システム開発を依頼する際、見積もり内容はきちんと確認していますか?見積もりは計画の進行や費用を記したものであり、見積もりを確認することで計画の全貌が見えてきます。
その見積もりに妥当性があるのかを見定めるためにも、提出された見積もりにただ頷くのではなく、自分たちで確認し判断する必要があります。とはいえ、いざ確認しようにもどこを確認すれば良いのか迷ってしまいがちです。費用の内訳も多く、システム開発に詳しくないと何の費用なのか判断ができません。
今回の記事では、システム開発における見積書の妥当性を確認するためにはどの部分を確認すれば良いのか、判断基準や見積の内訳について解説していきます。これまではなんとなく眺めていた見積書の知識をつけて、妥当性を判断できるように学んでいきましょう。
システム開発における見積もりの内訳9選
見積もりが妥当かどうかを知るためにも、まずシステム開発にかかる費用について知っておく必要があります。システム開発には、どのような費用が発生するのか、基本的な内訳をご紹介します。
要件定義費
要件定義費は、クライアントと打合せする際にかかる費用です。クライアントに必要となる機能や不要な機能などをヒアリングし、ニーズに合わせるようシステムの方向性を決めていきます。
要求が多いほど要件定義の時間がかかるため、複雑なシステムや規模が大きなシステムは要件定義費が膨らんでしまうことがあります。
設計費
設計費は、ヒアリングした内容をシステムに落とし込むためにかかる費用です。
主に設計作業者の人件費になりますが、設計に別システムや別設備が必要な場合は、それらを活用した費用も含まれます。また、システムが大規模で複雑になるような場合は、「基本設計」「データベース設計」など、内訳をより細かく分けることもあります。
デザイン費
デザイン費は、インターフェースの設計にかかる費用です。使いやすく見やすいようにするため、ボタンの位置や表示画面などを調整します。
今後の使い勝手を左右する重要な項目ではありますが、テンプレートを採用することでデザイン費を請求しない企業もあります。そのような場合は、デザイン費が記載されません。
システム開発費
開発費は、設計されたシステムを実装する(システムを組む)ときにかかる費用です。基本的にはエンジニアの人件費であり、作業人数×作業時間によって費用が算出されます。
設計費同様にシステムが膨大で複雑な場合は、「基本システム」「各種機能」など、内訳を細かく分けて記載することもあります。
テスト設計・実施費
テスト費は、出来上がったシステムに問題がないか確認をする際に発生する費用です。実施費と記載される場合もあります。テストと一言で言っても、単体テスト、結合テスト、システムテスト、受入テストなどが存在します。
基本的にはシステム開発の延長費用であり、作業人数×作業時間によって費用が算出されます。
導入費
導入費は、完成したシステムを依頼した企業へ導入するときにかかる費用です。ただ新しいシステムを導入するだけではなく、旧データをシステムに取り込んだり、ほかのシステムと連結させたりなど、導入時にはさまざまなことが行われます。
主に導入作業にかかった人件費のことを指しますが、導入に設備や機材が必要な場合は、合わせて請求となる場合もあります。
導入支援費
導入支援費は、導入した後のアフターサポートにかかる費用です。初期設定やシステムを使うための説明会など、システムを不自由なく使うためのサポートを行います。
見積もりに記載する場合は、「マニュアル作成費用」「トレーニング費用」など、サポート内容で個別に記載される場合が多いです。企業によっては無料の場合もあり、費用削減のために断る企業も存在します。
運用保守費
運用保守費は、メンテナンスにかかる費用です。定期的なメンテナンスはもちろん、トラブルが生じた際は、それを解決するために対応します。
メンテナンスをしなければ費用はかかりませんが、システムを長く使うためにはメンテナンスは必須です。長く利用していればトラブルが発生することもありますし、場合によっては仕様変更が必要になる場合もあるでしょう。
大まかではありますが、ランニングコストの一部だと認識ください。
交通費
交通費は、移動にかかる費用です。打ち合わせやシステム導入の際にかかった交通費を、見積もりに加えることもあります。
