企業にとって、基幹システムは業務を支えるための重要なITインフラです。基幹システムの活用は業務の効率化や正確性の向上が期待できますが、どのシステムにも寿命があることを理解しておく必要があります。
適切なタイミングで基幹システムの刷新対応をしなければ、パフォーマンス低下だけでなく業務停止のリスクを招く可能性があります。
本記事では、基幹システムの寿命の目安や老朽化のサインを見極めるポイントを解説します。安定した業務運用を維持するための対策について考えていきましょう。
まずは基幹システムの基本をチェック
基幹システムの寿命を考える前に、まずはその役割や機能を正しく理解することが重要です。システムの老朽化を見落として無理に使い続けてしまうと、業務の非効率化やトラブルの発生リスクが高まります。
適切なタイミングで更新や最適化を行うためにも、基幹システムの基本を押さえておきましょう。
基幹システムとは?
基幹システムとは、企業の主要業務をデジタル化し、一元管理するためのシステムです。企業の事業内容や方針によって異なりますが、一般的には販売管理や在庫管理、人事管理、会計管理、財務管理などの業務に活用されます。
基幹システムを導入するメリットは、手作業による業務を自動化することで業務プロセスの効率化を図れることです。また、データの一元管理で企業全体の情報を活用しやすくなり、意思決定の迅速化にも貢献します。
基幹システムの特徴
基幹システムは、企業のさまざまな業務へ対応するために、業務ごとにモジュール化されているのが特徴です。同じメーカーの基幹システム同士であれば、異なるモジュールを利用していても基本設計が共通しているため、スムーズなデータの連携が可能です。
また、各企業の業務方針や作業内容に合わせ、カスタマイズして基幹システムを導入するのが一般的です。基幹システムの特徴を理解して活用することで、企業ごとのニーズへ柔軟に対応できる仕組みづくりが実現します。
基幹システムとERPの違い
基幹システムとよく比較されるものに「ERP」があります。どちらも企業のITインフラの中核を担いますが、その役割には違いがあります。
基幹システムは、人事や財務などの業務ごとに個別のモジュールとして構築され、それぞれが独立して機能します。一方、ERPはこれらのモジュールを統合し、データを一元管理するシステムです。
つまり、基幹システムを複数まとめて統合的に管理できる仕組みがERPとも表せます。そのため、基幹システムであってもERPであっても老朽化した際には、どちらも更新や入れ替えを検討しましょう。
基幹システムの寿命は何年?
基幹システムは物理的な機器ではないため、直接的に破損したり消失したりすることはありません。老朽化により企業の業務に適切に活用できず、実質的に使えなくなるタイミングを寿命と考えましょう。
基幹システムの仕様や企業の規模、事業内容などによって異なりますが、一般的には5年から10年程度、長くても14年程度が寿命の目安とされています。ただし、IT技術の進化や開発サイクルの短縮により、基幹システムの寿命は徐々に短くなっている傾向にあります。
基幹システムを長く使い続けるデメリット
基幹システムは、老朽化が進んでもすぐに機能が使えなくなるわけではなく、引き続き運用することは可能です。
しかし、寿命が近づいた基幹システムを無理に使い続けることで、業務効率の低下やセキュリティリスクの増加など、さまざまな問題が生じる可能性があります。ここからは、基幹システムを長く使い続けるとどのようなデメリットがあるのかを確認していきましょう。
セキュリティが弱くなりリスクが高まる
老朽化した基幹システムを長く使い続ける最大のリスクは、セキュリティの脆弱性が高まることです。
サイバー攻撃の手法は日々進化しており、企業規模や業種に関係なくあらゆる企業が標的になっています。とくに、古いシステムは最新の攻撃手法に対応できるセキュリティ対策が施されていないため、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが高まります。
こうした問題を回避するためにも、基幹システムの定期的な更新や強化が欠かせません。
運用や保守のコストが高くなる
基幹システムを長く使い続けると、運用や保守のコストが増大する傾向があります。
業務の戦略や関連法令が変化する中でシステムの改修が必要になるため、そのたびに追加でコストが発生します。また、古いシステムほどセキュリティ対策の更新が大規模になるため、保守コストも比例して高くなりがちです。
こうしたランニングコストが増え続ける場合、一定のタイミングで新しい基幹システムへ移行した方が結果的にコストを抑えられるケースもあるでしょう。
業務効率が低下する
老朽化した機関システムは、処理速度の低下だけでなく新規事業や業務への対応不足を招き、業務の効率を大きく下げる要因となります。
基幹システムを活用しているにもかかわらず業務の滞りが発生し、生産性が向上しないといった課題も出てくるでしょう。また、保守や障害対応のためにシステムを停止する頻度が増え、そのたびに現場の業務に支障をきたします。
このような状況が続くと、従業員のストレスや不満が蓄積し、現場の士気の低下にもつながる可能性があります。
障害やトラブル対応が難しい
基幹システムの構造は複雑であるため、障害やトラブルが発生することは避けられません。重要なのは迅速な復旧対応ですが、老朽化した機関システムでは対処に時間がかかる傾向があります。
システムの仕様が古いため修正作業が困難になり、大規模な調整が必要となることもあるでしょう。場合によっては、完全な復旧が難しくなるリスクも考えられます。このような事態が発生すると、業務に支障をきたすだけでなく顧客や取引先への影響も避けられません。
