現代のビジネスシーンでは、企業や組織の「サイロ化」が大きな課題となっています。
サイロ化とはどんな状態を指すのか、サイロ化が進むとどうなるのかなど、サイロ化がもたらす問題点を解説します。現状の業務の効率化を図るためにも、サイロ化の解決策を考えていきましょう。
サイロ化とは?
「サイロ化」とは、企業や組織内で部門やシステムがうまく連携できず、情報の共有や交換が滞る状態を指します。
とくに、複数の部署やシステムが関わるプロジェクトでは、サイロ化が顕著に表れます。各部署やシステムが孤立してしまうと情報の流れが断たれ、業務がスムーズに進行できなくなります。
サイロ化が進むと組織全体の生産性が低下し、意思決定の遅れや業務の重複などの課題が生じるため、適切な対策が求められます。
サイロ化の基本
サイロ化が最もよく見られるのは、部署ごとに独自のシステムや業務フローを採用しているため、部署間の連携がうまく取れなくなっているというケースです。
たとえば、A部署とB部署が共同で進めるプロジェクトがあったとします。それぞれの部署が業務を進めているものの、相互の連絡や情報共有が不足していると業務がスムーズに進められず、結果的に非効率な状態に陥ってしまいます。
もともと、日本の企業や組織は「縦割り」の構造が強く、部署間の横のつながりが希薄になりがちです。サイロ化は、この縦割りの構造がもたらす典型的な課題といえるでしょう。
サイロ化のデメリット
サイロ化が進むと部署間の情報共有が滞り、業務の非効率化や意思決定の遅れといったさまざまな問題を引き起こします。
サイロ化は企業全体のパフォーマンスを低下させる要因にもなるため、適切な対策ができるよう、デメリットについても理解を深めましょう。
意思決定が遅延する
サイロ化が進むと、業務の効率化を妨げる大きな要因のひとつである意思決定の遅延が発生しやすくなります。
例として、A部署が担当する業務の決定権をB部署がもっているケースを考えてみましょう。サイロ化によってB部署がA部署の進捗状況を十分に把握できていないと、重要な判断に時間がかかってしまう可能性があります。
その結果、次のような手間が増えてしまいます。
- 進捗状況を改めて説明する必要がある
- 意思決定のための資料を作成し、提出する必要がある
- 課題が見つかった場合、その解決策についても追加で説明が必要になる
本来、部署間の連携がスムーズに取れていれば即座に判断できる場面でも、サイロ化によって意思決定のプロセスが複雑化すること、業務の遅延や手間の増加につながってしまいます。
不要なコストやリソースが発生する
サイロ化による業務の非効率は、不要なコストやリソースの浪費にもつながります。
サイロ化で部署間の連携がうまく取れていない場合、外部の関係者や他部署のスタッフに改めて説明や説得をする必要が生じ、そのための資料作成やプレゼンテーションが増えてしまうことがあります。
本来は不要である作業に時間と労力を割かなければならず、その無駄がそのままコスト増加につながるのです。また、部署間で異なるシステムやツールを導入していると、それぞれの維持や連携にも不要なコストやリソースが発生してしまいます。
サイロ化を解消し、スムーズな情報共有ができる環境を整えることが、業務の効率化とコスト削減の鍵となります。
情報連携やコミュニケーションが円滑に進まない
サイロ化により、組織内で必要な情報が適切に共有されていないと、業務の進行にさまざまなデメリットが発生します。
たとえば、C部署が業務の予定を変更したにもかかわらず、D部署がその情報を知らずに変更前の計画通りに作業を進めてしまうといったケースが考えられます。
情報の行き違いが起こると、以下のような問題が発生します。
- 作業の進捗が部署ごとにずれてしまう
- やり直しや調整に余計な時間と労力がかかる
- 業務全体の効率が低下し、無駄なコストが発生する
こうした事態を防ぐためには、部署間での情報共有やコミュニケーションを積極的に行い、リアルタイムでの連携を強化する仕組みを整えることが重要です。
DX化が進まない
サイロ化への対策ができていれば、社内システムのクラウド化をはじめとするDXを進めやすくなります。システムを通じて情報の共有や交換がスムーズに行えるため、組織全体の進捗状況も把握しやすくなります。
こうしたDX化が進んでいないと部署間の情報連携やコミュニケーションが滞り、結果としてサイロ化が加速してしまいます。
