システム開発を行うにあたり、「汎用系」と「オープン系」という言葉を耳にすることがあります。この2つの言葉は同じような意味合いにとらえることもできますが、蓋を開けてみると全く別の意味を持っています。
そのためこの記事では、汎用系とオープン系の違いや特徴についてわかりやすく解説し、汎用系がなくなる、なくならないと言われている理由と未来についても考察します。システム開発のスキルを身に付けるときに学ぶ、技術の方向性に関わる内容なので、これを機にしっかりと覚えておきましょう。
汎用系とオープン系の違い
汎用系とオープン系は全く別の意味合いを持っています。プログラムを動かすにはそのための機器が必要になりますが、この機器に違いがあるのです。例えば、Nintendo SwitchのソフトをPS5で開けないようなものなのですが、汎用系とオープン系にはそれ以上の差があります。それでは、一つずつご紹介していきます。
汎用系は汎用機で動く
まずご紹介するのは汎用系ですが、汎用系が動作する機器は汎用機です。
汎用機とは私たちが使い慣れているパソコンとは異なり、大規模なデータ処理に適した高性能なコンピュータのことを言います。特に、銀行や保険会社などの金融系でよく使われています。この汎用機で多用される言語が「COBOL」なのですが、主に金融分野の大量データ処理に特化した言語として開発されました。特化して言語ではありますが限定されているわけではなく、今でも幅広いプラットフォームで利用されています。
汎用機が出てくる前は、専用機という特定の処理に特化したコンピュータが主流でした。しかし、作業内容別に機器を用意するのはコストも手間もかかるということで、汎用機が生まれたのです。汎用機は現在も技術進化を遂げており、業界の根幹を支えているのです。
オープン系はパソコンで動く
オープン系は皆さんも馴染み深いパソコンで動きます。
システム開発を学ぶにあたって、入門として出てくるプログラム言語などはオープン系となります。有名な言語だとJavaやC言語、昨今AI関連で人気なPythonなどがあります。
専用機や汎用機があると知ると、パソコンの正式名称である「パーソナルコンピュータ(個人で使用するコンピュータ)」という名前もしっくり来るのではないでしょうか。
もちろん、業種に特化したプログラムもオープン系の中にはあり混乱するかもしれませんが、動く機器がパソコンなのでオープン系となります。
Web上で動くプログラムはオープン系?
汎用系とオープン系を知ると、「では、Web上で動くプログラムはオープン系ではないか?」という疑問が生まれます。近年、ECサイトなどのWeb上で動くプログラムが増加しており、これらを分けてWeb系と呼ぶ方も出てきました。
結論から言えば、Web系はオープン系の派生であると言えます。別物にして考える方もいらっしゃいますが、大きく分けるとオープン系に含まれるというほうが正しいのです。
汎用系とオープン系のメリット、デメリット
特定の機器でしか動かない汎用系とどこにでもあるパソコンで動くオープン系では、そのメリットとデメリットも分かれます。双方優れている点が異なりますので、一概にどちらが優れているとは言えません。用途によって使い分けているというのが、汎用系とオープン系なのです。
コスト面
まずは導入や運用に最も重要なコスト面から見ていきます。
汎用系はあまり流通していない機器を導入する必要があり、一方オープン系は一般的に普及しているパソコンが必要となります。普及していない機器は基本的に高額となり、汎用系の導入は高額となります。逆に、オープン系は場合によっては中古パソコンでも対応できることもあるほど導入しやすいので、導入コストは安くなります。
また、運用についても汎用系は圧倒的に技術者が少なく、依頼も高額となる場合が多いです。オープン系の運用コストも、稀に流通の少ないソフトを使用している場合は高額になりますが、それでも汎用系のほうが高額となります。
そのため、コスト面で考えた際には汎用系は高額なのでデメリットとなり、オープン系は安価に済むのでメリットとなります。
セキュリティ面
では次に、見ていくのはセキュリティ面です。セキュリティを強固なものにしていくことはどの業界にも共通して言えることなので、とても重要度が高い項目です。
セキュリティに関して言えば、汎用系がセキュリティリスクが低く、オープン系のセキュリティリスクが高くなります。
もちろん汎用系においても攻撃を受ける可能性はありますが、その数が圧倒的に少ないのです。理由は、汎用系で使用している汎用機はあまり普及していない機器であるため、攻撃者が研究することが困難であるというのが最も大きいです。
