近年、企業が扱うデータ量の増加やクラウドサービスの普及にともない、複数のシステム間でデータをリアルタイムに連携する重要性が高まっています。そこで注目されているのが「イベントブローカー」です。
イベントブローカーは、システム内で発生したイベントを受け取り、その情報を必要とするシステムやアプリケーションへ届ける役割を担います。本記事では、イベントブローカーの基本的な仕組みからメリット、主な活用例までわかりやすく解説します。
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イベントブローカーとは?
イベントブローカーは、発生したイベントを複数のシステムやアプリケーションへ連携する際に、重要な役割を担います。まずは、イベントブローカーの基本的な役割と、必要とされている背景について解説します。
イベントを仲介して届ける仕組み
イベントブローカーとは、システムやアプリケーションで発生した「イベント」を受け取り、必要な宛先へ配信する仕組みです。
ここでいうイベントとは「商品が購入された」「在庫数が変更された」「センサーが異常値を検知した」といった、システム内外で発生する状態変化のことを指します。
たとえばECサイトで注文が確定した場合、イベントブローカーがなければ、各システム同士を個別に接続してデータをやり取りする必要があります。
しかし、イベントブローカーが間に入ることで、その情報を在庫管理システムや配送システムなど、必要な宛先へ振り分けて配信できます。
イベントブローカーが必要とされる背景
近年、多くの企業でシステムのクラウド化やマイクロサービス化が進んでいます。従来のようにひとつの大きなシステムで全ての処理を完結させるのではなく、複数の小さなシステムを組み合わせて利用するケースが一般的です。
ただし、こうしたシステム同士を直接接続する構成では、連携先が増えれば増えるほど接続関係が複雑になり、改修や運用の負担も大きくなる傾向があります。
イベントブローカーを介することで、システム間の依存関係を抑えた柔軟な連携を実現しやすくなります。
イベントブローカーの仕組み
イベントブローカーでは、イベントを発行する側と受け取る側の間で情報を受け渡します。
ここでは、イベントが発行されてから配信されるまでの流れと、代表的なメッセージング方式であるPub/Sub(パブリッシュ/サブスクライブ)について解説します。
イベントを検知して配信するまでの流れ
イベントブローカーを利用した代表的な構成では、イベントを発行する側を「パブリッシャー」、イベントを受け取る側を「サブスクライバー」と呼びます。
はじめに、アプリケーションやデバイスなどが状態の変化を検知し、イベントとして発行します。発行されたイベントはイベントブローカーへ送られ、あらかじめ設定された各種条件にもとづいて、必要とするサブスクライバーへ配信されます。
たとえば「商品が購入された」というイベントを在庫管理・配送・会計など、複数のシステムへ連携することが可能です。
Pub/Sub(パブリッシュ/サブスクライブ)とは?
Pub/Sub(パブリッシュ/サブスクライブ)とは、「Publish(発行)」と「Subscribe(購読)」を組み合わせたメッセージング方式です。パブリッシャーがイベントを発行し、そのイベントを購読しているサブスクライバーが情報を受け取ります。
イベントブローカーは、このPub/Subによるイベントの受け渡しを仲介する役割をもっており、送信側と受信側が直接通信する必要がないため、それぞれのシステムを独立させたまま連携しやすい点が特徴です。
イベントブローカーとイベント駆動型アーキテクチャ(EDA)の関係
イベント駆動型アーキテクチャ(EDA)とは、システム内で発生したイベントをきっかけに、別の処理を実行する設計手法です。具体例としては注文の確定や在庫情報の更新、センサーによる異常検知など、さまざまなイベントを起点として処理を進めます。
イベントブローカーは、こうしたイベントを受け取り、必要とするシステムへ届ける役割を担います。各システムを直接接続せずにイベントを連携できるため、EDAにおける柔軟なシステム構成を支える重要な仕組みのひとつです。
また、EDAではイベントの送信側と受信側を直接結び付けないPub/Sub方式が用いられることも多く、イベントブローカーがそのイベント配信を仲介します。
近年、デジタル変革の波とともに、システムアーキテクチャのあり方が大きく変化しています。 とくに、リアルタイム性や柔軟な拡張性が求められる現代のITシーンにおいて、イベントをトリガーにしてシステムを動かす「イベント駆動アーキテクチャ(Even[…]
イベントブローカーを活用するメリット
イベントブローカーを活用することで、システム連携におけるリアルタイム性や柔軟性、拡張性を高めやすいといったメリットが挙げられます。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
リアルタイムでのデータ連携がしやすい
イベントブローカーを導入する最大のメリットのひとつが、リアルタイムでのデータ連携です。
一定の時間ごとにデータをまとめて処理する「バッチ処理」とは異なり、イベントブローカーは状態変化(イベント)をきっかけとして処理を実行しやすい点が特徴です。
ECサイトの在庫情報や注文状況、店舗やビルの設備異常など、最新情報を迅速に反映したい場面に適しています。
システムを疎結合化できる
「疎結合」とは、システム同士の依存関係が少ない状態を指します。イベントブローカーを介して連携することで、送信側と受信側を直接接続する必要がなくなります。
そのため、一方のシステムを変更した場合でも、ほかのシステムへの影響を抑えやすくなります。複数のシステムを運用する環境では、保守性を高められる点もメリットのひとつです。
システムの追加や変更に対応しやすい
システム同士を個別に接続している場合、新たなシステムを追加するたびに連携処理の改修が必要になることがあります。
イベントブローカーを導入していれば、新しいシステムを追加する際に既存のシステムに手を加えることなく、必要なイベントを購読する設定を行うだけで連携が可能です。将来的な拡張性を考えると、大きなメリットといえるでしょう。