基幹システムの老朽化のサイン
基幹システムは徐々に老朽化するため、完全に機能しなくなる前に適切なタイミングで移行することが重要です。そのためには、システムの老朽化を示す兆候を早期に把握し、対策を講じる必要があります。
ここからは、基幹システムの老朽化を示すサインをご紹介します。
寿命の目安を超えているかどうか
基幹システムの寿命は、一般的に5年から10年が目安とされていますが、システムの仕様や企業の規模によって異なります。ベンダーやITコンサルタントに相談し、自社システムの適切な更新時期を見極めることが重要です。
また、基幹システムによってはメーカーから更新の推奨が通知されることがあるため、それも移行のタイミングを判断する指標となるでしょう。
業務にシステムが適応できているかどうか
基幹システムの老朽化は、単に使用年数だけで判断するものではなく、現在の業務との適合性も重要なサインとなります。
事業再編や業務プロセスの変更により、従来の基幹システムが業務に合わなくなるケースは多いです。業務の流れが変わったにもかかわらず基幹システムが古いままでは、手作業の増加や業務の停滞につながる可能性があります。
こうした課題に対しては、現行の業務に適応できるよう基幹システムの見直しを検討することが必要です。
サポート終了やセキュリティリスクが発生しているかどうか
基幹システムの運用において、メーカーやベンダーによるサポートの終了は大きなリスクとなります。
サポートがなくなると、システムのトラブルが発生した際に迅速な対応が難しくなり、業務の停滞を招く可能性があります。また、セキュリティアップデートが提供されなくなることで、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが高まります。
すでにセキュリティ上の問題が発生している場合は、現行の基幹システムの限界と捉えて早急な移行を検討しましょう。
利用している従業員から不満の声があがっているかどうか
利用している従業員から「作業が滞る」「動作が遅い」「エラーが頻発する」といった不満が出ている場合、システムの老朽化が進んでいるサインといえます。また、顧客からのクレームが増えた場合も、システムの使い勝手の悪さが影響している可能性があります。
実際に基幹システムを使用する従業員は業務の課題を最もよく理解しているため、現場の意見は非常に重要です。定期的にアンケートやヒアリングを行い、問題点を把握することで、老朽化のサインを見逃さずに対応できるようになるでしょう。
寿命を迎える前に基幹システムを移行する際のポイント
基幹システムの移行は、業務への影響を最小限に抑えるためにも早めの準備が欠かせません。
それでは最後に、スムーズな基幹システムの移行を実現するためのポイントをご紹介します。適切な計画を立てることで移行によるトラブルを回避し、より効率的な基幹システム運用へとつなげましょう。
システム移行のプロジェクトチームを立ち上げる
システム移行には多くのタスクが伴うため、まずはプロジェクトチームを設置しましょう。ITスキルをもつ情報システム部に加え、実際にシステムを利用する各部署の担当者を含めることで、実務に適した基幹システムの検討が可能になります。
また、ベンダーとの交渉を担うメンバーを選び、要件を適切に整理し、必要な機能が確実に組み込まれるよう連携しながら調整することも必要です。
現場に対して聞き取りを行う
基幹システムの移行を成功させるには、実際に使用する現場の意見を取り入れることが不可欠です。現行の基幹システムに対する不満だけでなく新システムへの要望もヒアリングし、業務の流れにあった機能や操作性をもつ基幹システムを選定しましょう。
また、移行する基幹システムの概要が決まった段階でトライアルを実施し、現場のフィードバックを反映させることで、より実用的な基幹システム移行につながります。
システム連携への不安は事前に確認しておく
基幹システムは単独で運用するものではなく、複数の部署や業務と連携して使用するのが一般的です。そのため、新システム導入時には、機能面だけでなくデータの共有方法や部署間の連携を事前に確認しておきましょう。
とくに、異なる部署を横断する業務フローがスムーズに進行できるように連携の仕組みを明確にし、適切に設計することが重要です。
基幹システムに関するITスキルをもった従業員が社内におらず、システム連携などへの不安を解消できない場合はベンダーに相談するのもよいでしょう。
弊社は、設立から40年分のITノウハウを蓄積しており、数多くのSAP運用支援実績があります。SAPの障害対応や機能改善などでお困りの方は、ぜひ弊社のERPソリューションサービスをご利用ください。
システム移行後は社内浸透に尽力する
新しい基幹システムへの移行後は従業員が慣れるまでに時間がかかり、その間はミスが発生しやすいため、操作方法の講習やサポート体制を整えることが重要です。
単にマニュアルを配布するだけでなく、実際に社内講習会を実施することで社内の浸透スピードが上がります。また、必要に応じて専門の講師を招くことも検討しましょう。
移行直後は業務の遅延やシステムエラーが発生する可能性があるため、フォローアップの窓口やサポートチームを設置し、社内に迅速な対応ができる環境を整えることが求められます。
まとめ
基幹システムは企業の業務に不可欠であり、老朽化により不具合が生じたままでは業務効率の低下やセキュリティリスクの増大を招きます。
ITの進化やビジネス環境の変化に伴い、基幹システムの老朽化は避けられないため、適切なタイミングでの入れ替えが求められます。
基幹システムの老朽化の兆候を見逃さず、計画的に移行を進めることで業務の安定性を保ち、より良い職場環境を実現していきましょう。