最近よく耳にする業務の標準化。この業務の標準化は、生産性や効率を高め、属人化を解消する鍵となるものです。
ただ、中には「業務が回っているから標準化する必要はないのでは?」といった声も聞こえてきます。業務手順を変更するのも面倒で、業務を回せるなら、わざわざ標準化する意味を感じられないこともあるかもしれませんが、長い目で見れば標準化は絶対に必要になってくるものです。
この記事では、業務を標準化する必要性とメリット、業務を標準化する場合どのような手順で行えば良いのかをご紹介します。業務を標準化することで、今まで気軽に有給を取得できなかった環境が大きく変わるかもしれません。職場環境が改善することはモチベーションアップにも繋がります。ぜひ、最後までお読みいただき自社にマッチした方法で取り組んでください。
業務の標準化とは
業務の標準化とは、業務プロセスや作業手順を一定の基準、または規則に基づいて統一することを指します。この標準化の目的は、作業を効率化させたり、品質の一貫性保ったり、属人化を排除することにあります。
特に”スキル”というものは、人それぞれ異なるものです。同じ物を作るにしても、人によってやり方は同じではありません。誰もが「自分がやりやすい方法」を見つけ、それを昇華させることで”スキル”を磨いていきます。ですが、それだと個人によってプロセスが異なってしまいます。作業スピードや製品の品質、さらには安全性までも変わってしまう可能性もあり、これでは安定した商品やサービスを提供することはできません。
そのため「誰でも作業できて同じ結果になる」よう、業務の標準化注目されています。
業務の標準化はなぜ必要?
業務の標準化が必要な理由は、主に属人化を防ぐためにあります。
属人化とは「担当者のみがその業務について把握している」状態のことをいいます。属人化になる理由はさまざまありますが、仕事内容の情報共有ができていなかったり、人手が足りなかったりすることで起きてしまいます。属人化が進んでしまうと、担当者の替えが利かなくなってしまいます。これにより、担当者一人に業務負担が集中してしまうため、ボトルネックにもなりやすいのです。
業務の標準化は、作業手順を統一し、誰でも同じように作業できるようにするものです。業務を標準化することで属人化の予防ができ、業務内容及び品質の改善につながっていきます。
業務を標準化した場合のメリットとは
業務の標準化は、属人化を防ぐだけはなくいくつかのメリットがあります。ここでは大きく4つにわけてご紹介します。
社員の負担が軽減する
一つ目のメリットは、社員の業務負担が軽減できることです。
誰でも同じように作業ができるため、担当者一人に仕事が集中することを防げます。業務が標準化されるというとこは、業務プロセスが可視化されるため担当の交代もしやすいです。属人化が起きている場合は、誰かに業務を変わってもらうことができず気軽に休めませんが、業務標準化が進んでいれば、計画的に長めの休暇も取ることができて安心です。
ほかにも、業務内容を分散して複数人に振り分けられるなど、特定の社員にかかるさまざまな負担を減らすことで、労働環境の改善にもつながります。
品質が安定する
二つ目のメリットは、品質が安定することです。
作業方法が統一されるため、誰でも同じ物を同じように作れるようになります。冒頭でも触れましたが、”スキル”は人によって異なります。特にベテランと新人との技術差は大きく、同じ作業をしても同じ出来にはなりません。これは、技術職に限らず事務作業のバックオフィス業務でも同じです。
標準化は、そのような個人による差をなくすためのものです。作業手順を統一すれば、作業スピードに違いはあれど、ベテランと新人でも差はほとんどなくなります。また、新人が入社してきたときや担当変更が生じた時にも引継ぎがしやすいといったメリットにも繋がります。
品質のブレや納品のブレは、顧客の信用に関わってきます。顧客の望む製品やサービスを安定して提供するためにも、業務の標準化はとても大切です。
生産性が向上する
三つ目のメリットは、生産性が向上することです。
業務の標準化は業務内容をただ統一するだけではなく、業務改善も目的としています。標準化によってムダな作業がなくなり、それによって生産性も向上します。また、標準化する作業の基準は、ベテランが行っている方法から手順化されることが多いです。これにより新人はベテランの作業方法を参考にすることができ、チーム全体で作業効率が上がります。
標準化によって労働環境の改善となれば、社員のモチベーションも向上します。
作業ミスが減少する
四つ目のメリットは、作業ミスを減らせることです。
複雑だった作業内容が誰でも対応できるように標準化されると、作業プロセスが幾分簡単になり作業ミスが減少します。また、業務内容が誰でもわかることで、他の人も作業ミスに気が付きやすくなります。
チーム内で業務内容が共有されているので、わからないことも相談しやすいこともメリットです。聞く側としても理解しやすく、トラブルが生じてもすぐに対応できるようになります。
業務の標準化はどのように進めればいい?
