【SAP】とは?特徴やできることなどの基本情報を徹底解説!

「SAP」は、企業活動を支えるERPソリューションとして世界的なシェアをもつ製品ですが、製品の種類が多いため、選ぶ際に困ることもあるのではないでしょうか。

そこで本記事では、SAPとはそもそも何なのか、どんな特徴や製品があるのかをわかりやすく解説します。SAPがよくわからないという方は、ぜひご覧ください。

SAPとは?

「SAP」とは、ドイツに本社を置く世界的なソフトウェア企業の名称であり、企業向けERPソリューションとして 広く知られています。社名は「System Analysis Program Development」の頭文字となっており、読み方は「エスエーピー」です。

まずは、SAPという企業の特徴や提供しているサービスの概要について詳しく見ていきましょう。

企業情報

SAP社は、ドイツに本社を構える世界有数のソフトウェア企業であり、ヨーロッパ最大の規模を誇ります。

とくに、企業向け業務システム(ERP)の分野では世界トップクラスのシェアをもち、会計や人事、販売、在庫管理など、幅広い業務を統合するソリューションを提供しています。

また、クラウド関連の製品にも強みをもち、企業のデジタル変革を支援しています。日本市場にも積極的に進出しており、国内の商習慣や法規制に適したソリューションを展開しています。

歴史

SAP社は1972年、世界的なIT企業で活躍していたエンジニアたちによって設立され、創業当初から企業向けビジネスソフトウェアの開発に従事してきました。

設立後すぐに急成長を遂げ、ヨーロッパ市場を中心に事業を拡大。1992年には日本法人を設立し、日本市場向けの製品提供を本格的に開始しました。

さらに、技術力の高いIT企業を積極的に買収し、さまざまな業務領域に対応するソリューションを開発。現在では、ERPをはじめとする幅広い企業向けソフトウェアを提供し、グローバル市場でのリーダー的地位を確立しています。

SAPの特徴

SAPは、世界中の企業で導入されている統合基幹業務システム(ERP) であり、その市場シェアは圧倒的です。では、なぜ多くの企業がSAPを選び、支持し続けているのでしょうか。ここからは、SAPがもつ主な特徴をわかりやすく解説します。

業務プロセスが統合できる

SAPは、人事、会計、在庫管理、販売管理など、企業活動に必要な幅広い業務領域をカバーする統合型のERPシステムです。そのため、SAPの主要製品を活用することで企業の主要な業務プロセスを一元的に管理し、統合できます。

SAPのシステムは高い相互連携性をもち、異なる業務間でのデータのやり取りがスムーズに行えるという特徴があります。

業務プロセスが統合できることで、業務の効率化や情報の一貫性が確保されるため、経営の透明性向上やコスト削減といったメリットが生まれます。

多数の企業に導入されている

基幹システム(ERP)は企業の重要な基盤であり、システム障害やセキュリティ上の問題が発生すると、企業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、企業は自社のさまざまな業務に対応できる信頼性の高い基幹システムを選択し、安定性やセキュリティを確保することが重要です。

なかでも、SAPはこうした要件を満たすERPシステムとして世界中の企業から評価され、導入されています。とく大手企業の多くが何らかのSAP製品を利用しているといわれています。

グローバル化にも強みをもつ

SAP社はもともとヨーロッパで創立し、グローバル市場を前提に開発された基幹システム です。そのため、国際的なビジネス環境に対応しやすいという特徴があります。

日本企業が海外拠点と連携したり、海外への出荷を行ったりする場合でも、SAPを活用することで業務の効率化が可能です。

また、在庫管理や税務管理、人事などの業務においても多国間での統合管理を支援し、各国の言語や法規制に対応しやすい仕組みが整っています。

SAPの主な機能(モジュール)

SAPには、企業の業務を効率化し、統合管理を実現するための多様な機能(モジュール)が備わっています。ここからは、とくに多くの企業で活用されている主要なモジュールをご紹介します。それぞれの特徴や役割について理解を深めましょう。

SD(販売管理)

SD(Sales and Distribution)はSAPのアプリケーションの一部であり、販売プロセスを統合的に管理する機能を提供しています。

具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • 受注管理
  • 出荷処理
  • 請求処理の自動化

あらかじめ商品情報を登録しておくことで、店舗やECサイトからの注文に対してシステムが自動で処理を行い、手作業によるデータ入力の負担を軽減できます。

また、在庫管理や会計モジュールと密接に連携しており、リアルタイムでのデータ更新が可能なため、販売プロセス全体の一貫性と効率の向上にも役立ちます。

MM(購買・在庫管理)

MM(Materials Management)はSAPの購買・在庫管理アプリケーションであり、販売管理と密接に連携して使用されることが多い機能です。

販売や出荷が行われると、それに関連する在庫データが自動で更新されリアルタイムの在庫管理が可能になります。過剰在庫や欠品を防げるため、適正な在庫水準を維持するのに役立ちます。

