのSAP運用支援実績があります。SAPのアドオン開発や機能改善などでお困りの方は、ぜひ弊社のERPソリューションサービスをご利用ください。
まとめ
SAPのアドオン開発は標準機能を拡張できるため、業務に最適化したシステムを構築できる点が大きな魅力です。帳票のカスタマイズや独自ロジックの実装など、多様な手法を活用することで、業務の効率化や競争力の強化につながります。
ただし、過度なアドオン開発はコストの増加や運用の複雑化を招くリスクがあるため、慎重に検討することが重要です。メリットとデメリットを理解したうえで、無理なくアドオン開発を進めていきましょう。