逆にオープン系であれば研究する素材が簡単に手に入るので、攻撃手法を考えやすい状態になります。また、1つの攻撃方法を考案した際に、その対象となる機器がオープン系のほうが圧倒的に多いため、攻撃者もオープン系を狙いやすいのです。
パソコンだけ見ても、世界的に普及しているWindowsのほうがMacよりも攻撃の種類が多い理由にも共通しているという点では同様のことが言えます。
そのため、セキュリティリスクの低い汎用機はセキュリティ面でメリットとなります。
運用面
システムをリリースしてしまえば終わりということはないので、メンテナンスなどの運用面でも比較していきます。
こちらに関しては、手間としては汎用系もオープン系も差はありません。
機械的なトラブルに関しても、汎用系はそもそも機器がなくて代用品がすぐ手に入りにくいというリスクもありますが、逆にオープン系は使用する企業が多いため品薄状態が続いて手に入らないこともあります。
ただし重要となってくるのが、技術者の確保です。現在はオープン系システムをメンテナンスできる技術者が足りない企業が増えていますが、それ以上に汎用系の技術者は少ないのです。そのため、汎用系を導入したは良いものの、技術者不足により運用が厳しくなる可能性もあります。もちろん業者に頼む方法もありますが、業者が抱えている企業が多く対応しきれない可能性もあります。
とは言え、オープン系でも信頼できる技術者が見つからなければ同様の現象が起こってしまうため、運用面に関してはドローと言えるでしょう。
汎用系はなくなる?なくならない?未来について考える
汎用系はなくなる、と言われて随分歳月が経過している気がしますが、実際のところ、なくなる可能性は高いのでしょうか?昨今のテクノロジーの進化を踏まえて、未来について考えてみましょう。
汎用系がなくなると言われる理由
汎用系がなくなると言われる主な理由は、テクノロジーの進化や市場の動向にあります。
現代のテクノロジーは急速に進化しており、クラウドやビッグデータ、AIなどの新しい技術が進出してきています。このような新しい技術は柔軟性やコスト面で優れていることが多く、従来の汎用系システムよりも企業にとって魅力的な選択肢となっています。
特に日本企業では、ブラックボックス化した独自システムと汎用系技術者の高齢化が課題となり、新世代による継承が困難になっている問題も起きています。このことから、できるだけ早いうちに汎用系からオープン系にシステムを載せ替えざるを得ないと判断する企業も増えています。
汎用系がなくならないと言われる理由
汎用系がなくならないと言われる理由は、その独特の強みと適応能力にあります。特に金融業界などでは、汎用系の高い処理能力と信頼性が依然として代えがたい存在なのです。
また、汎用系システムは長年にわたって蓄積されたデータやプロセスがあり、新しい技術へ移行することは考えられないほど複雑でコストがかかります。そのため、汎用系システムを維持せざるを得ない企業も多いのです。
余談ですが、一部では新世代の技術者によるCOBOLなどの古い言語への関心が再燃しており、これが汎用系の存続と進化に寄与しているようです。80年代ファッションがリバイバルしているような、時代は繰り返す、ということでしょうか。
汎用系の未来
汎用系の未来について考えたとき、まず頭に浮かぶのはこのシステムは今後も当面なくならないだろうな、ということです。金融業界や保険業界のように、大量のデータを扱い、高い信頼性が求められる場所では、汎用系システムは今もなおキープレーヤーです。オープン系では対処しきれない、この「古き良きもの」は、なかなか新しい技術には置き換えられないのです。
しかし、クラウドやAIなどの新しい技術とどう共存していくかが、これからの大きな課題となってきます。上記でもお伝えした通り、新世代の技術者たちがCOBOLのような昔の言語に興味を持ち始めていることで、古いこのシステムに新しい風を吹き込むかもしれません。
結局のところ、汎用系はすぐにはまだまだ消えることはなさそうです。一部の業界では変わらずに重要な役割を果たし続けていますし、新しい技術と組み合わさりながら、少しずつ進化を遂げていくのではないかと思います。古いものと新しいものの共存、それが汎用系の未来の姿かもしれません。
まとめ
今回は、汎用系とオープン系の違いについて丁寧に解説してきました。未来についてはあくまで予想にはなりますが、まだまだすぐにはなくならないと思っていただければと思います。
- 汎用系は汎用機で動く
- 大規模なデータ処理に適した高性能なコンピュータでセキュリティが強固
- オープン系はパソコンで動く
- システム開発の入門として出てくるJavaやC言語、Pythonなどのプログラム言語
- 汎用系システムは、すぐにはなくならい