具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • 購買管理
  • 在庫管理
  • 品目管理
  • 棚卸管理
  • 受入処理

また、企業が調達する原材料や商品だけでなく、社内で使用する備品の購買管理にも対応しており、調達業務の効率化とコスト削減を支援します。

FI(財務会計)

FI(Financial Accounting)はSAPの財務会計アプリケーションであり、企業の財務データを一元的に管理する機能を提供します。外部会計や制度会計に対応しており、財務状況の可視化と適正な会計処理を支援します。

また、他のモジュール(SD:販売管理、MM:購買・在庫管理、CO:管理会計 など)と連携し、リアルタイムでの財務データ更新が可能です。

具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • 総勘定元帳管理(GL)
  • 債権管理(AR)
  • 債務管理(AP)
  • 固定資産管理(AA)

企業の財務健全性を判断するための基盤となるほか、リアルタイムのデータ統合により、財務分析や税務処理の精度向上にも貢献します。

CO(管理会計)

CO(Controlling)はSAPの管理会計アプリケーションであり、企業の内部会計を担当する機能を提供します。

財務会計(FI)が外部向けの会計を管理するのに対し、COは社内のコスト管理や収益分析を目的としており、両者は連携して活用されることが一般的です。COを活用することで、企業内で発生するコストや収益の流れを把握し、最適化を図れるようになります。

具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • コストセンター会計
  • 内部指図管理
  • 活動原価計算
  • 利益センター会計
  • 原価計算
  • 計画予算管理

企業のコスト構造を詳細に分析できるため、利益率の向上や業務の最適化に役立ちます。

また、財務会計(FI)やその他のモジュール(SD:販売管理、MM:購買・在庫管理など)と連携することで、企業全体の社内会計情報を統合的に管理できます。

HR(人事)

HR(Human Resources)はSAPの人事管理アプリケーションであり、採用活動から従業員の評価、部署や役職管理まで、人事業務全般を統合的に管理できる機能を提供しています。

さらに、勤務状況や休暇の管理も可能で、給与計算や管理会計モジュールと連携させることで自動処理を実現できます。人事業務の効率化と正確性の向上に役立つ機能です。

具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • 採用管理
  • 人事管理
  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 人事評価

最大の強みは、採用から退職までの全人事プロセスを一元管理できる点にあります。また、他のSAPモジュール(FI:財務会計、CO管理会計 など)と密接に連携することで、企業の経営戦略に直結する人材データを活用できます。

SAPの主要製品ラインナップ

SAP社は、企業規模や業種、業務ニーズに応じて多様な製品ラインナップを提供しています。各製品は異なる特徴や機能を備えているため、それぞれの特性への理解を深め、自社にとって最適なソリューションをしましょう。

ここからは、主要なSAP製品の3つを解説します。自社の業務に適したSAP製品選びの検討材料としてお役立てください。

SAP S/4HANA On-Premise

「SAP S/4HANA On-Premise」は、自社のサーバー環境に導入するオンプレミス型のERPシステムであり、永久ライセンスで提供されます。そのため、安定した運用が可能であり、企業の業務要件に応じた高度なカスタマイズをできる点が大きな強みです。

既存のITインフラと統合しやすく、大幅なシステム変更を伴わずに導入できるため、従来の環境を活かしながらSAPの機能を活用できます。

また、拡張性が高くアドオン機能の追加にも対応しているため、事業の成長や将来的な業務の変化に柔軟に対応できるのもメリットです。

SAP S/4HANA Cloud Private Edition

「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」は、SAP社が提供するクラウド型ERPソリューションのひとつであり、サブスクリプション形式で利用できます。

そのため、オンプレミス版よりは初期導入コストを抑えやすく、システムの構築や運用にかかる負担を軽減できる点が大きなメリットです。

とくに、クラウドの利便性を活かしつつスピーディーに自社要件をSAPで稼働させたい企業やグローバル企業、複雑な業務プロセスをもつ企業に適しています。

また、SAP社によるプライベートクラウド環境で提供されるため、他の主要なクラウドインフラを選択でき、企業のIT戦略に柔軟に対応できるという魅力もあります。

完全なオンプレミス環境ではないものの、標準のクラウド型ERPと比較するとカスタマイズ性が高く、個別の業務要件に合わせた設定が可能な点が特徴です。

SAP S/4HANA Cloud Public Edition

「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は、SAP社が提供するクラウド型ERPの中でも、標準機能に特化したソリューションです。

前述の2製品とは異なり、クラシック拡張に対応していないため拡張性はやや限られているものの、その分導入コストが低く、短期間で運用を開始できるのがメリットといえるでしょう。

契約形態は、SAP S/4HANA Cloud Private Editionと同じくサブスクリプション型のため初期投資を抑えやすく、会計処理の観点からもコストの管理がしやすい点も特徴としてあげられます。

