CRMを導入し、顧客情報や商談履歴を管理する企業は年々増加しています。本記事では、CRM連携とは何か、SFAとの違い、CRMと基幹システムを連携しないことで起こる課題、連携によって得られるメリット、代表的な連携方式を解説します。CRMを顧客データのハブとして活用し、複数システムを横断してデータを統合するための設計ポイントも紹介します。
CRM連携とは?注目される背景と役割
CRM連携とは、CRMに蓄積された顧客情報や商談情報を、ERP、販売管理、在庫管理、請求管理、CTI、MA、CMSなどの他システムと連携させる仕組みを指します。CRM単体でも顧客管理や営業活動の可視化は可能ですが、実際の業務では、顧客に関する情報がCRMだけで完結するわけではありません。
CRMとは
CRMとは、Customer Relationship Managementの略で、「顧客関係管理」と呼ばれます。顧客との関係性を管理し、マーケティング、カスタマーサポートの質を高めるための考え方、またはそのためのシステムを指します。
CRMで管理される主な情報には、以下のようなものがあります。
- 顧客情報:会社名、担当者名、部署、連絡先、所在地
- 購買履歴:過去の購入商品、契約内容、更新時期
- 問い合わせ履歴:問い合わせ内容、対応状況、クレーム履歴
代表的なCRMシステムは、Salesforce、Microsoft Dynamics 365、HubSpot、kintone、Zoho CRMなどです。
上記のような代表的なCRMシステムは、営業担当者の活動や商談の進捗を管理する仕組みである「営業支援システム」……SFA(Sales Force Automation)も兼ね備えていることが多々あります。商談プロセスの可視化や、売上予測の精度向上を目的としたシステムであり、営業現場で日常的に利用されます。
SFAで管理される主な情報には、以下のようなものがあります。
- 商談情報:商談ステータス、見込み金額、受注予定日、提案内容
- 活動履歴:訪問履歴、電話履歴、メール履歴、打ち合わせメモ
- パイプライン:受注確度、商談ステージ、フォーキャスト
厳密にはCRMとSFAは別の概念ですが、日本国内で広く使われているSalesforceやHubSpotといった製品は、両方の機能を併せ持つ統合型システムです。そのため、実務上は両者を厳密に切り分けず運用することが一般的です。
SaaS拡大によるシステム連携ニーズの高まり
近年、企業ではSaaSやクラウドサービスの利用が拡大しています。営業部門ではCRM・SFA、マーケティング部門ではMA、バックオフィスでは会計システムや人事システム、サポート部門では問い合わせ管理ツールなど、業務ごとにさまざまなシステムが使われています。
システムが増えると、データの受け渡しの必要性が高まります。特にCRMは顧客情報の中心に位置するため、多くのシステムと連携する必要があります。しかし、CRMを導入しただけでは、基幹システム側の受注、売上、在庫、請求データと自動的に連携されるわけではありません。
CRMに顧客情報が登録されていても、ERPや販売管理システムに同じ情報を再入力している場合、業務効率化の効果は限定的にとどまります。CRM連携が求められるのは、CRMを単なる営業管理ツールではなく、顧客データを中心に業務全体をつなぐためです。
SCM・請求管理・電子契約など接続先の多様化
CRMの連携先は、ERPや販売管理システムだけではありません。顧客接点や業務プロセスが多様化する中で、連携すべきシステムも広がっています。
例えば、以下のようなものがあります。
- 物流や在庫を管理するSCM(Supply Chain Management)
- 契約締結を行う電子契約サービス
- 電話対応を効率化するCTI(Computer Telephony Integration)
- マーケティング施策を管理するMA(Marketing Automation)
- Webサイトやコンテンツを管理するCMS(Contents Management System)
CRM・SFAは顧客情報や商談の進捗を管理する仕組みであり、SCMは調達から製造、物流に至るまでのサプライチェーン全体を一元管理する仕組みです。これらを連携させることで、営業の受注予測に基づいた精度の高い生産計画や在庫計画を立案できます。また、出荷や配送のステータスをCRM上で可視化することで、顧客からの問い合わせにも迅速に対応でき、業務効率化と顧客満足度向上の両立が可能になります。
