現代のデジタル社会では、データの処理速度が企業の競争力を左右する重要な要素となっています。とくに、即座にデータを処理して結果を返す「リアルタイム処理」は、多くの業界で必要不可欠なIT技術です。
本記事では、リアルタイム処理の基本やバッチ処理との違い、具体的な利用シーンまでわかりやすく解説します。リアルタイム処理の主なメリットやデメリットも解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
リアルタイム処理とは?
「リアルタイム処理」とは、データが発生した直後にそのデータを分析・処理し、すぐに結果を反映できる仕組みのことを指します。まずは、リアルタイム処理の基本を確認していきましょう。
リアルタイム処理の基本
リアルタイム処理は、データが発生した瞬間に処理を開始し、即時に結果を返す仕組みです。リアルタイム処理はバッチ処理のようにデータの蓄積を行わず、連続的にデータを受け取り処理し、出力することが特徴です。
リアルタイム処理ではデータの発生をその都度確認するため、新しいデータが届くとすぐに処理を実行します。
リアルタイム処理の重要性
現代のビジネス環境において、提供するサービスの質と企業の信頼を高める手段として、リアルタイム処理の重要性は年々高まっています。
例として、リアルタイム処理がとくに重要視されるケースをご紹介します。
- 「防災システム」など緊急性を要する処理
- 「金融取引」など遅延が大きな損失につながる処理
- 「クレジット決済」や「オンラインゲーム」など遅延が機会ロスに直結する処理
即時性が求められるビジネスの増加やユーザー体験の向上が重要視されており、そういったニーズに対応するためにもリアルタイム処理は欠かせません。
リアルタイム処理の方法
リアルタイム処理の基本と重要性を押さえたうえで、ここからはリアルタイム処理の方法を見ていきましょう。「ハードリアルタイム処理」と「ソフトリアルタイム処理」の2つをそれぞれ解説します。
ハードリアルタイム処理
「ハードリアルタイム処理」は、あらかじめ設定された時間内に必ず処理を実行する必要があります。そのため、一瞬の遅延が重大な事故や故障につながるようなシステムにおいて、ハードリアルタイム処理が採用されています。
例として、自動車の制御システムや医療機器、航空機の制御などがハードリアルタイム処理の典型的な例としてあげられます。
ハードリアルタイム処理を実装する際は、処理時間だけでなく通信やハードウェアの稼働状況まで考慮して設計する必要があります。
ソフトリアルタイム処理
「ソフトリアルタイム処理」は、ハードリアルタイム処理と比べて処理の遅延にある程度の許容度がある処理方法です。
例として、動画ストリーミングサービスや音声通話アプリケーション、オンラインゲームなどにおいてソフトリアルタイム処理が採用されています。
多少の遅延は許容されますが、あまりにも頻繁に遅延が発生するとユーザー体験が低下するため、できるだけリアルタイムに近い形での処理が求められます。
リアルタイム処理とバッチ処理の違い
システムにおけるデータの処理には、リアルタイム処理の他に「バッチ処理」という方法があります。
処理の特徴や活用例がそれぞれ異なるため、リアルタイム処理とバッチ処理の違いをくわしく確認していきましょう。
バッチ処理とは?
「バッチ処理」とは、ファイルなどのデータを一定量または一定期間ごとに「まとめて」処理する方法です。
日次の売上集計や月末の給与計算などが、典型的なバッチ処理の例としてあげられます。バッチ処理にはリアルタイム処理のような即時性はないため、日次や週次で行う集計業務などに向いています。
処理の特徴と活用例
リアルタイム処理とバッチ処理は、それぞれ以下のような特徴と活用例があります。
| リアルタイム処理 | バッチ処理 | |
| 特徴 |
・データが発生次第その都度処理をする |
・一定量のデータを蓄積してからまとめて処理する ・大量なデータの効率的な処理に適している |
| 活用例 | ・株式取引システム ・オンライン決済システム ・防災システム ・自動運転車の制御 |
・月次の会計処理 ・データベースのバックアップ ・ログファイルの解析 ・大規模なデータ集計 |
多くのシステムでは、リアルタイム処理とバッチ処理の両方を組み合わせて使用することで、業務におけるデータ連携のバランスを取っています。
【豆知識】ストリーム処理とは?