開発企業が近隣であれば負担になりませんが、遠方だと交通費がかさみやすいです。昨今は打合せはリモートで済むことも多いですが、導入時は全国の工場へ数日間訪問が必要、などの場合は費用が嵩むことが予想されます。
システム開発における見積もりの妥当性を判断するポイント5選
システム開発に関する見積もりを提出いただいたとして、記載されている金額が妥当なのか判断できる方は意外と少ないのではないでしょうか。システム開発を依頼する側としては、システム開発時の見積もりの妥当性を判断できる目は養っておくべきです。開発企業にすべて任せきりにするのではなく、自分たちでも評価し、妥当性の有無をしっかり確認しましょう。
この章では、システム開発における見積もりの妥当性を判断するポイントをご紹介します。
作業範囲・内容が明確か
1つ目の見積もり妥当性判断ポイントは、作業範囲や内容の明確性です。
作業範囲や内容に不明な部分があると、見積もりが妥当かどうかの判断ができません。「この工程では何をするのか」「どの技術を使うのか」「なぜ必要なのか」など、細かく確認する必要があります。また、作業内容はそのまま開発費用につながります。正しい見積もりをするためにも、内容は明確でなければなりません。
作業内容以外にも、作業期間、使用するプログラミング言語、調査分析項目、機材の使用など、開発の流れがイメージできるような説明を、開発企業に求めてください。
前提条件が満たせているか
2つ目の見積もり妥当性判断ポイントは、前提条件が満たせているかどうかです。この場合の前提条件は、予算や制約事項など、システム開発を進めるための条件のことを指します。
システム開発に関して打ち合わせをしていると、当初の予定とは内容が違ってくることが往々にして存在します。この場合、あれもこれもと機能を増やしてしまうと、当初予算を大幅に超えてしまいます。結果、開発期間も長くなり、当初のリリース予定には間に合わなくなってしまいます。
それでも機能を増やしたい!という場合はよいのですが、基本的には、当初予算内で予定通り進むことを望まれる方が多いのではないでしょうか。まずは、基本となる前提条件が満たされているかどうかを見積もり上で確かめてください。
見積もり計算に不足はないか
3つ目の見積もり妥当性判断ポイントは、見積もりの計算に誤りがないかどうかです。算出が妥当であるかもそうですが、計算に抜けがないかも確認します。
見積もりに抜けがあると、最終的な費用が変わってきてしまいます。完成後にトラブルとならないよう、確認する必要があります。
企業によって費用の名目は異なりますが、最低限、前章でご紹介した費用は認識し、確認しておきましょう。ほかにも、わからない名目がある場合は、先方に訪ねてみて説明を求めるのも手です。
エンジニアは見積もり作成に関わっているか
4つ目の見積もり妥当性判断ポイントは、システムに直接関わるエンジニアが、見積もり作成に関与しているかどうかです。
企業によっては、営業のみが見積もりを担当することもありますが、ことシステムにおいては見積もり作成時にエンジニアが関わっていることが良いとされます。理由としては、営業は実際にシステム開発をするわけではなく、システム開発については素人の場合も多いです。最悪の場合、誤った情報が伝わり、望んだシステムとは違うものに仕上がる可能性もあります。
見積もりをお願いする場合は、営業のほかに実際開発に携わるエンジニアが同伴するかどうかも確認しておきましょう。
リスクについて知らされるか
5つ目の見積もり妥当性判断ポイントは、リスクについて知らされるかどうかです。
「システム開発・導入によってどのようなトラブルが予想されるか」「トラブルが生じた際にはどのような対応をするか」など、計画を進めていくうえでの問題点や、それらに対する対応などを確認します。
特に、修正が必要な場合の追加費用については、よく確認をしておきましょう。詳細が不明なまま計画を進めてしまうと、最終的な費用が見積もりとは大きく違ってくる可能性があります。「修正が必要な場合の費用は見積もりに含まれているのか」を確認するだけでも、システム開発の満足度は大きく変わってきます。
どのような計画を立てたとしても、絶対はありません。リスクを説明せず、メリットだけを提示してくるようなら注意が必要です。
見積もりを安く抑えるためには