また、CRM・SFAとCMS、そしてMAを連携すれば、Webサイト(CMS)からの 問い合わせや資料請求情報がMAによって処理され、 CRMに自動登録され ます。さらにCRM内の顧客データを活用し、訪問者 属性に応じたコンテンツの出し分けを、MAで行うことも可能です。
このように、CRM連携の接続先はさまざまです。だからこそ、接続先が増えるたびに個別対応するのではなく、連携全体をどのように設計し、管理するかが重要になります。
CRM・SFAと基幹システムの連携不足が引き起こす業務課題
CRM・SFAと基幹システムは、扱うデータや役割が異なります。CRM・SFAは顧客接点や商談プロセスを管理するシステムです。一方でERPや販売管理システムは受注、売上、在庫、請求、会計など企業活動の実績を管理するシステムです。
両者の主な違いは、以下の通りです。
| 項目 | CRM | ERP・基幹システム |
|---|---|---|
| 主な目的 | 顧客関係・営業活動の管理 | 受注・売上・在庫・会計など業務実績の管理 |
| 主な利用部門 | 営業、マーケティング、サポート | 経理、物流、生産、販売管理、経営企画 |
| 管理する情報 | 顧客情報、商談、活動履歴、問い合わせ履歴 | 受注、請求、在庫、売上、原価、会計 |
| データの性質 | 見込み・活動・顧客接点の情報 | 確定情報・業務処理・実績情報 |
CRM・SFAと基幹システムの役割は異なりますが、業務上は密接に関係しています。両者が連携していないと、現場ではさまざまな非効率が発生します。
二重入力と顧客データの不整合
CRM・SFAと基幹システムが連携していない場合、同じ情報を複数のシステムに入力しなければなりません。
例えば、営業担当がCRM・SFAに顧客情報や商談情報を登録した後、受注が確定すると、バックオフィス担当者が販売管理システムやERPに同じ内容を再入力しなければならないケースです。このとき、会社名の表記ゆれ、住所の入力ミス、見積金額や契約条件の転記ミスが起こる可能性があります。
同じ顧客がCRM・SFAでは「株式会社ABC」、販売管理システムでは「ABC(株)」、請求管理システムでは「ABC株式会社」として登録されている場合、データを突合するだけでも工数を要します。
こうした不整合は、単なる入力ミスにとどまりません。請求金額の誤り、納品先の間違い、契約条件の確認漏れなど、顧客対応や売上管理に直接影響するリスクがあります。
部門間の情報断絶による対応遅延
CRMと基幹システムが分断されていると、部門間の問い合わせが増えます。
例えば、営業担当が顧客から「前回注文した商品の納期はいつか」と聞かれても、在庫管理システムや物流システムを確認できなければ、物流部門に問い合わせる必要があります。サポート担当が「請求済みかどうか」を確認したい場合も、経理部門へ連絡しなければなりません。
このような情報断絶は、顧客対応のスピードを低下させます。顧客から見れば、企業の内部でどのシステムが分かれているかは関係ありません。問い合わせにすぐ答えられなければ、対応品質への不満につながります。
CRM上で購買履歴、請求状況、在庫状況、問い合わせ履歴を確認できれば、部門をまたいだ確認作業を減らし、スムーズな顧客対応が可能になります。
経営データの集約に時間がかかる
経営判断に必要なデータは、CRMだけでなく、SFAやERPなど様々な面から集める必要があります。SFA には商談パイプラインや受注見込みが蓄積され、ERPには実際の売上や請求、在庫、原価などの実績データが蓄積されます。両者が連携していれば、将来の売上見込みと現在の実績を組み合わせた経営分析が可能です。
しかし連携していない場合、営業部門がSFA から商談データを出力し、経理部門がERPから売上実績を出力し、それらをExcelで突合してレポートを作成します。この作業に数日かかると、経営会議で扱う数字がすでに古くなっている可能性があります。
また、部門ごとに集計ロジックが異なると、売上見込みや実績の数字にズレが生じ、意思決定の精度が低下するリスクもあります。CRMをはじめとしたSFAやERPの連携は、現場の入力作業を減らすだけでなく、経営判断に必要なデータをスムーズに可視化するためにも重要です。
CRMと基幹システムを連携させるメリット
CRMと基幹システムを連携させると、営業、バックオフィス、経営層のそれぞれにメリットが生まれます。重要なのは、単にデータを移すことではなく、部門をまたいで同じ情報を正しく使える状態をつくることです。
データ品質の向上と入力工数の削減