「属人化を防ぐためには業務の標準化が必要」といっても、どのように標準化を進めれば良いのか、なかなか難しいところです。業務の標準化はどのようにして行えばいいのか。標準化の流れをステップごとに紹介します。
STEP.1 業務内容の洗い出し
業務を標準化するためには、まず、どのような作業をしているのか知る必要があります。ただ業務内容を洗い出すだけではなく、作業人数や稼働率などの情報も合わせて洗い出します。より具体的な内容のほうが業務内容をイメージしやすく、あとのステップに活用しやすくなるからです。
手順書やチェックリストなどもあれば、それらも参考にしてください。
ほかにも、作業の目的、作業の難易度、他部門との関係性、社員目線での意見などもあると、あとで選別がしやすくなるでしょう。言葉にしにくい内容も、数値化するなどしてわかりやすくしてください。
STEP.2 問題点の洗い出し
次のステップでは、問題点を洗い出します。
標準化はただ作業工程を統一するだけでなく、業務内容の改善も目的とします。ステップ1で洗い出した内容から、今見えている問題や不要な手順などをまとめていきましょう。
問題点の洗い出しを行う際は、担当者へのヒアリングも忘れずに行います。この時、あらゆる立場の方々からヒアリングすることで、より明確な問題点が浮き彫りになります。例えば、現場側と管理側では見えているものが違うため、どちらか片方ではなく両者の意見を取り入れることが大切です。
STEP.3 優先順位の決定
ステップ3では、標準化に着手する業務の優先順位を決めていきます。
最終的にはすべての業務を標準化していきますが、すべての業務を標準化するには時間がかかります。また、一度に変更すると現場に混乱が生じてしまうため、標準化は段階的に進める必要があるのです。
優先順位の決め方としては、標準化した際の影響力が大きい業務から優先していきます。主に基幹となる業務が選択されることが多いのですが、ステップ1で洗い出した中から、最も重要だと思われる業務を選びましょう。また、明確に課題が判明している業務も優先度が高くなります。
優先順位を決めたら、順番に標準化を進めてください。
STEP.4 業務フローの見直し
ステップ4は、業務フローの見直しです。
ステップ3で選んだ業務をフローチャートなどに書き出し、より簡易的になるよう整理します。不用な業務は削除し、入れ替えした方が良い場合は順序を変えてみてください。注意点としては、安全性なども考慮することです。業務効率を良くするため削除した結果、安全性の低下や業務の負担が増すようでは問題があります。
今後毎日行うことをイメージしながら、業務フローの改善を進めていきましょう。
STEP.5 実施と問題点の改善
ステップ5は、標準化の実施と改善です。
ステップ4で作成した業務フローが、本当に効果があるのかを実践して確認します。もちろん、問題があれば問題点を取り上げ、改めて修正をしてください。机上の空論になることがないように実際に作業するメンバーに確認を行いましょう。
問題がなさそうなら、作成した業務フローをもとにマニュアルを作成します。
標準化においてとても重要なポイントは、一度標準化したらそれで終わりではなく、定期的な見直しをすることです。時代が変われば設備や技術も変わるため、いつまでも同じでは企業が成長しません。定期的に見直しをして、より効率が良くなるよう改善していきましょう。
標準化が進まない場合は?
標準化の流れをご紹介しましたが、それでも標準化が難しい企業は多いと思います。仕事が忙しすぎて標準化している暇がなかったり、業務を書きだしてみたものの問題点が多すぎでどれから手を付けていいかわからなかったりなど、思うように標準化が進まない企業も少なくありません。
そのような標準化が思うように進まない企業には、外部企業への委託がおすすめです。
「餅は餅屋」といった言葉があるように、専門企業に頼ることで簡単に標準化を進められます。標準化していけば業務が楽になり、自社内で標準化を進める時間が取れるようになります。「標準化するとどのように変わるのか」を実感する目的として利用するのも良いでしょう。
人材不足が懸念される近年において、属人化の予防となる業務の標準化は必須となってきます。「できないからいいや」と諦めるのではなく、できる人に依頼することで対応していきましょう。
まとめ
今回は、業務を標準化についてご紹介しました。
- 業務の標準化とは、業務プロセスや作業手順を一定の基準、または規則に基づいて統一することを指します。
- 業務標準化を行うステップ
- STEP.1 業務内容の洗い出し
- STEP.2 問題点の洗い出し
- STEP.3 優先順位の決定
- STEP.4 業務フローの見直し
- STEP.5 実施と問題点の改善
業務標準化は、企業のこれからにとって取り組むべき非常に重要な施策です。一度に行うのではなく、小さく取り組みを始めていくことが成功の秘訣ともいえます。現状を把握するために、業務内容の洗い出しからチャレンジしてください。