見積もりの妥当性が高い場合でも、できるだけ費用は安くしたいものです。システム開発費用を抑えたいなら、以下の要素・部分を意識してみてください。
見積もりの算出方法を理解しておく
1つ目は、見積もりの算出方法を知っておくことです。自分たちでも算出することで見積もりの内訳が詳しくわかり、予算に合わせてコストを調整できます。
また、算出ができれば見積もりが妥当かどうか判断も可能です。コストを水増しするような、悪徳企業対策にもなるでしょう。
主な算出方法には、以下のような方法が挙げられます。
- トップダウン:過去の開発事例と比較して算出する
- ボトムアップ:各工程別に算出し、最後に合算する
- パラメトリック見積:各機能を数値化し合算する
- プライスツーウィン法:予算に合わせて見積もりを出す
方法はいろいろありますが、すべてを完全に覚える必要はありません。基本的には自分たちへの確認用ですので、使いやすい方法を覚えておきましょう。
算出方法もきちんと学んでおきたいという方は、こちらで詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
他社と相見積もりをする
2つ目は、ライバル企業と比較することです。同じ条件で依頼しても、企業によって費用は大きく異なります。複数の企業に相見積もりをし、最も自社にマッチする企業を選ぶのことが良いでしょう。
ここで注意していただきたい点は、システム開発の費用は安ければいいというわけではありません。”安かろう悪かろう”という言葉があるように、安いだけで飛びついてしまうのは危険な場合もあります。
ここまでにお伝えした見積もりの妥当性を判断するポイントを踏まえたうえで比較し、最も信頼できる企業にシステム開発を依頼しましょう。
パッケージソフトを活用する
3つ目は、パッケージソフトを活用することです。パッケージソフトとは、すでに出来上がったシステムのことです。わかりやすい例えでいくと、年賀状を作るためのソフトや青色申告のためのソフトなど、定型化された業務が簡単にできるように作られたシステムのことです。
イチから開発をすべてオーダーメイドにすると、設計費やデザイン費などがかかり費用が膨らみやすいです。ですが、すでに完成した既成品を使用すれば新しく作る必要がなくなり、幾分費用が抑えられます。
ただ、自社の業務用に作られているわけではありませんので、パッケージに合わせて業務フローを変更しなければならない場合が多いです。拡張性やオリジナリティも劣るなど、既成品であることは一部デメリットにも存在しますので注意が必要です。
必要な機能を明確にする
4つ目は、必要な機能を明確にすることです。人間とは欲張りなもので、できればあれも欲しい、これも欲しい、と要望はどんどんと膨らんでいくものです。システム開発では、機能が増えるにつれ費用も同じく増えていくものだと認識しておきましょう。余計な出費を出さないためにも、必要な機能は明確にしてください。
また、必要な機能を正確に伝えるためにも、内容は単純な方が良いです。内容が複雑だとエンジニアとの情報共有が上手くいかず、結果として機能が増えてしまうことがあります。
ほかにも、欲しい機能に優先順を付けるなど、最低限の要求が伝えられるようにしておきましょう。
システム開発は費用と回収目途のバランスが大切
システム開発を依頼するときは、見積もりの妥当性判断も非常に大切ですが、費用に対するリターンを意識することもとても大切です。いくら費用が安くても、数年で使えなくなるようでは意味がありません。
逆に、費用が高くても、数十年使い続けられるなら良い買い物をしたといえます。
システムを開発・導入する際は、費用が回収できるかどうかを踏まえたうえで、計画を進めてください。
まとめ
システム開発における見積もりの妥当性を判断するポイントをご紹介してきました。見積もりの項目や算出方法などを頭に入れるだけで、見積もりの見え方が変わってきます。
- 見積もりをする際は、開発企業に任せきりにはせず、自分たちでも確認する
- 費用を抑えたいなら、相見積もりやパッケージを利用する
- 前提条件や目的は忘れないこと
- 費用の回収目途が立つようなシステム開発をすること
システム導入の方向性を見失わないよう業務の問題や課題などを明確にして、システム開発を進めてみてください。