イベントブローカーの主な活用例
イベントブローカーは、リアルタイム性が求められるシステムや、多数のアプリケーション・デバイスが連携する環境などで活用されています。ここでは、イベントブローカーの代表的な活用例を3つご紹介します。
複数システム間のデータ連携
イベントブローカーの代表的な活用例が、複数の業務システム間でのデータ連携です。
たとえば、受注管理・在庫管理・顧客管理・会計など、社内に複数のシステムが存在する企業では、それぞれのシステム間でデータを共有する必要があります。
イベントブローカーを導入すれば「受注が発生した」というイベントを起点に、在庫の引き当てや請求書の発行といった後続処理を自動で連携できます。
イベントブローカーを活用することで、個別にシステム間連携を構築するよりも管理がシンプルになり、運用負荷の軽減にもつながります。
IoT・製造現場のデータ連携
IoTデバイスや製造設備から発生する大量のデータを処理する場面でも、イベントブローカーは力を発揮します。
イベントブローカーの活用例として、工場のセンサーが温度異常を検知した場合、そのイベントを即座に監視システムやアラート通知へ配信できます。
IoTの領域では、数千〜数万のデバイスから同時にデータが発生するケースも珍しくありません。イベントブローカーは大量のイベントを効率的に処理し、必要な宛先へ確実に届ける処理基盤として機能します。
マイクロサービス間の連携
マイクロサービスアーキテクチャでは、個々の機能を独立したサービスとして構築します。これらのサービス同士がデータをやり取りする際に、イベントブローカーが活用できます。
多数のサービス間を直接接続すると、依存関係が複雑になる可能性があります。イベントブローカーを介してイベントを受け渡すことで、それぞれの独立性を保ちながら連携しやすくなります。
イベントブローカーは、サービスの追加や変更が頻繁に発生するシステムとも相性のよい仕組みです。
イベントブローカーと他の仕組みとの違い
システム連携には、イベントブローカー以外にもAPIやメッセージキューなど、さまざまな仕組みがあります。ここでは、それぞれの特徴を踏まえながら、イベントブローカーとの違いを解説します。
APIとの違い
「API」は、あるシステムが別のシステムに対してリクエストを送り、レスポンスを受け取る通信方式です。送り手が受け手を指定して直接呼び出す「1対1」のやり取りが基本となります。
一方で「イベントブローカー」は、送り手がイベントを発行するだけで、受け手を指定しません。イベントブローカーが適切なサブスクライバーへ配信するため「1対多」のデータ配信が実現できます。
主な違いをまとめると次のとおりです。
- API:送り手が受け手を指定する同期型の通信。1対1のやり取りが特徴。
- イベントブローカー:送り手が受け手を意識しない非同期型の通信。1対多のやり取りが特徴。
どちらが優れているというものではなく、用途に応じて使い分けることが重要です。
メッセージキューとの違い
メッセージキューは、送り手から受け手へメッセージを順番に届ける仕組みです。キュー(待ち行列)にメッセージが蓄積され、受け手が1件ずつ取り出して処理します。基本的には「1対1」の通信を前提としており、ひとつのメッセージはひとつの受け手だけが処理します。
イベントブローカーもメッセージを仲介するという点では共通していますが、Pub/Subモデルにより「1対多」の配信が可能な点が異なります。ひとつのイベントを複数のサブスクライバーが同時に受け取れるため、同じデータを複数のシステムで活用したい場合に適しています。
なお、メッセージキューとイベントブローカーの両方の機能を備えた製品もあり、明確な境界が曖昧になるケースもあります。
イベントブローカーなら「Solace」
イベントブローカーを活用したシステム連携を実現する製品のひとつに、Solace社が提供する「Solace Event Broker」があります。
ここでは、Solace Event Brokerの特徴と、複数のイベントブローカーを接続する「イベントメッシュ」についてご紹介します。
当社は、設立以来40年にわたって培ってきたITの知見をもとに「Solace Event Broker」の販売から導入支援まで一貫してご提供しています。リアルタイム性のあるデータ活用でお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。
Solace Event Brokerとは?
「Solace Event Broker」は、Solace社が提供する製品です。アプリケーションやサービス、デバイス間でイベントをリアルタイムに配信するイベントブローカーです。
クラウド、オンプレミス、エッジなど、異なる環境をまたいだデータ連携に対応しています。また、イベントのルーティングや監視など、企業システムでイベントを安定して流通させるための機能を備えています。
複数のイベントブローカーをつなぐ「イベントメッシュ」
「イベントメッシュ」とは、複数のイベントブローカーをネットワーク状に接続し、環境や拠点をまたいでイベントをシームレスに流通させる仕組みです。
たとえば、本社のデータセンターで発生したイベントを、クラウド上の分析基盤や海外拠点のシステムへリアルタイムに届けるといった運用が可能です。
グローバルに展開する企業や、ハイブリッドクラウド環境を採用する企業にとって、Solaceのイベントメッシュアーキテクチャは有効な選択肢となるでしょう。
まとめ
イベントブローカーは、システムやアプリケーションで発生したイベントを受け取り、必要とするシステムへ配信する役割を担います。
イベントの送信側と受信側を直接接続する必要がないため、リアルタイムなデータ連携やシステムの疎結合化、将来的な拡張への対応に有効です。
IoTやマイクロサービスの普及にともない、イベント駆動型アーキテクチャの重要性はますます高まっています。その中核を担うイベントブローカーの導入を検討する際は、自社の要件に合った製品選定とアーキテクチャ設計が重要です。
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