CRM連携の大きなメリットは、二重入力を減らし、データ品質を高められることです。例えば、CRM・SFAに登録された顧客情報や受注情報を販売管理システムへ自動連携すれば、手作業による再入力が不要になります。
逆に、基幹システム側で確定した請求情報や入金状況をCRM・SFAに連携すれば、営業担当は最新情報を確認できます。手作業の入力が減れば、入力工数だけでなく、転記ミスや表記ゆれも減らせるでしょう。結果として、データの信頼性が高まり、営業活動やレポーティング業務に活用しやすくなります。
部門横断での顧客情報共有による対応スピードの向上
CRMと基幹システムが連携していると、営業、サポート、経理、物流などの部門が同じ顧客情報を参照できます。
営業担当は、CRM上で過去の購買履歴や請求状況を確認したうえで提案できます。サポート担当は、問い合わせ内容だけでなく契約状況や納品履歴を把握したうえで対応可能です。経理担当も、顧客情報や契約条件を確認しながら請求処理を進められます。
このように、CRMを始めとした各システムを連携し顧客の全体像を部門横断で共有できることは、顧客対応のスピードと品質を高めるうえで重要です。特にBtoBビジネスでは、顧客との関係性が長期にわたるため、商談、契約、納品、請求、サポートまでの情報をつなげて把握する必要があります。
売上予測と実績の統合による経営可視化
CRMと統合されているケースが多いSFAには、商談金額、受注確度、受注予定日など、将来の売上に関する情報が蓄積されます。一方、ERPや販売管理システムには、実際の受注、売上、請求、入金などの実績情報が蓄積されます。これらを連携させれば、売上予測と実績を統合したダッシュボードの構築が可能です。
例えば、SFAのパイプライン情報と、基幹システム上の売上実績を組み合わせれば、次のような分析が可能です。
- 今月の売上見込みと実績の差分
- 商談ステージ別の受注確度
- 顧客別、商品別、地域別の売上推移
- 在庫状況を踏まえた受注可能性
- 請求や入金状況を含めた収益管理
経営層は、過去の実績だけでなく、将来の見込みを含めた意思決定ができるようになります。CRM・SFA連携は、営業現場の効率化だけでなく、データドリブンな経営管理にもつながります。
CRM連携の代表的な3つの方式
CRM連携には、いくつかの方式があります。代表的なのは、CSVファイルによる連携、API個別開発による連携、iPaaSを活用した連携です。どの方式が適しているかは、連携するデータ量、リアルタイム性の要否、接続先の数、運用体制、将来の拡張性によって異なります。
| 連携方式 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| CSVファイル連携 | 導入しやすく、初期コストを抑えやすい | 手作業が残りやすく、リアルタイム性に欠ける |
| API個別開発 | リアルタイム連携や柔軟な要件に対応しやすい | 接続先が増えるほど開発・保守負荷が高まる |
| iPaaS連携 | 複数システムを一元管理しやすい | 初期設計と運用ルールの整備が必要 |
以下、それぞれの方式を解説します。
CSVファイルによる定期バッチ連携
CSVファイル連携は、CRMから顧客情報や商談情報をCSV形式で出力し、基幹システムへ取り込む方式です。逆に、基幹システムから売上や請求データを出力し、CRMへ取り込むこともあります。
この方式の利点は、導入ハードルが低い点です。既存システムにAPIが用意されていなくても、CSVのエクスポート・インポート機能があれば連携を始められます。初期費用を抑えたい場合や、月次・週次など低頻度のデータ連携であれば有効です。
一方で、リアルタイム性には限界があります。ファイルの出力、加工、取り込みに手作業が残ると、作業漏れや取り込みミスが発生する可能性もあります。日常的に営業活動や顧客対応で利用するデータを扱う場合、CSV連携だけでは対応スピードやデータ鮮度に課題が残るため注意が必要です。
API個別開発によるリアルタイム連携
API個別開発は、CRMと基幹システムそれぞれのAPIを利用して、システム同士を直接接続する方式です。
この方式のメリットは、リアルタイム性と柔軟性です。例えば、CRMで顧客情報が更新されたタイミングで、販売管理システムに受注データを自動登録できます。基幹システムで請求情報が更新されたら、CRMにも即時反映することも可能です。
API個別開発は、要件に応じた細かな制御ができるため、重要度の高い連携や独自業務に対応しやすい方式といえます。