また、各部署や部門が独自のシステムや業務プロセスを採用し、それに固執してしまうとDXの導入そのものが難しくなるという課題も生じます。
その結果、DX化の遅れがサイロ化を引き起こし、サイロ化が進むことでDXの導入がさらに難しくなるという負のスパイラルに陥る可能性があります。
この状況を改善するには、DX化を推進しシステムの統一を進めることで、組織全体の情報連携を強化することが重要です。
サイロ化に陥る主な原因
サイロ化は、組織のスムーズな業務遂行を妨げる大きな要因ですが、その発生原因はさまざまです。単に人と人のコミュニケーション不足によって生じるだけでなく、システムの分断や業務環境の問題によって進行することもあります。
ここからは、サイロ化に陥る主な原因を解説します。自社内にサイロ化を引き起こす要因がないかをしっかりチェックし、適切な対策を講じることが重要です。
縦割りの組織構造
サイロ化が生じる最大の要因は、組織の縦割り構造にあります。社内の各部署が独立、あるいは孤立した業務環境になっていると、部署間の情報共有や連携がスムーズに行えず、サイロ化が進みやすくなります。
部署単体では高い成果を上げられる場合でも、複数の部署が連携して業務を進める際には非効率になってしまうケースは少なくありません。
こうした状況は個々の業務プロセスだけの問題ではなく、組織の構造自体に原因があるため、企業全体で対策を講じる必要があります。サイロ化を防ぐためには、部門間の連携を促進する仕組みや環境を整えることが重要です。
システムやツールの統合性欠如
サイロ化の原因として、社内で使用するシステムやツールの統合性が欠如していることがあげられます。
例として、A部署はCシステムを使用しB部署がDシステムを使用している場合、各部署が異なるシステムを利用しているため、データや業務フローの連携が難しくなってしまいます。
このような状況では、A部署の従業員はDシステムの操作に慣れておらず、B部署の従業員もCシステムをよく理解していないため、情報共有の際に説明が必要になります。
こうした課題を解決するには、システムやツールの統一化を進める、もしくは異なるシステム間でスムーズに連携できる仕組みを整えることが重要です。
部門間のデータ活用ルールの差異
サイロ化は、部門ごとのデータ活用ルールの違いによっても発生します。
例として、A部署では従業員全員が自由にデータを閲覧したり活用したりできるのに対し、B部署では一部の従業員にしか閲覧が許可されていないケースを考えてみましょう。
こうした状況では以下のような問題が発生し、スムーズな業務遂行が困難になります。
- A部署では誰でも取得できる情報がB部署では取得できない
- 必要なデータが共有されず連携が滞る
- データの入手や説明のために余計な手間がかかる
各部門でデータの活用ルールを統一する、または適切なアクセス管理を整備して必要な情報をスムーズに共有できる環境を構築することが重要です。
サイロ化の解消方法
サイロ化は、企業内で気づかないうちに進行していることが多いため、解消するためには組織全体で計画的に対策することが大切です。
その場しのぎの対応ではなく、会社全体として適切な方法を用いて本格的に取り組みましょう。
情報共有を促進する
情報共有を促進することは、サイロ化に欠かせません。ただ情報を公開するだけではなく、誰もがスムーズに活用できる環境を整えることが重要です。とくに、データの一元管理や部門間のコミュニケーション強化が必要になります。
情報の価値や活用方法に対する認識が部署ごとに異なると、連携が滞る原因になるため、単に情報を共有するだけでなくその重要性を共通認識として持つことが求められます。
そのためにも、組織内のコミュニケーションを活発にし、風通しのよい環境を作ることが不可欠です。円滑な情報共有の仕組みを整えることで、サイロ化対策はもちろん、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。
データの一元管理を徹底する
データの一元管理を徹底することは、DXとも密接に関わる重要な施策であり、サイロ化の解消に大きく貢献します。データを一元管理し、システム内で統一されたデータにアクセスできるようになれば、情報の不均衡を防げるため業務の進行がスムーズになります。
また、業務の進捗状況など、リアルタイムで把握すべき情報を一元化すれば、社内全体の認識がそろい、何か不測の事態が発生した際にも迅速な対応が可能になります。
