デジタル変革が加速する現代において、企業内外のシステム間でデータをスムーズに連携させることは業務効率化の要です。 そんな中、日本の企業で圧倒的なシェアを誇るファイル転送ミドルウェア「HULFT(ハルフト)」が注目を集めています。
本記事では、HULFTの基本機能から活用シーンまで、その魅力を解説します。
HULFTの基本情報:まずは概要を押さえよう
HULFTは日本発のファイル転送ミドルウェアとして、1993年の発売以来多くの企業で採用されています。単なるファイル転送ツールではなく、企業の業務要件に特化した包括的なデータ連携ソリューションです。
HULFTとは何か?
HULFTとは、元々はHarmonious Universal Link File Transferの略で、日本で最も使われている日本生まれのMFT(Managed File Transfer)ソフトウェアです。すでに大手企業を中心に10,000社以上に導入されており、海外でも展開を図っている実績を持つ製品です。
HULFTは企業のファイル連携、データ連携ツール(MFT:Managed File Transfer)として、お客様に安全、確実なシステム連携ソリューションを提供しています。企業の業務システム間で必要となる様々な処理を統合的に管理するソリューションとして位置づけられています。
なぜ今HULFTが注目されているのか?
近年、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、システム間のデータ連携の重要性が急速に高まっています。特に以下の要因でHULFTへの関心が集まっています。
- セキュリティ強化のニーズ:情報漏えいリスクが社会問題となる中、暗号化通信やアクセス制御など、企業レベルのセキュリティ要件に対応できるファイル転送基盤が求められています。
- クラウド対応の必要性:Amazon S3やAzure Blob Storageとの間での双方向のファイル転送が可能です。基幹系システムをオンプレミス、情報系システムをクラウドで運用しているハイブリッドクラウドなどの環境でも、オンプレミス、クラウドにHULFTを導入することにより、オンプレミスとクラウドのストレージ間でスムーズにファイル転送ができます。
HULFTでできること:主な機能と特徴
HULFTは従来のFTPとは異なり、企業の業務システムで必要とされる高度な機能を標準装備しています。セキュリティ、可視性、自動化、クラウド対応など、現代のIT環境に求められる要件を網羅した機能群が特徴です。
安全・確実なファイル転送
HULFTの最大の特徴は、企業の業務要件に対応した確実性の高いファイル転送機能です。
- 転送失敗時の自動リトライ:転送経路上の問題が発生した場合に限り、HULFTがユーザー定義に従って、自動的に再配信を実行します。よって、ユーザー定義の時間内にネットワーク障害が復旧された場合、ファイル転送は継続されます。
- エラー時の通知機能:転送状況や送受信状況の可視化、エラー発生時の自動通知により、運用担当者の負荷を大幅に軽減します。
- セキュアな通信機能:HULFTではファイル転送の中で暗号化・復号化を行うことができます。AESなど複数の暗号化方式やSSL/TLS通信に対応し、企業のセキュリティポリシーに合わせた設定が可能です。
異種システム間のデータ連携
異なるコード体系・異なるファイルシステムのプラットフォーム間で、データ連携を安全に確実にセキュアに行えます。Windows、Linux、Unix、メインフレームなど様々なプラットフォームを横断したデータ転送を実現します。
HULFTでは、JIS第一・第二水準以外の漢字を外字として扱い、ユーザーが任意で外字登録を行うことができるなど、日本企業特有の要件にも対応しています。
自動化とスケジューリング
ファイルトリガ機能を使用し、ファイルが作成されたタイミングで自動送信することが可能です。バッチ処理との連携や定時転送の自動化により、手作業による運用からの脱却を支援します。ジョブ管理・エラーログの集中管理機能も充実しており、運用の標準化と効率化を促進します。
クラウド・ハイブリッド環境にも対応
HULFTはオプション製品(HULFTクラウドストレージオプション)を導入することにより、クラウドサービス上のオブジェクトストレージに直接ファイル転送を行うことが可能です。HULFTの転送先として「Amazon S3」や「Azure Blob Storage」、「Google Cloud Storage」などがあります。
HULFTのメリットと導入効果
HULFTの導入により、企業は運用コストの削減、セキュリティの向上、業務効率化を同時に実現できます。手作業からの脱却と自動化により、システム部門の負荷軽減と業務品質の向上が期待できるソリューションです。
ヒューマンエラーの削減
手作業によるファイル転送から自動化された仕組みへの移行により、転送ミスや設定ミスなどのヒューマンエラーを大幅に削減できます。業務の属人性を解消し、スキルレベルに依存しない安定した運用を実現します。
セキュリティと信頼性の高さ
HULFTは200,000項目ものテストを行い、製品障害発生率を0.09%に抑えているので、非常に安定した運用が可能となります。さらに、転送データよりハッシュ値を作成し、転送データの検証を実施することで、ファイル転送元と受信データの整合性を検証し、データ欠落や改ざんを確認します。
システム部門の運用負担を軽減
HULFTを個々に管理するのではなく、HULFT Managerで一括管理できます。集配信処理に必要なシステム情報を管理し、各実行処理や要求受付などの履歴をご確認いただけます。複数拠点・複数プラットフォームでの運用を一元化することで、システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