ただし、接続先が増えるほど、開発・テスト・保守の負荷が大きくなります。CRMとERP、CRMとCTI、CRMとCMS、CRMとMA、CRMと電子契約サービスなどを個別に接続していくと、連携の構造が複雑になります。
また、API仕様の変更や認証方式の変更があった場合、それぞれの連携プログラムを修正しなければなりません。エンジニアリソースへの依存度が高くなり、運用の属人化につながる可能性もあります。
iPaaSを活用したデータ連携の一元管理
iPaaSは、複数のシステムやクラウドサービスを連携するための統合基盤です。CRM、SFA、ERP、販売管理、在庫管理、CTI、CMS、MA、電子契約サービスなどを、ひとつの基盤上で連携できます。近年は、ノーコードやローコードで連携フローを設定できるツールも増えており、個別開発に比べて運用しやすい点が特徴です。
CRM連携では、接続先が増えるほど一元管理の重要性が高まります。個別API開発で対応していると、連携ごとに仕様や運用方法がばらつきますが、iPaaSを使えば、複数システムを横断したデータ連携を標準化しやすくなります。
データやシステム連携は、スモールスタートで始めることが推奨されます。考え方のポイントや知っておきたい点について、下記の資料でご紹介しています。
▼そのSaaS連携、“点”でつなぐだけで大丈夫?散らばるシステムを『組織の資産』に変える最初の一手
CRM連携の設計で押さえるべきポイント
CRM連携を成功させるには、どのツールを使うかだけでなく、どのデータを、どの方向に、どの頻度で、どのルールに基づいて同期するかを事前に整理することが重要です。設計が曖昧なまま連携を進めると、データの重複、更新の競合、項目の抜け漏れ、運用担当者の混乱が発生します。以下では、CRM連携の設計で特に重要なポイントを解説します。
データの項目と連携の方向・頻度の定義
CRM連携の設計において、まず整理すべきは、連携するデータ項目です。例えば、顧客情報、担当者情報、商談情報、受注情報、請求情報、在庫情報、問い合わせ履歴など、CRMやSFAで管理している情報のうち、どの項目を連携対象にするのかを決めます。
次に、連携の方向を定義します。
| 連携方向 | 例 |
|---|---|
| CRM・SFAから基幹システムへ | 顧客情報、商談情報、受注予定情報を連携 |
| 基幹システムからCRM・SFAへ | 売上実績、請求状況、在庫情報を連携 |
| 双方向連携 | 顧客情報や担当者情報を双方で更新 |
さらに、連携頻度も重要です。リアルタイムで反映すべきデータもあれば、日次や週次のバッチ処理で十分なデータもあります。定義が曖昧なまま進めると、後から「この項目も必要だった」「更新タイミングが遅い」「どちらのシステムの情報を優先すべきか分からない」といった問題が発生します。
データの重複や矛盾を未然に防ぐ、CRMを主軸としたマスター管理設計
CRM連携では、どのシステムのデータを「正」とするかを決めるのが重要です。特に顧客情報は複数システムで使われるため、マスター管理の設計が不十分だと、重複や矛盾が発生します。
顧客に関する基本情報は、CRMを主軸とし、基幹システムや周辺SaaSにはCRMから配信・同期する設計がおすすめです。CRMを顧客データのハブとして位置づければ、各システムがばらばらに顧客情報を持つ状態を避けられます。
CRMをハブとした設計は、顧客情報の一元管理だけでなく、将来的な拡張にも有効です。SFA、CTI、CMS、MA、電子契約、BIなどの連携先が増えても、統合基盤上でルールを管理しておけば、個別対応による複雑化を抑えられます。
CRM連携で重要なのは、目の前のシステム同士をつなぐことだけではありません。顧客データをどこで管理し、どのシステムにどのタイミングで配信し、どのように整合性を保つかを設計する必要があります。
まとめ
CRMと基幹システムを連携させれば、二重入力の削減、顧客データの品質向上、部門間の情報共有、顧客対応の迅速化が期待できます。
一方で、CSV連携やAPIの個別開発だけで対応していると、接続先が増えるほど管理が複雑になります。CRM、SFA、ERP、CTI、CMS、MA、SCMなど連携先が広がるほど、データ変換や認証、エラー監視、更新ルールを一元的に管理する仕組みが必要です。そのため、CRM連携は単発のシステム接続ではなく、複数システムを横断してデータ整合性を保てる統合基盤で進める必要があります。
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