「ストリーム処理」はリアルタイム処理の一種で、連続的に生成されるデータをその都度処理する方法です。とくに、大量のデータが継続的に発生する環境で活用されています。
「SNSのタイムライン更新」や「交通情報を活用したモニタリング」などが、ストリーム処理の一例としてあげられます。
データが流れ(ストリーム)としてとらえられ、そのデータが到着した順にリアルタイムで処理されていくのが特徴です。
リアルタイム処理が必要になる利用シーン
リアルタイム処理は、多くの業種やサービスで活用されています。具体的な利用シーンを通じて、リアルタイム処理の必要性や効果を見ていきましょう。
金融システム
金融業界では、リアルタイム処理が特に重要な役割を果たしています。金融システムにおけるリアルタイム処理の一例は、以下のとおりです。
- クレジットカードやデビットカードの決済処理
- オンラインバンキングでの残高照会や振込処理
- 株式取引における売買注文の処理
- 不正検知システム
金融システムのわずかな遅延が利益やリスクに直結するため、多くの証券会社や取引所がリアルタイムかつ安定した処理を追求しています。
ECサービス
ECサービスを提供するオンラインショップの在庫管理や価格変更などでも、リアルタイム処理が求められます。
ECサービスにおいては、例として以下のような場面でリアルタイム処理が活用されています。
- 在庫状況の表示
- 支払い処理
- 価格変動の反映
- 配送状況のトラッキング
商品の在庫状況をリアルタイムで更新することで、在庫切れによる販売機会の損失を防げます。
また、Amazonや楽天など複数の販売チャネルをもつ企業では、各チャネルの在庫情報をリアルタイムで連携し、過剰販売を防止することも重要です。
雨雲レーダー
気象情報サービスにおいても、リアルタイム処理は重要な役割を果たしています。
中でも「雨雲レーダー」システムでは、気象データを継続的に収集・処理し、最新の天気情報を提供するためにリアルタイム処理が活用されています。
レーダーや気象センサーから送られる大量のデータをリアルタイムで解析し、雨雲の位置や移動する方向を予測します。こうしたリアルタイムの情報は、農業や交通、イベント運営など様々な分野で活用され、業務遂行への適切な判断材料となります。
また、リアルタイム処理は災害予防の観点からも、集中豪雨や台風の接近を早期に検知し、住民への警報を発令する際などに役立てられています。
リアルタイム処理のメリット
リアルタイム処理を導入することで、ビジネス面やユーザー体験においてたくさんのメリットがあります。
ここからは、リアルタイム処理のメリットである「データをすぐに反映できる」と「ユーザー体験の向上につながる」について解説していきます。
データをすぐに反映できる
リアルタイム処理の最大のメリットは、データの発生から活用までの時間を大幅に短縮できることです。
リアルタイム処理を活用することで、従来のバッチ処理では数時間から数日要していたデータの反映を瞬時に完了できます。
ユーザー体験の向上につながる
リアルタイム処理により、ユーザーは待ち時間なく常に最新の情報やサービスを利用できるようになります。
リアルタイム処理によるユーザー体験向上の一例として、スピーディーな処理による満足度向上や最新情報に基づいたサービス提供、パーソナライズされた体験の実現などがあげられます。
当社は設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、「Solace」を中心としたリアルタイム処理のプラットフォームを取り扱っています。リアルタイムでのデータ連携や、バッチ処理との組み合わせ方法でお悩みの方は、ぜひ当社へご相談ください。
リアルタイム処理のデメリット
リアルタイム処理には多くのメリットがある一方で、「システム構成が複雑になりやすい」や「障害時の負荷が大きくなりやすい」といったデメリットも存在します。
それでは最後に、リアルタイム処理におけるデメリットを見ていきましょう。
システム構成が複雑になりやすい
ビジネスチャンスを高めるリアルタイム処理ですが、そのシステムは高度な技術のうえに成り立っているため、複雑なアーキテクチャが必要になります。
複数のサーバーやデータベースなどを組み合わせて構成するため、設計・開発・運用の難易度が高くなることもデメリットとしてあげられます。
また、開発チームには高度な技術スキルが要求されるため、開発人材の確保や教育コストが増加する可能性もある点にも注意が必要です。
負荷がかかりやすい
データをまとめて処理するのに適しているバッチ処理と比べると、リアルタイム処理は大量のデータを扱う際に負荷がかかりやすくなります。
リアルタイム処理では、サービスが停止または遅延すれば利用者への影響が大きくなります。そのため、大量のデータを扱う際やアクセス集中によるサーバーダウンなどのリスクを事前に想定し、対策することが重要です。
まとめ
リアルタイム処理は、データの即時性やサービスの信頼性を高めるうえで重要なIT技術です。バッチ処理と比較するとシステムは複雑化しがちですが、金融システムやECサービスなどにおいては必要不可欠となっています。
スピーディな対応を可能にするリアルタイム処理を活用し、ビジネス競争力とユーザー満足度の向上をめざしましょう。