SAPを導入するメリット

SAPの導入には、業務プロセスの統合や効率化などといった多くのメリットがあります。自社の現状を踏まえ、どのような課題をSAPで解決できるのかをイメージできるよう、具体的なメリットについてご紹介していきます。

業務効率が向上する

SAP製品の大きな魅力は、業務プロセスを自動化し効率化を実現できる点にあります。異なる部署間の業務であっても、SAPを活用することで各種処理を統合し、横断的にさまざまな業務を自動で処理できるようになります。

その結果、本来であれば複数の手順が必要なプロセスであっても最小限の工程で完了できるため、場合によってはほぼ人手を介さずに処理を進められるでしょう。

さらに、ERPシステムとしてデータ処理の一貫性が確保されることで、ヒューマンエラーのリスクを大幅に削減でき、業務の精度と生産性の向上に貢献します。

データの一元管理ができる

SAPは、企業のあらゆる業務データを統合できるため一元管理が可能になります。

例として、販売状況や在庫、財務、人事などのデータを統合的に管理できるため、異なる視点からの分析が可能となり、業務課題の発見や意思決定の精度向上にもつながるでしょう。

こうした詳細なデータに基づいた評価ができるようになることで、業務の最適化や戦略立案に大きく貢献する点もメリットとしてあげられます。

コストの削減につながる

SAPの導入により業務の自動化が進み、手作業による負担が軽減されることで、人件費の削減を期待できます。

また、ERPシステムで各業務を統合することで 複数の業務ソフトウェアを個別に導入する必要がなくなり、一元的なシステム管理が可能となるため、システムの導入費用や運用コストを抑えられるのもメリットです。

さらに、業務プロセスの最適化により無駄な作業やヒューマンエラーが削減され、今までそうした課題を解決するためにかかっていた不要なコストの発生を防げるようになります。

内部統制を強化できる

SAPの導入により、企業の業務データが統合・集約されるだけでなく、すべての業務プロセスや実績などの詳細がシステム上に記録されます。

業務の不正行為の防止につながるだけでなく、監査や管理業務の透明性の向上が期待できるため、内部統制の強化が可能となります。

また、業務プロセスが標準化された手法に基づいて運用されるため、規定やルールから逸脱した業務を未然に防ぎ、統制の取れた組織運営を実施できるでしょう。SAPの活用で実現できるこうした仕組みは、コンプライアンスの遵守や企業の信頼性向上にも寄与します。

SAP導入を成功させるためのポイント

SAPを効果的に導入し、そのメリットを最大限に活かすためには事前の準備や適切な運用体制の構築が不可欠です。それでは最後に、SAP導入を成功に導くための重要なポイントについて解説します。

まずは業務プロセスの整理を行う

SAP製品は幅広い機能を備えているため、導入する際は自社に必要な機能を正確に把握することが重要です。適切な準備なしに導入を進めると、不要な機能にコストをかけてしまう可能性があります。

そのため、まずは業務プロセスを整理し、現状どのような業務が存在するのか、どの業務を自動化するのかを明確にしましょう。そのうえで自社の業務要件に最適なSAP製品やモジュールを選定することで、導入効果を最大限に高められます。

標準機能の活用を目指す

SAPが提供する標準機能は、企業の基幹業務を支える重要な役割を担っています。

導入初期の段階では、付加的な機能を追加する前にまずは標準機能を十分に活用し、業務に適応させることが重要です。アドオン開発をする際は、用途をしっかり整理し慎重に検討しましょう。

標準機能を効果的に運用できれば業務の効率化が進み、企業全体の経営基盤を強化することにもつながります。

サポート体制が整ったベンダーを選ぶ

SAPは多機能で柔軟性の高いシステムであるため、導入や運用の仕方によって業務の効率が大きく変わります。そのため、適切なサポートを提供しているベンダーを選定することが重要です。

ベンダーごとに得意とする業種や企業規模が異なるため、自社の業務要件や将来の成長戦略に合ったベンダーを選ぶことで、より効果的なSAPの活用が可能になります。

弊社は、設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、数多くのSAP運用支援実績があります。SAPの障害対応や機能改善などでお困りの方は、ぜひ弊社のERPソリューションサービスをご利用ください。

まとめ

SAP社は、ERP分野において世界トップクラスのシェアを誇る企業であり、日本国内でも多くの導入実績があります。

その信頼性の高さに加え、販売管理や在庫管理、財務、人事など、企業活動のあらゆる領域に対応できる点が大きな強みです。さらに、各業務をシームレスに連携できるため、業務の効率化を実現できます。

ただし、提供される製品ごとに機能性や価格帯が大きく異なるため、自社のニーズを正確に分析し、最適な製品を選定することが重要です。適切な導入と活用により、SAP製品のもつメリットを最大限に引き出し、企業の成長と競争力強化につなげましょう。

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