導入後のスピードと安定性
新しい圧縮方式「Zstandard」を採用、今まで培った安定性はそのままに、転送データによっては従来のFTPと比較し8倍のスピードでファイルを転送することが可能です。
HULFTの活用シーンと事例紹介
実際の企業でのHULFT活用事例を見ることで、具体的な導入効果とメリットを理解できます。製造業から金融機関まで、幅広い業界での成功事例が、HULFTの汎用性と実用性を証明しています。
製造業における生産管理システム連携
製造業では、ERPシステムと生産管理システム間での定時データ転送にHULFTが活用されています。リアルタイムな生産計画の更新により、在庫最適化と生産効率向上を実現している企業が多数あります。
小売業でのPOS・ECデータ統合
流通・小売業界でも高まるセキュリティニーズに、HULFTでデータ転送というワンランク上の提案を実現しています。拠点ごとの売上データや在庫情報を自動収集し、本部での一元管理と迅速な経営判断を支援しています。
金融機関での帳票出力・データ配信
機密性の高い顧客情報や取引データの安全な外部連携を実現し、規制要件への対応も支援しています。AI・データ活用の全社浸透を目指すセブン銀行では、データ連携基盤・生成AI活用環境の実装にHULFT Squareが貢献するなど、金融機関でも広く活用されています。
他社ツールとの比較とHULFTの強み
ファイル転送の選択肢は数多くありますが、HULFTは単純な転送機能を超えた企業レベルの要件に対応できる点で差別化されています。コストと機能のバランス、日本企業特有のニーズへの対応力が評価のポイントです。
FTP/SFTPとの違い
FTPもHULFTと同じく、TCP/IPを使用した通信方式なので基本的に転送の信頼性は確保されていますが、転送したファイルの完全性、つまり送信側のファイルと受信側のファイルの整合性のチェックまではしません。
一方、HULFTならデータの完全性をチェックする機能が標準で備わっているので、チェック用にシステムを作る必要はありません。レコード件数、サイズでのチェックに加えて、ハッシュ値によるチェックもできます。
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)やiPaaS**(Integration Platform as a Service:統合プラットフォームサービス)**との棲み分け
HULFTは、EDI(電子データ交換)より柔軟で、iPaaS(統合プラットフォームサービス)よりもシンプルかつ確実な転送を提供します。特定のフォーマットに依存しない汎用性と、確実性を重視した設計により、幅広い業務要件に対応可能です。
HULFT独自の優位性
日本語・英語・中国語に対応。HULFTのメッセージやコメント、ファイル名は、OSのシステムロケールと同じ言語で運用が可能で、日本企業の業務要件に最適化されたUIと設定項目を提供しています。また、豊富な導入実績に基づく安心のサポート体制も大きな優位性です。
HULFTの導入を検討する際のポイント
HULFT導入を成功させるためには、ライセンス体系の理解、適切な導入計画、関連製品との組み合わせ検討が重要です。事前の準備と計画により、導入後の効果を最大化できます。
ライセンス形態と価格モデルの把握
HULFTはノードベースの課金体系を基本にした価格設定となっていますが、クラウド版とオンプレミス版では価格体系が異なるため、導入対象が決まり次第、メーカーやパートナーより詳細は見積を取得することをおすすめします。
導入にかかるステップと工数
導入前の準備から検証、本番導入まで、標準的な流れを理解し、適切なプロジェクト計画を立てることが成功の鍵となります。ファイル転送を行うマシン(HULFTはファイルの送信側、受信側の双方に必要)の特定など、事前準備も重要です。
HULFTの関連製品も検討
HULFT Squareは、バラバラに分散されたデータを活用するための革新的なプラットフォームサービスです。HULFT Integrate、DataCatalogなどの関連製品との組み合わせにより、より包括的なデータ連携基盤の構築も可能です。
まとめ|HULFTは”確実に繋ぐ”業務データ連携の最適解
HULFTは、セキュアで信頼性の高いデータ転送を実現する国産ミドルウェアとして、多くの企業で重要な業務基盤を支えています。
クラウド・オンプレミス・異種OS間の連携にも強く、手軽な設定、確実な転送、安心の運用体制で、導入後の業務効率化・自動化に大きく貢献します。特に、ファイル転送をMFT(Managed File Transfer)に替えることで、セキュリティリスクを軽減するのみならず、業務効率化や人材確保にかかるコスト削減も可能になります。
データ連携で悩む企業にとって、HULFTは単なるファイル転送ツールを超えた、「確実に繋ぐ」ための包括的なソリューションです。DX推進やクラウド移行を検討している企業は、ぜひHULFTの導入を検討されることをお勧めします。
より包括的なデータ連携をお求めなら「webMethods」もご検討ください
ファイル転送の課題解決に加えて、API統合やリアルタイムデータ連携をご検討の企業様には、当社が取り扱うwebMethodsもおすすめです。webMethodsは、ファイル転送を超えたAPI統合や業務プロセス自動化を可能にするiPaaS(統合プラットフォームサービス)であり、HULFTでは対応しきれない要件にも対応可能です。お客様の統合要件に応じて、最適なソリューションをご提案いたします。