さらに、情報が適切に共有されることで異なる部署間での連携が強化され、業務の進め方に対する認識のずれも少なくなります。その結果、組織内での協力関係がより円滑になり、新たなアイデアが生まれやすい環境が構築されるでしょう。
データの一元管理を進めることは、企業全体の生産性向上やイノベーション創出にもつながります。サイロ化を防ぐためには、部署ごとの独立したデータ管理を見直し、全社的に統一された情報基盤を整えることが重要です。
システムやワークフローを見直す
サイロ化対策としてデータの一元化を進めるためには、システムやワークフローの見直しが不可欠です。
社内全体で統一されたシステムを導入することが理想ですが、もし難しい場合は、メインのシステムを決めてそれに他のシステムを外部連携する形で統合すれば、よりスムーズな業務運営が可能になります。
システムの検討とともにワークフローも見直しましょう。クラウド対応のワークフローシステムを活用すれば、社内全体で情報を共有しやすくなります。
紙媒体でワークフローを管理する場合でも、各部署が個別に作成するのではなく他の部署と協議しながら統一的に決めることで、サイロ化対策として有効になります。さらに、業務の途中で他部署との確認や協議を行うプロセスを組み込んでおけば、部門ごとの孤立を防げます。
システムとワークフローの見直しを進めることで業務の流れが整理され、部署間の連携が強化されるため、よりスムーズな業務遂行が可能になります。
サイロ化対策のポイント
サイロ化を防ぐためには、単にシステムやワークフローを整備するだけでなく、社内環境の見直しやスタッフの意識改革も欠かせません。
また、一度行えば完了するものではなく継続的な取り組みが必要です。サイロ化対策のポイントを押さえて、長期的に運用できるスムーズな情報共有と業務効率の向上を目指していきましょう。
問題点を洗い出し明確なゴールを決める
サイロ化を解消するには、まず社内でどのような課題が発生しているのかを明確に洗い出しましょう。サイロ化の原因は多岐にわたり、単にDX化を進めるだけですぐに解決できるものではありません。
そのため、現状の問題点を整理しどのように解決するのか、解決後にどんな環境を実現したいのかといった具体的なゴールを設定する必要があります。
たとえば、異なる部署間のコミュニケーションを強化するといっても、組織の雰囲気や人間関係によって適した方法は異なります。
対策を講じる際には、その手法によって社内の環境がどのように変化し、どんなメリットが得られるのかを明確にしておくことが重要です。
とくに、縦割り構造の影響が強い企業では上から一方的にルールを押しつけるのではなく、現場のスタッフが実行しやすくメリットを実感できる方法を採用することが成功のポイントとなります。
システムやワークフロー導入時にサポートを徹底する
業務のDX化はサイロ化対策の重要な手段ですが、導入しただけで解決するわけではありません。システムやワークフローを刷新する際の注意点として、変化に対応できない従業員が出てくることがあげられます。
サイロ化対策では、部署や部門間の連携だけでなく、スタッフ間の連携がスムーズに取れることが重要になります。そのため、新たにシステムやワークフローを導入する際にはサポートを徹底し、従業員全員が適応できる環境を整えましょう。
従業員に対して、システムやワークフローを変更することでどんな影響がでるのかを事前に周知しておくことが大切です。また、疑問や不安がある場合に相談できる窓口などを設定するのもおすすめです。
継続的に見直しと改善を行う
サイロ化は気づかないうちに組織内に定着し、業務の停滞を引き起こします。そのため、一度きりの対策で解決するのではなく、継続的な見直しと改善を行うことが重要です。
また、過去に効果的だったサイロ化対策が現在の環境でも有効であるとは限りません。業務の進め方だけでなく、時代の変化や新たな技術の導入を考慮しながら定期的に組織の体制を見直し、最適な形へとアップデートしていくことが求められます。
まとめ
サイロ化が進むと組織の柔軟性が失われ、企業の変革が難しくなってしまいます。とくに、日々目まぐるしく変化する現代のビジネス環境においては、迅速な意思決定と部門間のスムーズな連携が求められます。
サイロ化を未然に防ぎ、常に改善を図ることで企業全体の適応力を高めることが重要です。競争力を維持して成長を続けるためにも、継続的なサイロ化対策に取り組んでいきましょう。
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